永岡 綾(編集者・製本家)

編集者、ときどき製本家。著書『週末でつくる紙文具』、編著書『ぼうけん図書館』、編書『本…

永岡 綾(編集者・製本家)

編集者、ときどき製本家。著書『週末でつくる紙文具』、編著書『ぼうけん図書館』、編書『本をつくる 職人が手でつくる谷川俊太郎詩集』など。製本工程+製本思索+おすすめの一冊を2000字ほどで。 https://www.instagram.com/weekend.bookbinder/

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【製本家の本棚】 自己紹介の代わりに

本と本づくりをこよなく愛する、遅読で遅筆な「編集者、ときどき製本家」です。編集者として本を編みながら、時間を見つけては製本家として本をこしらえる — そんな、本をつくってばっかの日々を送っています。編集した本は世にでて光を浴びますが、製本した本は暗所に埋蔵するだけの習作も多く、せめてここに記録することにしました。 何千冊、何万冊刷られようと、どんな本も読み手にとってはたった一冊の存在です。読んだ時間、読んだ空間、読んだ気持ち……あらゆるものが折りたたまれて「わたしだけの本」

    • 【製本記】 木を植えた男 | 丸背上製・半革装

      ここのところルリユールの作業にかかりきりで、なかなか本ができあがらない。そこで、以前つくった本の記録も残していこうと思いついた。つくってから随分経つものもあるので詳細はうろ覚えだが、製本様式や製本材料について、思いだせる範囲で記そうと思う。 まずは、ジャン・ジオノの『木を植えた男』から。南フランスはプロヴァンスの荒れ地でひたすら木を植えつづけ、何十年もの時間をかけて森をよみがえらせた男、エルゼアール・ブフィエの物語だ。この作品は、横組で左開きの大型絵本でおなじみだが、これは

      • 【ルリユール倶楽部】 06 | モモ、カメの速度で追い上げるも

        2024年9月某日、ルリユール倶楽部は第6回目を迎えた。月に一度の開催だから、ちょうど半年経ったことになる。倶楽部活動をはじめたのなんて、ついこないだのことだと思っていたのに。 500年前のルリユールの手法に倣って、一工程一工程を踏みしめるように本をつくっていると、半年や一年なんて一瞬だ。ときに足を滑らせたり、立ちすくんだりしながら、たった一冊の本に気の遠くなるほどの時間を捧げている。こうしていつまでも捧げていたいけれど、いつかそれが叶わなくなるときもくるだろう。ルリユール

        • 【column】 拙著 『週末でつくる紙文具』 が英語版になりそうで、ならなくて、とうとうなりました!

          2024年の夏、拙著『週末でつくる紙文具』がアメリカのHardie Grantより翻訳出版された。製本の技術を使った文具づくりの本なのだが、『JAPANESE PAPER CRAFT』という何やら恐れ多い感じのするタイトルがつき、アメリカとイギリスで販売されている。 遡ること2年、2022年にはフランスとドイツで翻訳出版されているのだが、実をいうと英語版も同時に発売されるはずだった。ところが、やむにやまれぬ事情がいろいろあったようで、英語版だけどうなるのかわからない状態が長

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        【製本家の本棚】 自己紹介の代わりに

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        • 【ルリユール倶楽部】 月いち作業記録
          6本
        • 【本の展覧会】 製本好きのためのレビュー
          6本
        • 【製本記】 野ばら
          5本
        • 【製本記】 小川未明童話集
          7本
        • 【製本記】 飛ぶ教室
          9本
        • 【製本記】 かえるの哲学
          9本

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          【workshop】 糸かがりノートをつくろう | 『週末でつくる紙文具』 ワークショップ at TEGAMISHA BOOKSTORE

          — 製本ワークショップのご案内 —  2024年10月14日、東京・西調布の「TEGAMISHA BOOKSTORE」にて製本ワークショップを開催します。手紙社が運営するこの書店は、本好き&文具好き垂涎の空間。素敵な本とともに、350種類ものオリジナルペーパーが並びます。お好みのペーパーを使って、糸かがりのノートをつくりましょう。 item 今回つくるのは「糸かがりノート」です。 糸でかがるので、開きのよさは抜群! スケッチやメモに重宝する文庫サイズの一冊を、背はむきだ

