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2023年美術鑑賞記録

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2023年に見た美術展色々
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#現代美術

【Suicaで行く桃源郷】埼玉県立近代美術館 桃源郷通行許可証&MOMASコレクション

【Suicaで行く桃源郷】埼玉県立近代美術館 桃源郷通行許可証&MOMASコレクション

埼玉県立近代美術館、2度目の来訪。
今回も…
お、面白かったー!!(1月28日来訪)

【企画展】【桃源郷通行許可証】

※1/29会期終了
この、所蔵コレクション×現代作家の企画展ってこの数年のトレンドかもしれないけれど、ほぼ、ハズレがない。
皆、渾身の作品をぶつけて来ている感があって、対決しているわけではないのだけど、タイトルマッチ!だ!

(そう言えば昔、赤瀬川さんが資生堂の機関誌「花椿」で

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【微粒子を吸い込んで生きている】赤瀬川原平写真展「日常に散らばった芸術の微粒子」SCAI PIRAMIDE

【微粒子を吸い込んで生きている】赤瀬川原平写真展「日常に散らばった芸術の微粒子」SCAI PIRAMIDE

赤瀬川原平さんの自宅から未公開の4万点ほどのリバーサルフィルムが出てきたそうだ。撮影期間は1985年〜2006年。

中古カメラ病から始まり、トマソン、路上観察、考現学などなど、赤瀬川さんの芸術活動の後半生を語る上でカメラと写真は外せない。
私も写真集「正体不明」が赤瀬川さんとの出会いである。
1996年の受験勉強で訪れた図書館でその背表紙を見つけた。

ネオダダやアンデパンダン、千円札裁判、美学

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【美術館の解体は避けたい】コレクション解体新書Ⅱ 1970年代以降の作品を中心に 目黒区美術館

【美術館の解体は避けたい】コレクション解体新書Ⅱ 1970年代以降の作品を中心に 目黒区美術館

目黒区美術館のコレクション展示企画。

この美術館は面積の関係でコレクション展示室を持っていない。
なので年に数回ほど、企画展のない時期にコレクション展をしている。

ここ数年、企画展ももちろん好きだが各美術館が
どんな方針で
どれぐらいの時期から
どんな作品を
集めてきたのか、が気になる。

解説には社会状況の背景や予算に悩まされたり、どんなコレクションを工夫し来たのか、また、現在の建築を活かし

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【展示室で深呼吸】被膜虚実/Breathing めぐる呼吸 MOTコレクション 東京都現代美術館

【展示室で深呼吸】被膜虚実/Breathing めぐる呼吸 MOTコレクション 東京都現代美術館

東京都現代美術館。企画展の大行列をよそに建物の奥へ進むと現れるコレクション展示室では今年度最初の展示が始まった。

今回は新所蔵品をお披露目と80年代後半からの作品を集めた「被膜虚実」という1階の展示、人の呼吸すなわち大気や空気、風をテーマに「Breathing めぐる呼吸」と名付けたの3階の展示に分かれている。

「被膜虚実」

三上晴子氏のものものしい作品が第一室に。
三上晴子氏の活動や作品を

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【わかることが全てじゃない】タグコレ 現代アートはわからんね 角川武蔵野ミュージアム

【わかることが全てじゃない】タグコレ 現代アートはわからんね 角川武蔵野ミュージアム

展示タイトルになっている「現代アートはわからんね」は何を隠そう、いまや現代アートコレクターの筆頭、田口さんの言葉である。

わからない。わからないから、おもしろい

読む、展覧会。

「わからない」視点でコレクションが始まっていくのも面白いし、入手経路にドラマがあったり、入手後、その作品との付き合い方など、
エピソードが面白い展覧会だった。
読む、展覧会。
読む、展覧会。。。なるほどだから出版会社

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【展示替えされた物とは?】再訪クリスチャン・ディオール 夢のクチュリエ展

【展示替えされた物とは?】再訪クリスチャン・ディオール 夢のクチュリエ展

Dior展2回めの突撃。

23年1月に訪れたクリスチャン・ディオール 夢のクチュリエ展。
あの空間が忘れられず再び体験したくて3月にもう一度行ってきた。

初見より落ち着いて見れるはず、という予測通り幾分冷静にじっくり見ることができた。
展示の感激、初動の興奮は先に書いた記事に及ばないので、前回触れずにいたけど面白かったことをいくつか。

Diorと日本のかかわりについての項目

Diorの日本

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【ひらめくスカート】今井俊介 スカートと風景 東京オペラシティアートギャラリー

【ひらめくスカート】今井俊介 スカートと風景 東京オペラシティアートギャラリー

東京オペラシティアートギャラリーについて
「アートギャラリー」と呼ばれているが、企画展示室に加えてコレクション展示室、更に新人アーティスト展示室もしっかりも備えており、一部都内公立美術館よりも設備が整っている良質な美術施設。コレクションの展示替えも会期ごとに行われ毎回テーマに沿ったキュレーションを楽しませてくれる。

