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    時代考察/評論。形式やテーマも特に決めず、自由気ままに、さまざまなジャンルをあつかう。柄にもなく気のきいたこと書こうと頑張っている時もある。

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知識は重要ではない|自分を知ること

知っていること書こうと思っても、よくよく考えてみたらあんまりない。 そもそも「知っている」と、思い込んでいることすら、実際のところ本当に知っているかどうか、怪しい。その最たるものが「自分」ではないか。 ついこの間、ある脳科学者の本を読んでいて、問題の記述に突き当たり、しばらく悩んだ。そこには「短所は実は長所でもある」と書いてあったのだ。 ...で、ひとしきり思考してみたが、ついぞ短所も長所も分からずじまいだ。 結局この歳になっても短所すらよくわかってないことを知って情け

    • 今日もXで勉強する(執筆中)

      この十年ほどで「勉強」という言葉の意味が大きく変わってしまったと思っている。かつては、立身出世の門をくぐるための道具であり、難問に明確な答えを出すための訓練であり、生きる不安から逃れるための手段であり、影響力のある人にとっては仕事そのものであり、なによりも、それは思想の土台となるものであった。 一昔前は、勉強の意味は、もっとシンプルであり、ハッキリとしていた。今はどうか。あたかもそれだけでは真の目標にはけっして到達できないかのように、これまで使われてきた勉強というコトバの効

      • 彦坂尚嘉論(9)

        「一九七○年代の美術とは何だったのか?」という文章で、彦坂はこう書いている。 ここで”文明的展開のダイナミズム”と表現されているものとは、後期の仕事におけるアイコンであり、すくなくとも隠語レベルでは、芸術(村)界の内部言語に深く浸透しているものの源となっている。そのアイディアとは「文明」論による分析である。 <原ー文明> → <文明>   → <反ー文明> → <非ー文明> → <無ー文明> →… この「文明論」は、現代アートを理解しやすくするためのものであり、そのほと

        • なぜ脳は特別なのか?

          わたしはこの本の出現を待ち望んでいました。 今時珍しいくらいに正面切ってまともな脳科学の新書でした。これまで脳科学は、前頭葉、マインドフルネス、運動最高、サイコパスといった、わかりやすい話ばかり説かれ、宣伝されていて「心はどこにあるのか?」といった、それ以上の哲学的な議論を、洗練されたスタイルで啓蒙できる人は少なかったのではないか。 近年は「スマホ脳」や「脳内物質(麻薬)」といった話題が人々の関心の中心になってきており、トレンドが進歩(2010年代)から、警鐘(2020年

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          「頭がいい」とはどういうことか ――脳科学から考える|最終章

          いよいよ最終章となりました。最後ですので(本書の内容に忠実に沿うように努力はしますが)これまでわたしが考えたことも交えつつ、まとめてみたいと思います。 「最終章 AI時代に求められる真の”頭の良さ”」では、主に脳とAIとの比較が論じられています。なによりも毛内先生の知性論として、いくつかの箇所に興味を惹かれました。 第一に脳とAIの学習の仕組みの違いを考察したあとで、両者は本質的にまったく別物であり「脳もAIにはなれないように、AIも脳にはなれない可能性が高」いと述べます

          「頭がいい」とはどういうことか ――脳科学から考える|最終章

          「頭がいい」とはどういうことか ――脳科学から考える|読書メモ(7)

          「第8章 脳の持久力を決めるアストロサイト」は脳の中の細胞、グリア細胞についてです。 グリア細胞は最近の脳科学で特に注目されているテーマの一つです。ベタなトピックと絡めて紹介すると、アインシュタインの脳は、大脳皮質の一部に普通の人の脳の2倍のグリア細胞があったと言われています。 これまで脳科学ではニューロン中心主義できましたが、ニューロンやシナプス伝達が重要なのは言うまでもないことだが、その裏でグリア細胞、とくにその一つであるアストロサイトが重要な働きをしているのです。

          「頭がいい」とはどういうことか ――脳科学から考える|読書メモ(7)

          「頭がいい」とはどういうことか ――脳科学から考える|読書メモ(6)

