「きみの たからもの」
みなさん、こんばんは。綺羅です。
今日もnoteをご覧いただき、ありがとうございます。
いよいよ秋の連休に入って、私の地域は、珍しく車の往来が激しいように感じました。
この休みに多くの方が、里帰りされているのかなと、いろいろ空想していました。
滑り込みの企画参加になりましたが、フォロワーさんである、
motohiroさんのカフェ「ひだまり」の、メニュー企画に参加
させていただきました。
ちょっとしたショートストーリーもつけてみましたので、よろしければ、ご覧ください。
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私は、とある国の娘。
でも、ただの娘というわけではない。
私には、未来に守るべき人や、ものや、ことがある。
でも、未だ「その器」に達していないことは、自分でも分かっている。
だから、故郷を旅立ち、さまざまな国を巡り歩いていた。
3日前に旅立った国で、こんなうわさを聞いた。
『森にとあるカフェを営んでいる男性がいて、その人が作る食べ物は絶品である』と。
私は調度、そのうわさのカフェの近くを歩いていた。
「おそらくこの辺だと思うけれど・・・」
独り言を言いながら探していると、いつの間にか、漆黒の毛並みが美しい猫に見つめられていた。
「何かお探しかしら?」
その猫が、鈴が転がるような軽やかな声で話しかけてくれた。
驚いた。
「人の言葉を話す猫なんて、もういない」と、自分の教育係が言っていたのを思い出したけれど、そんなの嘘だったのね。
その時の私たちが、世界を知らないでいただけ。
「すみません、この辺りに、男性がオーナーのカフェがあると聞いたのですが、ご存知ですか?」
「知っているもなにも、私はそこの看板猫よ。ついてきて、案内するわ。」
颯爽と歩く猫の後についていくと、明るい場所に出た。
そこには、一件の家。
看板には『ひだまり』の文字が刻まれていた。
私は一緒に添えてある言葉を、口に出して読んでみた。
「『あたたまるには、ちょうどいいくらいの、ちいさなカフェ』。」
こんな森の中なのに、多くのお客さんがお店で賑わっているのに、さらに驚いた。
なんだか、とても楽しそう・・・。
『あなたがこの場所に入るには、不相応よ。そんな傷だらけの格好で、剣と杖を持った怪しい客を、果してみんな受け入れるかしら?』
こんな時にも容赦なく出て来る、私が向き合うべき「視えない者」。
そう、私はこの「視えない者」とも向き合うためにも、旅を続けている。
その「視えない者」は、いずれ私を支配するのが目的らしく、私はそれに抗うための術を、探している。
最近出て来ないから油断していたけれど、今出て来るなんて・・・。
でも、彼女の言うことも分かる。
こんな傷だらけで、剣や杖を持ち歩く怪しい者など、どこにも居場所はない。
少しくらい、夢を見たかった。
自分を励ますために、自分の行く道を自分で祝福したいために。
「猫ちゃん、すみません。せっかく連れてきてくれたのに、この場所へは入れませんわ。このカフェに入るには、私は不相応ですから・・・。」
そう言うのが精一杯で、私は来た道を走り戻った。
「ああっ!ちょっと、待って!!」
あの子は私を止めてくれたけれど、その言葉から逃げるように、林の中に入っていった。
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もう外は真っ暗だ。
そろそろどこかで、宿を探さないといけない。
猫ちゃんから逃げてしまった「申し訳なさ」と、視えない者の言葉を鵜呑みにしてしまった「罪悪感」で、私の心はどす黒かった。
・・・いっそ、堕ちる方が楽かな。
「あ!!motohiroさん、いたわ!この子よ!」
聞き覚えのある言葉にびっくりして振り向くと、男性が昼間に出会った黒猫ちゃんを抱いて、私にランプを向けている。
「あなた、お昼に来てくださった人ですよね?ここは寒いですし、もう遅いですし、よろしければカフェにおいでになりませんか?」
ゆったりした佇まいと、優しいテノールに、なんだか心が軽くなる。
「あの、いえ、私は・・・」
「この子があなたのことを、教えてくれたんです。あなたにも、ぜひ、ぼくのカフェに来てもらいたいです。剣や杖をお持ちであることには気にしませんし、どんな人であろうと、入りたいと思う人には、開けられているのが、”カフェひだまり”ですから。」
彼の言葉に呆然となっている私を、後ろからついてくるように黒猫ちゃんに促された。
「さぁ、はやくついてきて!!」
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彼はこのカフェのオーナー、motohiroさんというそうだ。
救急箱を貸してくれて、暖炉のそばで暖かいスープを出していただき、少しずつ飲みながら、私自身のことを話した。
守るものを守る術を見つけるために、旅に出ていること。
対峙する相手は「視えない者」で、いずれ対峙する運命にあること。
