雛菊リネ

しがない物書き。お酒と和柄。

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最近の記事

坂道に向かって地下鉄の風が吹く

 鉄道は地下を走っている。階段をぐるぐると下って,ホームを目指す。地元では使う必要のないSuicaを改札に翳してみることで,今自分が東京にいると実感した。タイル状の固い地面にヒールがぶつかる音が大して目立たない。東京ではありふれた生活音らしい。  目的地の駅に行くためにはいくつかのルートが存在している。まるで人生の選択肢が多岐にわたることを示すみたいに。この歳になって山手線しかろくに知らない私は,わざわざ新宿駅で電車を降りる。頭上のホーム案内を立ち止まって読み解く自分の姿は

    • 2023年の雑記

       パソコンを起動させることが何となく億劫に感じて、スマホで文章を打ち込んでいます。雨予報のような雪予報のような、ぱっとしない天候の大晦日です。全部降ってしまえ、というのは逆にナンセンスでしょうか。2週間前に観たオーディション番組の煌めきをまだ忘れられないまま、年を越そうとしているわけですが。  キーケースを新調しました。酔っ払ったノリで選んだものだけれど気に入っています。自分の趣味とかセンスとか、これまでに読んできた本だとか、そういうものを否定せずにこれからも生きていきたい

      • 年末を前にして

         魚津のダイニングバーで食べたバーニャカウダの味が忘れられない。どうせ一人で行くのだからカウンター席だし,ダイニングバーのカウンター席って小さいから邪魔にしかならないだろうと思って,コートを着ずに静かな駅前を闊歩した。あいにく雨と風が強い夜で,指先の感覚がじんわりと麻痺したような状態のまま店に入ったのだ。新幹線が停まる駅前の割に,しかも土曜日のくせにひどく閑散としていたのはきっと悪天候のせいだと結論付けた。  特段自分はバーニャカウダに詳しいわけでもない。もっと言えば厳密な材

        • 季節が終わることに慣れない

           夏は京都に滞在した。カフェとバル,寺社仏閣。乗り換えが数分おきに来る私鉄で初めてSuicaを本格的に使った。コインロッカーがマンションのように並んでいた。まとまりごとに花の名前が付けられていた。人ごみに紛れると日傘が不便で,よく日焼けした盆となった。お賽銭の額が足りなかったかなとか,そういうどうでもいいことを9月になっても考える。  風呂上がりも風呂の意味が無いくらい暑かった。秋の京都に人気がある理由を痛感する。あの時期は甲子園が続いていて,見知らぬ高校球児たちを酒を飲みな

          道楽が評価される風潮、なんなの?

           平日の職場で、特に誰に言われたわけでもなく「自立した女の物真似」に勤しんでいる。結婚、めんどくさいですと苦笑いをしてみている。欲しいものは彼氏に買ってもらうんじゃなくて自分で買います、社会人だから、とおどけてみせる。ただ、こんな話を振られること自体がめんどうだから、いっそのことフェイクの結婚指輪でも買ったらいいんじゃない?とか最近思う。そもそも結婚や彼氏の予定も計画も無い。不毛な物真似である。  SDGsを謳う弊職場では、至るところに環境が云々とかひとりひとりの心掛けが云

          道楽が評価される風潮、なんなの?

          あの季節外れはひっそりと呼吸している。

           この間高校を卒業して,晴れて東京の大学生になった知り合いから連絡がきた。最近の子たちはラインではなくインスタで連絡を取り合うことに軽く驚いた。東京で一人暮らしを始めたところだと言う。 「ご飯作れなくて死んじゃいそうー,最近パスタとかお菓子とか,そればっかり 笑」。最後に笑いを添えた文面を見て,自分が大学生をしていた数年前がよみがえる。  地元の大学に進学した私だが,通学が現実的でないという理由で学生時代は寮で過ごした。雪は少ないが冬はだいぶ冷え込み,夏もそれなりに暑いと言わ

          あの季節外れはひっそりと呼吸している。

          睦月,雨,日曜日

           日はそこまで強く出ていないのに,一応1月のはずなのに肌がひりつくような寒さを感じないなと思って窓から外を眺めると,庭のコンクリート部分が濃いグレーに濡れていた。雪ではなく雨が降っているのか。なら確かにこの気温にも納得できる。すっかり時間が経って温くなったコーヒーを飲み干すと,微妙な酸っぱさが喉を滑り落ちた。冬至が過ぎた冬,夕方に差し掛かろうとする時間帯ではあるが,まだ辺りは暗くない。  昨年の2月に出版された川上未映子氏の短編集がようやく図書館で借りれたので読み進める。最終

          睦月,雨,日曜日

          片づけと買い物から思い出したこと

           年の瀬なので家の片づけをする。大掃除というと少し大げさのような気がしてならないので片づけとしておこう。自分の部屋を見渡し,私物を適切な場所にしまい,要らない印刷物を処分する。こうして言葉にしてみると,確かに大掃除とのたまうほど大がかりなものではない。しかし,紛れもなく年末恒例の生活行為である。  自分の私物において適切な場所に整理整頓をすべきものの大半は文庫本だ。市立図書館に置いていない小説は本屋で,時には古本屋で探すことが多い。ちなみに,古本屋とはブックオフのことである

