睦月,雨,日曜日
日はそこまで強く出ていないのに,一応1月のはずなのに肌がひりつくような寒さを感じないなと思って窓から外を眺めると,庭のコンクリート部分が濃いグレーに濡れていた。雪ではなく雨が降っているのか。なら確かにこの気温にも納得できる。すっかり時間が経って温くなったコーヒーを飲み干すと,微妙な酸っぱさが喉を滑り落ちた。冬至が過ぎた冬,夕方に差し掛かろうとする時間帯ではあるが,まだ辺りは暗くない。
昨年の2月に出版された川上未映子氏の短編集がようやく図書館で借りれたので読み進める。最終ページの彼女の経歴を見ると,村上春樹氏との共著作品もあるらしいとの情報を得た。二方に交流があるとは知らず,少しだけ意外だなあとも思う。何となく,ぼんやりと。
また春がやってくる。花粉と枝毛と,それから限定物の化粧品。暇な日なので,本を読む合間に惰性で枝毛を切る作業をする。件の短編集のタイトルは『春のこわいもの』だ。春だから,桜の匂いの限定トリートメントがインスタに出回っている。ああいうのって夏になっても使い切らなかったらどうなるんだろう。猛烈に暑い中で桜の匂いがするって,桜に罪は無いにしろ間抜けじゃないかと不安になって買えない。楽して困らない人生を送りたい。小さな鋏で切り落とした枝毛は既に数えきれないほどにまで積み重なっている。
ジャージのまま宮古島のゲストハウスを検索する。部屋の画像に加えて海とかビビットカラーの花とか,よくわからない色をした飲み物とか,ガラスとかの画像が混じっている。ある程度までスクロールして,宮古島ってとりあえず遠いんだと結論付けて,スマホのホームボタンをタップした。特に意味もなければ生産性もない行為だった。世間一般的にみると,自分のような人間のことを子供部屋おばさんと呼ぶ。自身の名誉のために一言添えるとしたら,定職には就いているタイプの。
女性の結婚適齢期がクリスマスケーキに例えられた時代が過ぎて,今は年末年始に例えられるように変化したと聞いたことがある。結婚が幸せとは一概には言えないだろうが,幸せに見えるというのは真理か。同居する家族のあらゆるものへの扱き下ろしを背後に聞きながらこの文章を書いている。とにかく周囲の干渉が大きく,田舎であればあるほどほぼすべての女性の結婚が叶った親世代がとても幸せそうには思えないのだが,何を根拠にどうしてそんな高説を垂れるのか。世間体のための結婚をした人が,世代も価値観も違う他人に教えることなんてあるのか。
そういえば大学の同期が昨年結婚したなと振り返りながら,自分の身の振り方,老い方に憂いを馳せる。