新宿界隈は大型美術施設が少なく、ここが唯一貴重な広さをもつ美術施設である。

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【木が石へ水へ】 戸谷成雄 彫刻 埼玉県立近代美術館

【木が石へ水へ】 戸谷成雄 彫刻 埼玉県立近代美術館

長野県出身の彫刻家、戸谷成雄の回顧展。学生時の作品から最新まで網羅的に見ることができる展覧会である。

一つひとつがでかい戸谷成雄の彫刻。
展示室に複数体並べて展示する作品も多く、並べるだけでインスタレーションである。

先日世田谷美術館で見た作品と同タイプの「森シリーズ」もあったが、展示の方法と鑑賞ルールが違い、埼玉近代の展示では複数体の間をすり抜けて見学もOKだったことに驚いた。

本当に森の

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【解れていく感覚】ダムタイプ|2022: remap 第59回ヴェネチア・ビエンナーレ国際美術展日本館展示帰国展 アーティゾン美術館

【解れていく感覚】ダムタイプ|2022: remap 第59回ヴェネチア・ビエンナーレ国際美術展日本館展示帰国展 アーティゾン美術館

2023/04/23訪問

日本のアート・コレクティブの先駆け的な存在であるダムタイプ。ヴェネチア・ビエンナーレに出品された作品の凱旋展示、とでもいいましょうか。
ヴェネチア・ビエンナーレ出品に石橋財団が全面的な支援をしてきたので、ブリジストン美術館時代から現在のアーティゾン美術館になっても凱旋展示はここで行われる。

ヴェネチア・ビエンナーレ、歴代様々な方々が出展している中の最新がダムタイプ。キ

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【立場が変わると景色が変わる】ケアリング/マザーフッド:「母」から「他者」のケアを考える現代美術

【立場が変わると景色が変わる】ケアリング/マザーフッド:「母」から「他者」のケアを考える現代美術

ケアリング/マザーフッド:「母」から「他者」のケアを考える現代美術
―いつ・どこで・だれに・だれが・なぜ・どのように?― 水戸芸術会館現代美術ギャラリー(5/7会期終了)

まず、この企画を実施した水戸芸の視点と、展覧会に来場していた客層を見て数年前森美術館で行われたアナザーエナジー展の時より少し、何かが変わったのかなと思えたのだ。

展覧会の趣旨は
ケアを通して見えてくるもの、ケアを「ひとり」か

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【美術の味わいって?】センス・オブ・ワンダー 感覚で味わう美術/新所蔵品展 静岡県立美術館

【美術の味わいって?】センス・オブ・ワンダー 感覚で味わう美術/新所蔵品展 静岡県立美術館

収蔵品による企画展と新所蔵品展。
23年5月3日。
はるばる東海道線の在来線に乗ってドコドコ揺られて静岡まで行ってきた。
前日には茨城にいた。茨城水戸と静岡その間約300km。
この2日間移動したなー!

東海道線の草薙駅を降り、静岡大学方面へ歩いて移動。
山の上にあるのでほぼ上り坂である。
5月の晴天の静岡。暑い。
美術館の敷地内の散歩道に差し掛かると木陰もあり、野外彫刻がちらほら。
それぞ

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【洗濯バサミを追い京都へ】Re: スタートライン 1963-1970/2023 現代美術の動向展シリーズにみる美術館とアーティストの共感関係 開館60周年記念 京都国立近代美術館

【洗濯バサミを追い京都へ】Re: スタートライン 1963-1970/2023 現代美術の動向展シリーズにみる美術館とアーティストの共感関係 開館60周年記念 京都国立近代美術館

昨年2022年に開館70周年だった東京国立近代美術館に続き、今年2023年は京都国立近代美術館が開館60周年ということだ。

近代の画家や京都画壇の作品収集をしながらも早い段階で「『今』の美術」を開示してきた京都国立近代美術館。
伝統的な歴史ある地域だからこそ「現代美術の動向」というテーマで1963年〜70年まで展示してきた意義は深いのだろう。

同じ頃、東京都美術館では読売アンデパンダン展の熱気

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【芸術!と言ったもん勝ち?】芸術とは何かを考えさせる、ふたつの問題作─赤瀬川原平《模型千円札》とマルセル・デュシャン《泉》2023年度 第1回コレクション展 京都国立近代美術館

【芸術!と言ったもん勝ち?】芸術とは何かを考えさせる、ふたつの問題作─赤瀬川原平《模型千円札》とマルセル・デュシャン《泉》2023年度 第1回コレクション展 京都国立近代美術館

5月末の京都、東山にある京都国立近代美術館。
「Re: スタートライン 1963-1970/2023」展を見終わって、さてコレクション展とそそくさと階段を降りる。

今回はコレクション展に赤瀬川氏の作品が出ている、というのを予め聞いていたので、京都行きの目的はこの展示だったのだ。
(寄り道した大阪で20年ぶりに大本命作品に再会してしまう、という嬉しい事件も起きたが)

模型千円札なら都内の各所で見

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【花火ではない、火花である】蔡國強 宇宙遊 ―〈原初火球〉から始まる 国立新美術館

【花火ではない、火花である】蔡國強 宇宙遊 ―〈原初火球〉から始まる 国立新美術館

蔡國強。
見た後にちょっと希望の導火線に火がついて胸の中の元気が爆発するかもしれない。
エネルギーに満ちた展示だった。

花火ではない。火花だ。
もともと美しく魅せようとしていない。
蔡氏の描く作品に使う素材は火。

近隣の美術館に作品が収蔵されていたり、と見る機会は何度かあり馴染み深い作家ではある。
約30年前1994年、世田谷美術館での個展の図録が何故か自宅にある。

和綴じの素敵な図録。

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