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中村華丸
2021年12月16日 11:54
次の日の朝から「鑑とり」班が二子玉川に投入された。 殿山、白木も二子玉川に入った。昨日までと引き続きアパートを捜索する旨を吉岡係長に言って許可をもらった。ただし、男のモンタージュと一緒に被害女性のモンタージュも持って、聞き込みをするように注文が付いた。「二子玉川にアパート借りている可能性があると考えていますか?」不動産や目指しながら歩いている途中、白木が話しかけてきた。「被害女性の場合はあ
2021年12月16日 11:38
次の日、朝の会議の時に吉岡係長から発表があった。「昨日の夜に鑑識から報告があった。女性は複数回性交渉していた形跡があるそうだ」「吉岡係長。犯人とは直前に性行為をした形跡はないと先日ありましたが…」「そうだ。犯人とはSEXはしていない。だがSEXは頻繁にしていた可能性は見つかった。考えるに性風俗店で働いていたか、性意識が低く不特定多数の男たちと一夜だけの関係を被害女性は持っていたかもしれない
2021年10月23日 22:11
警察犬が被害女性の物と思われる靴を都営浅草線中延駅から第二京浜を戸越に向かった道路沿いで発見した。女性はあるアニメとファストファッションブランドのコラボ商品の靴を履いていたことが分かった。彼女が着ていたTシャツもそのアニメキャラクターの物と分かっているので、そのアニメの関連を調べることになった。それは「物」班の担当になる。 警視庁の事務職員の中にアニメ全般に詳しい者が二人いて、一人は二十代でい
2021年10月17日 20:47
朝の会議が終わり、白木は殿山より早く立ち上がった。「今日から一緒に行動することになりました」と言った。白木はもう新人ではないので、特別頭を下げるような行為はしなかった。「新木場周辺の焼却炉がある工場を回ろうと思う。特に毎日燃やしている所を回ろう」殿山が言うと白木は黙って頷いた。 地下鉄東西線の新木場駅に着いた。捜査本部が東京湾岸警察署に依頼して手に入れた地図を広げた。地図には近隣の工場
2021年9月30日 21:23
殿山が警部補から警部に上がらないのは、主任捜査官から係長への出世を拒否しているのは責任ある立場に成りたくないのではなく、会議室で捜査員が持ってくる情報をただ待っているのが性に合わないからだ。いずれは捜査一課の係長のポストに上がろうとは考えている。 会議室の後ろに座っていた荏原署の捜査員から早々に退散して行き、逆に八係の捜査員は直ぐには立ち上がって帰ろうとしていないでいた。八係の捜査員は毎日の書
2021年9月23日 15:33
見つかったレインコートと小刀から人の血液の反応は出たが、そのDNAまでは解析は困難と鑑識に言われた。わざと置いたと見る意見と焼却に失敗してレインコートと小刀の形だけかろうじて残ったと見る意見が捜査員の中から出た。当然、警視庁は中延三丁目の殺人事件の物的証拠と考えた。 殿山はレインコートと小刀が発見された工場の敷地内を、深川署から直行して歩いた。工場の敷地は広く、工場も大きい。二十四時間体制で木
2021年9月20日 20:44
次の日、荏原署での捜査会議は朝八時から始まった。昨日と同じ捜査員の顔が見える。一睡したので、昨日の解散前に見えた疲れはどの顔にもない。解き放たれるのを待つ狩猟犬のようなやる気が漲った顔をみんながしている。それを確認して吉岡係長が話し始めた。「おはようございます。捜査二日目です。みなの顔を見渡せばやる気に満ちた顔をしていて頼もしい。期待してるぞ。昨夜は不明確だった検死報告がより正確に分かった。コ
2021年9月7日 20:26
会議のあと、白木と服部は各々コンビを組んでいた荏原署の刑事に、一杯飲みながら一緒に今後のことを話しませんかと誘われた。特に白木は法本から酒を誘われたが、いつもそうしているように「警視庁に帰って終わらせる書類仕事が残っていますので」と言って断った。二人は並ぶように荏原署を出ると、真っ直ぐ警視庁捜査一課の自分たちのデスクに向かった。自分たちのデスクで書類仕事をしていると三十分遅れて殿山も捜査一課に現
2021年9月1日 11:13
被害者の身元が分からないこともあり、犯人の痕跡がげそ痕しかないこともあり、二人が歩いてきた想定で警察犬が投入された。当然犯人が空き家まで自分の車やオートバイに被害者を乗せて移動してきたことは想定された。しかしなにより手がかりが少ない、初動捜査を充実させるために、空き家にめぼしい証拠がないと判断した鑑識班はすぐに警察犬を出動させた。中延の空き家から警察犬は犯人の足の臭いを追って、地下鉄浅草
2021年8月31日 23:29
部屋は、玄関から入ってすぐにキッチン、キッチンには小さなダイニングテーブルがあり、申し訳程度のリビングがある。ダイニングテーブルにあやみが拘置所から持ってきた小さなバッグが置かれている。リビングの左には布団、整理ダンスとして使っているラック、これまでの引っ越しで開けなかった段ボールなどがしまわれいる押し入れがある。リビングの真ん中にはちゃぶ台と座布団が二枚、それに魔法瓶と電気釜、電子レンジが床に
2021年8月30日 20:58
「地取り」捜査の奥平班に入った白木は、サングラスをかけた所轄の刑事とペアになった。サングラスの刑事は法本健一と言い、警部補で殿山と同い年だった。レザーのジャケットの中はタートルネックのシャツ、セカンドバッグのような微妙な大きさのバッグを片手に持ち、その手首には二センチ幅のゴールドのクサリ、何をお願いしているのかもうすぐ切れそうなミサンガ、殺人・誘拐・放火担当には見えず、風貌からしてマル暴担当の刑事
2021年8月28日 22:51
荏原署の講堂に特捜本部が設置された。正面の壇の下に捜査員と向かい合うように横長に並べられた折りたたみのテーブルには、立花捜査一課長、荏原署佐藤署長、蜂谷管理官、荏原署田中刑事課長、吉岡第八係長などが重い表情で座っている。警視庁捜査一課が加わる捜査の習いとして、警視庁の刑事が一番前、指揮トップの近くに座り、所轄の刑事、所轄の署の制服警官、交番の警官という席順になる。殿山、奥平、土岐、笠山、亀田、白
2021年8月25日 21:51
祐輔の元にあやみはまた帰ってきた。麻薬の不法所持で捕まったあと、旅行から帰ってきたみたいに悪気も見せず、祐輔の元に帰ってくるのはこれで四度目だ。近くに戸越銀座商店街がある新しい部屋に、あやみを連れてきたく無かったけども。「わたし帰れるところは、祐輔くんのところだけ」少し顎を引きながら上目遣いで言うから、あやみを連れてきてしまった。 あやみは、刑務所に入っていた時に祐輔が届けたオレンジ色のシャ
2021年8月23日 11:21
品川区中延三丁目の現場空き家は、荏原中延駅から十五分くらいの場所にあった。品川といえど港南地区や山手線新駅がある高輪、三田のようなスクラップ&ビルドが盛んに行われている場所とは違い、まだまだ昭和の雰囲気が多く残っている。警視庁から現場に来るまでに、何台もの捜機の車両とすれ違った。犯人らしき人間を確保したと無線が入らないから、犯人はすでに電車か自身の車で移動してしまった後なんだろうと白木は思った。