          片づけと買い物から思い出したこと

          神様は気まぐれに秘密をばらす

           6月12日。この日をもって「アーティスト・まふまふ」は無期限活動休止期間に入った。ネットシーンを長く牽引してきた彼は東京ドームライブを終え,静かにさっぱりと―ただ一言幸せだと言い残し,舞台袖に身を引いた。自分が中学生,いやそれよりもう少し前か? とにもかくにも,当時多感な時期だった自分の価値観が彼の作品によって象られたのは本当のことだと思う。  電撃的な無期限活動休止の発表は自分に大きな衝撃を与えた。そしてすぐに,ある様々なことに疑問を持った。しかし,少なくとも第一報が流れ

          神様は気まぐれに秘密をばらす

          恋愛作品を好むことと恋愛体質であることは必ずしもイコールではない。

           敬称略をお許しください。  好きな作家は村上春樹と島本理生。日常生活の中で恋愛小説を読む時間がそれなりにあると嬉しい。恋愛ドラマを邪険にすることもない。むしろ好んで観る方かもしれない(4月から始まる広瀬アリスと松村北斗がW主演を務めるドラマが今から非常に楽しみだ)。ちなみに昨年放送された『最愛』は名作だと思う。  少女漫画を読んで育った。当時流行った作品は一通り読んだ気がする。杉山美和子作品と持田あき作品が特に好きだ。好きな歌はと聞かれれば、Indigo la Endや

          恋愛作品を好むことと恋愛体質であることは必ずしもイコールではない。

          年の瀬は雪が積もる様

           今年は珍しく11月から雪が降った年。年の瀬のこの日も朝から雪が降り続いていて、既に10センチほどは積もっただろうか。年末年始休暇中の私は降り続く雪を窓から時々眺めながら、久方ぶりにnoteを開く。更新は家族についての記事で止まっており、もうあれからえらく時間が過ぎているなと思った。  基本的に蛇行運転を繰り返すことで時間を浪費してきた私だったが、今年だけは全力疾走をさせられたような年だった。いきなり短距離走の選手に腕を掴まれ、延々と引っ張られながら走らされる―待って止まっ

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          水底に都はあるか、あるわけ無いだろ

           22年間強。長いようで短くて、意味があるようで無いような自身の人生。近頃の私は、深海の奥底で生きている。死ぬほどの勇気がないことと、死ぬことすら面倒だということ、まだ匙を投げられないから、結局のところ自分は愚図だから、ひとりで呼吸を詰めている。  来年、姪か甥が産まれることになった。新しい命の誕生、大変喜ばしいことである。きっと、ものすごく可愛いはずだ。きっと、望まれて、祝福されて、それで産まれるのだろう。そうでなければならないのだ、一般論で言うならば。  ところで、私

          水底に都はあるか、あるわけ無いだろ

          上手にお酒が飲めない駄目な大人です。

           自分が二日酔いの時は、決まって東海オンエアサブチャンネル「ゆめまるは二日酔いで撮影できません」と夕闇に誘いし漆黒の天使達サブチャンネル「【酒卍】小柳の二日酔いが原因で撮影ができなくなりました」の動画を観てしまう。二日酔いの人の動画を観ると、二日酔い中の自分は安心するのだ。もらい酔いするけど。  すみません、昨日は飲み過ぎました。調子に乗って学生の時のテンションで酒を飲んでしまった社会人一年目の大人です。ビール1.35リットル、チューハイ0.5リットル、果実酒についてはどの

          上手にお酒が飲めない駄目な大人です。

          人生とアレルギーの話

           化粧は社会人のマナーであるが、私はベースメイクというものをしたことがない。いつも眉をかいて、アイシャドウとアイラインを瞼に乗っけて、それで出勤している。化粧にかかる時間は五分ほどである。  突然ではあるが、私はアレルギー体質であることをここで告白することにする。正確に言うと、アトピー性皮膚炎と花粉症。月に一度は皮膚科に通い、ステロイド薬(外用薬)と抗アレルギー剤(内服薬)を処方してもらっている。一回の通院で諸々合わせて三千円ほどが飛ぶ。社会人になって自身に関わる出費を自分

          人生とアレルギーの話

          トーキョーのOLにはどうしたってなれない

           素敵なオフィスカジュアルスタイルの服を身にまとい、アップルのPCを小脇に抱え、おしゃれなカフェに一人で入ってカフェラテを飲みながら華麗なタイピングで仕事をする―。中学生の時に私は、いわゆるオフィスレディというものはこのようにして日々をさぞ有意義に過ごしていくんだろうなあと漠然と考えていた。そして、自分も23歳になったらこういった女性になるのかなあともぼんやり思っていた。非常に無鉄砲で自意識過剰的な思春期だと、我ながら驚く。  大学を卒業して、晴れて社会人となった。コロナ渦

          トーキョーのOLにはどうしたってなれない