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ピリカ文庫

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テーマを指定して、 noterさんに執筆してもらう、という企画のマガジンです。
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すまいるスパイスでピリカ文庫の「骨」のテーマの私とミーミーさんの作品を納豆ご飯さんとピリカさんがとても素敵に朗読してくださっているので、ぜひお聞きください。(またイラストを描いてみた)https://stand.fm/episodes/66e9812eae50a3a84f1e3b84

【今期ラスト!】ピリカ文庫~「東京」

【今期ラスト!】ピリカ文庫~「東京」

こんにちは、ピリカです!
椎名ピザさんからのお題、「東京」の二作品が届きました。

いや~、どちらも大作!!

めろさん/東京のおじさんちょっとこじれてしまったひとつの家族。
めろさんが卓越した描写力で描き出す、家族の再生のお話です。
おんなじ場面でも、ひとりひとりの目線から見ていくとまた違う真実が見えてきます。
まるで朗読劇のような造りは、さすがのめろさん!!

ボリュームは大きいですが、構成の

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小説/2枚目のメッセージ《#ピリカ文庫》

小説/2枚目のメッセージ《#ピリカ文庫》


『東京』『ヲ爆』『破する。』

8月30日午前 0 時。3枚のファックスが県内の複数マスコミ会社に送信された。正確に言えば、最初の『東京』が 0 時ちょうど。次の『ヲ爆』が 0 時10分。次の『破する。』が  0 時15分。

爆破予告が届いたとすぐに判明したのは、MHK前崎、テレビぐんま、群馬中央新聞、前崎タイムス。いずれも一般市民が知り得る代表番号宛にインターネット経由で一斉送信されたとみら

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【ピリカ文庫】東京のおじさん

【ピリカ文庫】東京のおじさん

【Osada Akane's Case  ー 長田茜の場合】
こんな人生しか生きられないなら、
もう終わりにしていい。

幼い頃は分からなかった。
いや、疑問すら抱かなかった。
親の言う通りにしていたら、誉めてくれた。
欲しいものは、何でも買ってくれた。

やりなさいと言われたことは、全部やってきた。
少しずつ、本当に少しずつ。
水底に澱が溜まっていくように。
気が付いたら、私の心の中の疑問が大き

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残暑お見舞い申し上げます。
なんだかんだで、今年もエアコンなしで過ごしています。あづい。

これは2年前に熱帯夜というテーマで書かせていただいた『夜の隙間』(2000字ほどの短い物語)の主人公。やっと絵にできた。うれしい。
https://note.com/tama3ro/n/nfe41a4eca969?sub_rt=share_pw

【ピリカ文庫】しゃれこうべは生意気な口をたたいて朽ちた

【ピリカ文庫】しゃれこうべは生意気な口をたたいて朽ちた

『こんなはずじゃなかった』

暁の頃、薄明かりのやわらかい光が東の空から徐々に上空に広がって、ビル群のガラスに映り込んでいくさまを見るのが好きだ。

明け方のスクランブル交差点は、昼間の騒々しさを忘れてしまったかのように静まりかえっている。ビールの空き缶ゴミが不意につま先に当たり、カランという音が大きく耳に鳴り響いた。

台形型の巨大ビルの大型ビジョンに映ったメッセージは、そのあとリクルート企業の

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【ピリカ文庫】はじける

【ピリカ文庫】はじける

恋人の空が他界して四十九日が過ぎた。
この2ヶ月あまり、泣いて泣いて泣いて。
毎晩泣き疲れて寝てしまうまで泣いていたら、
さすがに涙も枯れたらしい。
私からはもう何も出なくなった。

今日は、
空のお兄さんである陸さんとの待ち合わせ。
約束のカフェに入ると、
先に着いていた陸さんは私の顔を見るなり驚いて、
「うみちゃん、ちゃんと食べてる?眠れてる?」
と聞いてきたので、
きっと私の顔は見るからに干

