2023年8月の記事一覧
『群青』(短編集『常設展示室』より)
『群青』(短編集『常設展示室』より)
原田マハ著
一言で言うと幼少期から、美術に惹かれて、ニューヨークのメトロポリタンミュージアムでの仕事を手にした美青が、緑内障になって、仕事を失ってしまうという話。字面を追えば、暗い話に見えるのだけど、深い切なさと芸術の喜びみたいなものが伝わってなかなか、良い。
①タイトルの「群青」とは?
その深い青色が非常に美しく見えるとされ、多くの文化や哲学で象徴的な色
【読書ノート】「バビロンの塔」(短編集『あなたの人生の物語』より)
「バビロンの塔」(短編集『あなたの人生の物語』より)
テッド・チャン著
バビロンの塔の建設に係る物語。主人公ヒラルムは塔の頂上で左官工事を担当する。古代メソポタミア文明、宇宙論、科学、そして人間と神の関係性を加味した壮大なテーマを扱う。
旧約聖書に「バビロンの塔」について、少しおさらいしておく。
バビロンの塔は人々が一つの言語で団結し、神への到達を目指したが、神は言葉を混乱させて人々を分散さ
『アイスクリーム熱』(『愛の夢とか』より)
『アイスクリーム熱』(『愛の夢とか』より)
川上未映子著
一言で言うと、(それだけで、終わってしまう物語なのだけど、)
アイスクリーム店員の<私>は、毎回イタリアンミルクとペパーミントスプラッシュを買う<彼>に恋をした。<私>は一緒に歩くのを提案して、何となく、彼の部屋で、アイスクリームを作ることになった。アイスクリームは、失敗した。それ以降<彼>は店に来なくなって、2か月後、店は閉店した。
『世界で最も美しい溺死体』
『世界で最も美しい溺死体』
ガルシア・マルケス著
著者ガルシアマルケスはコロンビア出身のノーベル文学賞受賞者で、魔法のリアリズムの代表作『百年の孤独』を生み出した作家。彼の作品は現実と幻想の融合とラテンアメリカの歴史や社会を反映し、多くの言語に翻訳されて世界中で読まれている。(Wikiより、かいつまんで要約)
本作品は、短編小説集『エレンディラ』に収録されている。
一言で言うと、ある小さな漁
【読書ノート】「女房ども」
「女房ども」
チェーホフ著
一言でいうと、主人公のマトヴェイ・サヴィッチが旅先で得意げに語る道徳的な偽善行為と社会的不公正な行為の数々の物語。
マトヴェイ・サヴィッチは、隣人の妻マシェンカと恋に落ちる。マシェンカの夫が帰ってきて二人の関係が発覚するまで、実は、二人は夫婦のように暮らしていた。夫の方は帰ってきて、家族と再会できたことを喜んでいたのだけど、不倫状況を知るとことになる。やがて、マシェ
『26人の男と一人の女』ゴーリキー著
『26人の男と一人の女』
ゴーリキー著
『26人の男と一人の女』という4つの短編小説で構成られる本に収録されている同名タイトルの一編。
半地下の部屋で一日中巻パンを作らされている26人の男たちと、毎朝やってくる美少女のターニャとのやりとりを通して、労働者階級の人間が、どんな生き方をしていたのか、示されている。
ターニャは毎日、男たちに一声掛けてくれているだけなのに、男たちにとって唯一の希望の