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#エッセイ
林檎 と 初恋くらい
初恋 島崎藤村
まだあげ初(そ)めし前髪の
林檎のもとに見えしとき
前にさしたる花櫛の
花ある君と思ひけり
やさしく白き手をのべて
林檎をわれにあたへしは
薄紅の秋の実に
人こひ初めしはじめなり
わがこゝろなきためいきの
その髪の毛にかゝるとき
たのしき恋の盃を
君が情けに酌みしかな
林檎畑の樹(こ)の下に
おのづからなる細道は
誰(た)が踏みそめしかたみぞと
問ひたまふこそこひしけれ
6年越しの書き抜き帳から
手のひらに収まるほどの、赤いモレスキンのノート。
読んだ本の中で、「これは」と思った文章を書き留めておくためのものだ。
本を読む時に少しでも気になったところがあるページには、迷いなくドッグイヤーをしていく。
そして少し経ってからまたその箇所を読み返して、そのときにも、やっぱりここは大切だなと思ったところを、このノートに書き写す。
自分の目で二重に濾過された文章は、ぎゅっと濃縮されたお気に入りだ