motohiroさんは真剣に聞いてくれた。
「自分に向き合うために、旅をされているんですね。」
「はい、技術や素材は集まってきているんですが、これでいいのかなって・・・私は、何を持っているんだろうって・・・自分が分からなくなるんです。」
motohiroさんは私を見つめて、なにか考え込んでいる。
・・・なにか粗相をしでかしてしまったのだろうか。
「・・・あなたとは、今日はじめてお会いしましたが、たくさん素敵なものをお持ちだと思います。話していて、それが伝わってきます。たしか、いろいろな国を歩いて回られているんですよね。その道中で、食材とか手に入れられましたか?よろしければ、使わせていただいても・・・?」
私は分からないまま、彼の提案をのんだ。
何をする気なのだろう。
でも、これだけはわかる。なんだか、暖かい気持ち。
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「ふぅ、できました!どうぞ!」
満足そうに声を上げる彼は、私に笑いかけて、目の前にお皿を差し出した。
私の目の前に並ぶ、8つの一口ケーキ。
「これは・・・」
「あなたが持っておられた食材でできたものです。あなたは、こんなにたくさん、すてきなものを持っていらっしゃいます。せっかくこんなに綺麗に変身できるのに、自分で自分を不相応なんて言ったら、かわいそうですよ。」
彼は優しく笑って言ってくれた。
私が集めた行き場のない食材は、見事な変貌を遂げていた。
それはまるで、自分自身とうまく付き合えたら、こんな綺麗な姿になることも、教えてくれていた。
「あなたがここに食材を持ってきてくれなかったら、ぼくもこの料理に挑戦出来ませんでした。ぼくこそ、ありがとうございます。さぁ、食べてみてください!」
お礼を言われるなんて、思ってもみなかった。
私は、一口ずつ、ケーキを味わった。
どれも味が全く違うけれど、一つひとつの個性が光っていた。
「すごく、美味しいです・・・。」
「お気に召したようで、嬉しいです。」
優しい励ましの味や、勇気が奮い立つ味。
これらはぜんぶ、私がすでに持っているもの・・・。
暗い場所を彷徨っていたけれど、一筋の光が見える気がする。
私が私を見失いそうになった時、このケーキを思い出せば、迷わないと思える。
ここで立ち止まれない、私は進まなきゃ。
こうして暗きに迷う人は、私だけではないはず。
私も、この優しい流れに乗って、他の人を助けられるだろうか・・・いや、乗って、助けたい。
「motohiroさん、もしお許しいただけるならば、また食材を持ってきますので、このケーキたちを作ってもらえませんか?私だけでなく、他の方にも。・・・いけませんでしょうか?」
「もちろんですよ!でも、食材集めには時間がかかりそうですので、あなたの食材を集めるペースも考えて、不定期で、その日2食の限定にしましょう。それでよろしいですか?無理はしないでくださいね。」
「はい、大丈夫です。motohiroさん、ありがとうございます。」
「いえいえ、こちらこそです。さて、明日には旅立たれますから、今日はゆっくりお休みになってくださいね。」
休む前に、motohiroさんは、私にケーキを命名して欲しいと言ってくれた。
これは、みんながそれぞれが持つ宝物が、形になったもの・・・。
そう、これにしよう。
『きみの たからもの』
私は独りじゃない。
だれかの「たからのかけら」を探して、彼に形にしてもらうために、今日も国を巡り続ける。
さて、今度はいつ「ひだまり」に帰ろうか・・・。
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最後に簡単に素材の説明だけ・・・。
motohiroさん、もしよろしければ、motohiroさんのハートで「この子」たち一つひとつの呼び名をいただけると嬉しいです。
・黒ごまと豆乳のケーキ
・いちごのタルト
・オレンジとレモンのムース
・ブルーベリーとビルベリーのケーキ
・抹茶ムース
・桜ケーキ
・チョコレートケーキ
・バタフライピーケーキ
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motohiroさん、完全に自己満足設定ですみません。
趣旨が外れていたら、ご指摘くださると嬉しいです・・・。
素敵な創作企画を、ありがとうございます!
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トップ画像は ゴールドラッシュ様 からお借りしました!
ありがとうございます。
みなさんからの、スキやコメントやフォローに、励まされます!
この記事にお時間をいただき、ありがとうございました。
それでは、今日はここまでです。
みなさん、素敵な創作活動を!
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