          【workshop】 糸かがりノートをつくろう | 『週末でつくる紙文具』 ワークショップ at TEGAMISHA BOOKSTORE

          【ルリユール倶楽部】 05 | シャルニエール界隈で迷子

          2024年8月某日、ルリユール倶楽部の第5回目を目前に、わたしは焦っていた。前回から1 か月の進捗は、まるで亀並み。直前の2日間「亀は亀でも、もう一歩!」と、しょぼしょぼの目をこすりながら深夜に作業した。思ったところまではできなかったものの、やるだけやったと自分を慰めた。 この感じ、何かに似ているなと思ったら、子どもの頃の夏休みの宿題だ。折しも8月最終週、この歳になってもこんな夏を過ごしている自分が情けないやらおかしいやら。自由研究や読書感想文はいいとして、算数のドリルは毎

          【ルリユール倶楽部】 05 | シャルニエール界隈で迷子

          【本の展覧会】 内藤コレクション 写本 — いとも優雅なる中世の小宇宙

          上野の国立西洋美術館といえばクロード・モネの「睡蓮」やオーギュスト・ロダンの「考える人」がハイライトだが、本好きなら見逃せないのものがある。「写本」のコレクションだ。いつだったか常設展の一角で額縁に収められた写本の零葉たち(本から切り離された紙葉)を見て、釘づけになった。本という全体から引き剥がされ、にもかかわらずその面影を残す紙葉たちは、ゴシックの様式を伝える美術品の一つとして堂々と光を浴びていた。 今夏、その写本ばかりを集めた企画展「内藤コレクション 写本 — いとも優

          【本の展覧会】 内藤コレクション 写本 — いとも優雅なる中世の小宇宙

          【workshop】 布貼りノートをつくろう | 『週末でつくる紙文具』 ワークショップ at TEGAMISHA BOOKSTORE

          — 製本ワークショップのご案内 —  2024年9月15日、東京・西調布の「TEGAMISHA BOOKSTORE」にて製本ワークショップを開催します。手紙社の運営するこの書店には、わくわくする本たちと、350種類ものオリジナルペーパーがずらり。お好みのペーパーを使って、総布貼り&窓つきの特別なノートをつくりましょう。 item 今回つくるのは「布貼りノート」です。 日記、勉強、創作に、使い勝手のよい文庫サイズ。上製(ハードカバー)、総布貼り、しかも窓つきというスペシャ

          【workshop】 布貼りノートをつくろう | 『週末でつくる紙文具』 ワークショップ at TEGAMISHA BOOKSTORE

          【ルリユール倶楽部】 04 | 水底の製本工房は、不思議に疲れず心地いい

          2024年7月某日、ルリユール倶楽部の第4回目を迎えた。倶楽部発足から早4か月。この調子だと、現在進行中の5冊とも未完のままに2024年が過ぎてしまいかねない。表紙にほどこすデコール(箔押しやモザイクなどの装飾)は別として、製本作業は年末までに終えたいところなのだけど。 ちなみに、2023年の春からつくっている5冊が今年中に完成したなら、たぶん、過去最速だ。ルリユールって、こんなもん。急いでつくれない、効率よくつくれない、たくさんつくれない。 スピード化・効率化・マス化と

          【ルリユール倶楽部】 04 | 水底の製本工房は、不思議に疲れず心地いい

          【ルリユール倶楽部】 03 | いろいろうまくいかない日に総革装をやっちゃいけない

          2024年6月某日、第3回目のルリユール倶楽部前夜、かよさんから「どんな感じ?」のメッセージが届いた。「革を干物にするところまでこぎつけました!」と返信。仕事部屋の一角に吊るした革たちを眺め、しばし満ち足りた気分に浸る。「革を干物にする」とは、剝き終えた革に薄糊を塗って乾かすことで、ここまでくればいよいよ表紙貼りができる。 倶楽部活動をはじめて以来、日々ちびちびとルリユールする習慣がついてきた。ここしばらくは校了作業に追われていて、以前のわたしなら「この仕事が終わるまではル

          【ルリユール倶楽部】 03 | いろいろうまくいかない日に総革装をやっちゃいけない

          【ルリユール倶楽部】 02 | 革は「漉く」ものではなく「剝く」ものらしい

          2024年5月某日、ルリユール倶楽部の第2回目を迎えた。前回からの1か月、これまでになくがんばった。背バンドにやすりをかけ、革を裁断し、革剝きを手配し、革剝き包丁を研ぎ……思いだすだけで息切れしそう。 さて、本やら革やら道具やらをつめたトートバッグを担いで本づくりハウスへ。到着すると、かよさんが「早めに来て、お昼ごはんを食べてたの」とくつろいでいた。それ、いいな。ずぼらなわたしは、いっつも時間ぎりぎり。昼いちに到着するには昼前に家をでるわけで、昼ごはんのタイミングを逃してし

