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【書評】『マクベス』(シェイクスピア)を読む。人生は歩く影法師。あなたはどう演じる?
ロッシーです。
前回、シェイクスピア文学に関しての記事を書きました。
そうしたら、今度は『マクベス』を読みたくなってきたので、スマホに入れた「Kindleアプリ」でポチっと電子書籍を購入し、通勤電車の中で読みました。
良いものほど安い
ちなみに、お値段はKindle版で396円でした。
たったの396円ですよ!
安すぎです。
一回のランチ代よりも安いんですから。
世界的名作文学のひとつが、こんな値段で簡単に買えるわけです。
しかもスマホひとつで。凄い時代ですよね。
どうやら、この世の中は、本当に価値があるものほどコスパが良いのかもしれません。
ペラッペラでスッカスカの本(というと語弊がありますが)が高い値段で売られているのを見ると、そう思わざるをえません。
『マクベス』が一番おすすめ
話が脱線しました(失礼)。
私は、シェイクスピア作品では『マクベス』が一番好きです。
そして、シェイクスピアを読む人に一番おすすめしたいのも『マクベス』です。
なぜなら、
話が短い
分かりやすい
面白い
という「早い、安い、うまい」的な3要素を全て満たしているからです。
だから、まだ読んでいない方はぜひ読んでみてほしいと思います。
いきなり読むのはとっつきにくいと思う方は、YouTubeなどで予習しておくといいでしょう。中田さんの動画なんかで概略をつかんでおいてもいいかもしれません。ただ、これを見てしまうと、本を読まなくてもいいやと思ってしまうかもしれませんが(笑)。
『マクベス』の魅力
※以下、ネタバレ注意
『マクベス』の魅力は、主人公のマクベスが、破滅へ向かって突き進んで行く様が、濃い密度で描かれていることです。
彼は、運命に受動的に翻弄されているように見えるのですが、実はマクベス自身もあえてそれに「主体的に」身を委ねることで、「悲劇的な自分を満喫している」印象を受けます。
結局最後はマクベスは死ぬわけですが、かといって彼が不幸だという印象は持ちません。それは、彼が自分の人生を味わい尽くしたように見えるからではないかと思うのです。
つまり、マクベスは自分に与えられた「悪」という役割をきちんと演じ尽くしたということです。
最初は、
「自分にそんな役がきちんと演じられるのだろうか?」
と不安だったマクベスは、マクベス夫人の手助けや魔女の預言に頼らざるを得ないある種の弱さを見せています。
しかし、物語の終盤になってくると、彼にはもはや迷いはありません。
もはや「俺は悪なのだ。もう仕方がない。これで行くのだ!」という覚悟に満ちています。
「どうせ悪という馬に乗るなら、徹底的に最期まで突っ走ってやる!」
とでもいわんばかりに。
彼がそのような覚悟を決めることができたのは、「自分の死」というゴールを強く意識することができたからだと思います。
もはや魔女の預言にも頼れないことが判明し、マクベス夫人も死んでしまい、あとは自分に残されたのは滅ぶことだけ。
しかし、まさにそのときこそ彼は生き生きとして最後の炎を燃やし尽くすのです。
生きるとはなんなのか
マクベスを読むと、生きるとはなんなのか?
について考えさせられます。
単に生きるだけではなく「良く生きる」とはどういうことなのか?
悪を行い、死に急ぐかのように破滅へと向かったマクベスは、果たして不幸だったのか?
逆に、悪にも善にもなりきれず、無難に人生を過ごして死ぬのが幸福なのだろうか?
人生に意味がないのだとすれば、どうすれば自分で意味をつくれるのだろうか?
など、色々なことが浮かんできます。
有名なセリフ
最後に、『マクベス』で最も有名なセリフをご紹介します。
私が大好きなセリフです(英語バージョンも記載します)。
消えろ、消えろ、つかの間のともし火!
人の生涯は動き回る影にすぎぬ。あわれな役者だ、
ほんの自分の出場のときだけ、舞台の上で、みえを切ったり、わめいたり、そしてとどのつまりは消えてなくなる。
白痴のおしゃべり同然、がやがやわやわや、すさまじいばかり、
何の取りとめもありはせぬ。
【英語バージョン】
Out, out, brief candle!
Life's but a walking shadow, a poor player,
That struts and frets his hour upon the stage,
And then is heard no more. It is a tale
Told by an idiot, full of sound and fury,
Signifying nothing.
マクベスは、マクベス夫人が死んだことを聞き、このセリフを独白します。英語で聞くと、リズムが素晴らしいです。
「人生は歩く影法師」
そう思ったマクベスにとっては、もはやこの世の中は仮想現実のようなものだったのかもしれません。
だとすれば、やるべきことは、自分の役割を最期まで演じ切り、この世界という劇場から退場すること。
そんな気持ちだったのかもしれません。
彼が何を思っていたのか、それは分かりません。
でも、それをあれやこれやと想像することで、より『マクベス』を深く味わうことができるような気がします。
「この世界という劇場において、あなたの人生の役割は何でしょうか?」
最後までお読みいただきありがとうございます。
Thank you for reading!