知的好奇心を刺激する冒険へ! ホッブズの傑作『リヴァイアサン』を徹底解剖!
「リヴァイアサン」――。
旧約聖書に登場する、海の底に潜む巨大な怪物。
その名を冠した書物こそ、17世紀イギリスの哲学者、トマス・ホッブズが世に送り出した不朽の名作、近代政治思想の金字塔です。
ホッブズが生きた時代は、まさに激動の時代でした。
イギリスでは、清教徒革命とそれに続く内戦によって、社会は混乱と不安に陥っていました。
国王チャールズ1世は処刑され、伝統的な価値観や権威は失墜し、人々は将来への不安に苛まれていました。
こうした時代背景の中で、ホッブズは人間の行動原理を深く考察し、『リヴァイアサン』を著しました。
それは、人間の自然状態、社会契約、そして絶対主権という、政治哲学の根幹をなす重要な概念を提示した、画期的な書物だったのです。
弱肉強食の自然状態
ホッブズは、国家が存在しない自然状態では、人間は自己保存と欲望のみに突き動かされ、互いに争い合うと主張しました。
「万人の万人に対する闘争」と呼ばれるこの状態では、誰もが自分の利益を追求し、他者を出し抜こうとします。
理性よりも情念が優先し、暴力、裏切り、略奪が横行する世界…まるで地獄絵図のような世界です。
ホッブズは言います。「この状態における人間の生活は、孤独で、貧しく、汚く、残酷で、短い」と。
社会契約による秩序の構築
この悲惨な自然状態から脱却するために、人々は互いに契約を結び、自らの権利を絶対的な主権者に移譲します。
皆が自分の権利を放棄し、一人の人物または集団に統治を委ねることで、初めて秩序が生まれるのです。
こうして誕生するのが、国家、すなわち『リヴァイアサン』です。 リヴァイアサンは、強大な力を持つ怪物のような存在であり、人々を統制し、法と秩序を維持することで、平和と安全を保障します。
ホッブズはこの国家を、人工的に作られた「人間の神」と表現しました。
絶対主権の必要性
ホッブズは、国家の権威は絶対的なものでなければならないと主張しました。
個人の自由や権利は、国家の安全保障の前には制限されるべきだと考えたのです。
なぜなら、少しでも権力が分散されると、内部対立や権力闘争が起こり、再び自然状態に戻ってしまう危険性があるからです。
これは、当時の社会状況を反映したものであり、混乱を収束させるためには、強力なリーダーシップが必要だとホッブズは考えていました。
後世への影響:ロック、ルソー、カントとの対比
『リヴァイアサン』は、近代政治思想に多大な影響を与えました。
ジョン・ロックは、ホッブズの自然状態の概念を批判的に継承しつつ、人間の自然権を擁護し、抵抗権を認めました。
ジャン=ジャック・ルソーは、人民主権論を唱え、一般意志に基づく政治を主張しました。
イマヌエル・カントは、理性に基づく道徳的な政治を提唱し、永久平和の可能性を追求しました。 これらの啓蒙時代の哲学者たちは、ホッブズの思想を批判的に継承しつつ、それぞれの社会契約論を展開しました。
現代の民主主義国家の基礎となる思想も、『リヴァイアサン』の影響を受けていると言えるでしょう。
現代社会への警鐘:リヴァイアサンは今も生きているか?
現代社会においても、国家の役割、個人の自由と安全保障の問題は、依然として重要な課題です。
テロ、紛争、環境問題、経済格差など、世界は様々な問題に直面しています。
グローバル化が加速する一方で、国家間の対立や国内の分断も深刻化しています。
そして、監視社会の到来やAI技術の発展は、個人の自由とプライバシーを脅かす可能性も孕んでいます。
『リヴァイアサン』は、これらの問題を考える上で、私たちに多くのヒントを与えてくれます。 現代社会においても、「リヴァイアサン」は、形を変えて生き続けているのかもしれません。
さあ、『リヴァイアサン』の世界へ!
『リヴァイアサン』は、決して過去の遺物ではありません。 それは、人間の本質と社会のあり方について、深く考えさせる、時代を超えた名著です。
ぜひ、本書を手に取り、ホッブズが描いた世界を体感してみてください。
そこには、知的好奇心を刺激する、スリリングな知的冒険が待っています。
読み終えたら、世界の見方が変わっているかもしれません。
【編集後記】
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