          【ルリユール倶楽部】 02 | 革は「漉く」ものではなく「剝く」ものらしい

          【ルリユール倶楽部】 01 | 本の世界の絶滅危惧種を東洋の隅っこで愛す

          花の季節のとある午後、「ルリユール倶楽部」なるものが生まれた。東京の片隅で、ささやかに、ひっそりと。倶楽部といってもゆるやかなもので、かつてSTUDIO LIVREの伊藤篤師匠のもとでルリユールを学んでいた仲間で月に一度集まって、ルリユールをする。ただ、それだけ。先月、第3回目の活動を終えたところなのだが、ここに倶楽部での作業を記録していこうと思う。 ちなみに、ルリユールは「製本する人」あるいは「製本」を意味するフランス語だ。とりわけ、17〜18世紀に西欧で花開いた「工芸製

          【ルリユール倶楽部】 01 | 本の世界の絶滅危惧種を東洋の隅っこで愛す

          【workshop】 『ぼうけん図書館』出版記念展のための製本教室 | no.3 ブックケースをつくろう

          — 製本ワークショップのご案内 — 2024年6月26日〜7月29日、東京・西調布の「TEGAMISHA BOOKSTORE」にて拙編著『ぼうけん図書館 エルマーとゆく100冊の冒険』の出版記念展が開催されます。店頭には、100冊+αの冒険物語がずらり! まるで小さな図書館みたいになりますよ。さらに、期間中『ぼうけん図書館』にちなんだ製本ワークショップを行います。ワークショップは3週連続の3本立て。というわけで、1本ずつ、詳細を紹介します。 no.3 『ぼうけん図書館』

          【workshop】 『ぼうけん図書館』出版記念展のための製本教室 | no.3 ブックケースをつくろう

          【workshop】 『ぼうけん図書館』出版記念展のための製本教室 | no.2 岩波少年文庫をスイス装にしよう

          — 製本ワークショップのご案内 — 2024年6月26日〜7月29日、東京・西調布の「TEGAMISHA BOOKSTORE」にて拙編著『ぼうけん図書館 エルマーとゆく100冊の冒険』の出版記念展が開催されます。店頭には、100冊+αの冒険物語がずらり! まるで小さな図書館みたいになりますよ。さらに、期間中『ぼうけん図書館』にちなんだ製本ワークショップを行います。ワークショップは3週連続の3本立て。というわけで、1本ずつ、詳細を紹介します。 no.2 岩波少年文庫をスイ

          【workshop】 『ぼうけん図書館』出版記念展のための製本教室 | no.2 岩波少年文庫をスイス装にしよう

          【workshop】 『ぼうけん図書館』出版記念展のための製本教室 | no.1 『エルマーのぼうけん』英語文庫版をドイツ装にしよう

          — 製本ワークショップのご案内 — 2024年6月26日〜7月29日、東京・西調布の「TEGAMISHA BOOKSTORE」にて拙編著『ぼうけん図書館 エルマーとゆく100冊の冒険』の出版記念展が開催されます。店頭には、100冊+αの冒険物語がずらり! まるで小さな図書館みたいになりますよ。さらに、期間中『ぼうけん図書館』にちなんだ製本ワークショップを行います。ワークショップは3週連続の3本立て。というわけで、1本ずつ、詳細を紹介します。 no.1 『エルマーのぼうけ

          【workshop】 『ぼうけん図書館』出版記念展のための製本教室 | no.1 『エルマーのぼうけん』英語文庫版をドイツ装にしよう

          【column】 最近、冒険してる? — と聞かれて、思わず答えにつまったあなたへ

          最近、冒険してる? — こんな一文ではじまる編著書『ぼうけん図書館 エルマーとゆく100冊の冒険』が、ブルーシープより刊行されました。表紙を飾るのは世界に名を馳せた冒険家、エルマー・エレベーター氏。あの『エルマーのぼうけん』の主人公です。表紙には、しま模様のりゅうと並んでトコトコと歩くエルマーのうしろ姿が。二人で冒険へでかけてゆくのかな? この本は、東京・立川のPLAY! MUSEUMで開催された「エルマーのぼうけん展」の展示企画「ぼうけん図書館」から着想を得て生まれたもの

          【column】 最近、冒険してる? — と聞かれて、思わず答えにつまったあなたへ