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【ピリカ文庫】睡魔と睡蓮 《物語》

【ピリカ文庫】睡魔と睡蓮 《物語》

 夏のはじまり、私は新しいお家に引っ越した。
 外観は、群青色の屋根に白い塗壁。黒い鉄の手すりがついた階段を三段上ると葡萄色の扉に辿り着く。

 お家の裏手にはお庭が広がっていて、小さな駅のロータリーくらいある。長い間誰も住んでいなかったため、家の中よりも手入れされていないようだった。

 伸びに伸びた葛の蔓は引っ張ってもなかなか切れず、その葉はもりもりと茂り、庭木を覆うように絡まっている。にもか

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ピリカ文庫~「水玉」

ピリカ文庫~「水玉」

さあ!今回のピリカ文庫はこびと部スペシャルなんです!

なぜかというと、お題を出してくれたのはMarmalade さんだから。

いまの季節にぴったりで、POPでキュートなお題に答えてくれた、ゴールデンコンビが登場だよ!

ねじりさん/水玉模様小人と主人公の女の子の会話にほのぼの!
ねじりさんの描く世界はほんとにやさしくて、読み終わりたくない~!と思ってしまいます。

なんと三度目登場のねじりさん

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【ピリカ文庫】 水玉模様

【ピリカ文庫】 水玉模様

彼に少しでも近づきたい。
でも彼の好きなものも好みの子も、私は何も知らない。
彼と仲良くなるには一体どうすれば…

頬杖をつきながら私は大きなため息をついた。
すると突然、小さな声が聞こえた。

「うわっ」

さらに今度はちょっと怒ったような口調でさっきよりも
もっと大きくはっきりと聞こえた。

「あいたたた。まったくもう」

声のする方を確かめると、テーブルの上にぽつんと一つ
水玉模様の飴玉があ

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ピリカ文庫~「坂道」

ピリカ文庫~「坂道」

ピリカ文庫×すまスパコラボ第2弾、今回のお題はこーたさんが出してくれた「坂道」です!

あやしもさん/レモンあやしもさん、二回めの登場!
微妙な距離感にあるふたりの登場人物の会話を軸に、お話が展開していきます。
「元カレ」「元カノ」という間柄ながら、描かれるのは危うさよりもむしろ心地よさ。
あやしもさんは、空間を描くのが抜群に上手い方なんですよね。
ハルキスト、あるいは村上主義者の方がニヤリとする

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【ピリカ文庫】レモン

【ピリカ文庫】レモン

「私の披露宴でね、『人生には3つの坂がある……』ってスピーチした人が居たっていう話、おぼえてる?」

「居たんだ、そんな人……」

「居たのよ、居たの。夫の、会社の先輩。その人、この前、死んじゃった。事故で。交通事故、バイクの」

夜10時、ベッドの中で薄れゆく意識にまどろんでいた僕は、元カノで今は人妻の親友からの電話にたたき起こされた。
「今晩、泊めて欲しい」

40分後、部屋に到着した彼女に食

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【ピリカ文庫】金色の船

【ピリカ文庫】金色の船

本当に心臓が破れるかもしれない。「心臓破りの坂」に入ったところで、彼はそう思った。テレビカメラは彼の苦悶の表情を映している。あ、でも赤ちゃんのときは、心臓が破れていたんだっけ。覚えていないけど、両親がしきりにそんな話をしていたことを彼は思い出している。

「イチゴとレモンとメロン、どれにしますか」

手術室の前で麻酔科医が彼の両親に聞く。質問の意図がよくわからずに彼の両親は、困惑している。彼はメロ

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ピリカ文庫3周年記念作品~「誕生」

ピリカ文庫3周年記念作品~「誕生」

文学フリマ東京の会場で、私とコッシーさんが一枚ずつ隠し持っていた「指令書」。
実際にお顔を見ながら「書いてください」とお願いができて、とてもテンションが上がりました。

今回のテーマを考えてくれたのはコッシーさん!すまスパの3周年と、ご自身の誕生日にちなんでのこと。

そのテーマに真っ向勝負してくださったのはこのお二人です。

樹立夏さん/エンブリオはただ前を向いて歌うエンブリオとは「胚」、もしく

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