          「頭がいい」ということはどういうことなのか、その内容・構造について、ひとつひとつ章を追って確認してきました。まずは脳の原理がどうなっているのかの機能の解説、次に身体性の必要性、そして感受性と創造性のダイナミズム、と見てきました。 「第7章 人の気持ちがわかる」では、これまでに提示されてきた数々のタームが統合されて、ついに脳科学の一丁目一番地である「心はどこにあるか?」に迫っていきます。全部抜粋したいくらい、すっごくいい文章です。この章だけでもいいから本屋で立ち読みしてほしい

          「頭がいい」とはどういうことか ――脳科学から考える|読書メモ(6)

          「頭がいい」とはどういうことか ――脳科学から考える|読書メモ(5)

          身体性の話に続き、「第6章 感受性と創造性」と続きます。冒頭で「知恵ブクロ記憶」について言及されます。 じつは第4章(記憶という不思議な仕組み)でも登場していた概念だったのですが、初出では脳機能を分解的に解説するためのパーツの一つとして紹介されていました。 以降、「うまく言えないけど、この世界を生きていくためのコツみたいなもの」とか、「スマートスピーカーや図書館の司書のような役割」とか、「社会的ルールが、経験となって知恵ブクロ記憶となって、世界のモデルを作っていきます」と

          「頭がいい」とはどういうことか ――脳科学から考える|読書メモ(5)

          「頭がいい」とはどういうことか ――脳科学から考える|読書メモ(4)

          脳が運動によって鍛えられることは、いまやすっかり知れ渡るようになりました。 2010年代で、もっとも知名度を獲得することに成功した脳科学のベストセラーは「脳を鍛えるには運動しかない」(ジョン・レイティ著)ではないでしょうか。内容はタイトルそのまんまなので、詳細省くが、なにかありがたいって誰が読んでも解釈が一致する。一読すれば外に出て運動したくなる。 ジョン・レイティだけではなく、脳科学に携わる者なら誰でも。2019年に「スマホ脳」で一躍有名になったアンデシュ・ハンセンも、

          「頭がいい」とはどういうことか ――脳科学から考える|読書メモ(4)

          「頭がいい」とはどういうことか ――脳科学から考える|読書メモ(3)

          2章から4章までは、脳の機能について解説的な記述が続きます。「第2章 注意しなければ知覚できない」「第3章 脳の働きがいいとはどういうことか」「第4章 記憶という不思議な仕組み」となっています。 そのひとつひとつをとりあげるとただのネタバレ全開になってしまうので、かわりに、毛内先生がわたしたちに何を伝えようとしているのかを考えてみたいと思います。 何につけても、わたしたちは物事を二元論的に捉えがちです。 人生訓、金言、蔵言などの格言が好きな人は少なくありませんし、「こう

          「頭がいい」とはどういうことか ――脳科学から考える|読書メモ(3)

          「頭がいい」とはどういうことか ――脳科学から考える|読書メモ(2)

          第1章は『「頭がいい」ってどういうこと?』ということが書かれています。 とはいえ、時代は加速主義ですから、なんだかんだ「答えがあることに素早く答えをだす能力」に長けている人の方が生き残りやすい。 答えがないことに応えを出そうとする営みが、とっても尊いことは理解できるし、ありのままに実行できればよいですが、他方で、はたして世間様はそれを許すのだろうか?という疑問もあります。 読んでいる最中、「天才柳沢教授の生活」に登場する”文学部の出口くん”のことを思い出しました。6年間

          「頭がいい」とはどういうことか ――脳科学から考える|読書メモ(2)

          花村(執筆中)

          序 わたしの一族が、いつごろから”あの家”に仕えるようになったのか、知らない。なんでも、祖父はとうにも満たない子供のときから丁稚奉公していたらしい。戦時は特別年少兵として海軍にいった。戦役を終えてすぐ、軍のツテで乗り込んだ捕鯨船の上で約10年間を過ごし、大金を稼いだあと、帰郷してまたあの家に仕えなおして頭角を現した。憲兵や兵隊たちも、金をもっている人間にはやさしい。金にものをいわせて結婚したのが、あの家の者の血筋をひく祖母である。長男は町長、その孫、つまりわたしの従兄は陸軍

          花村(執筆中)

          「頭がいい」とはどういうことか ――脳科学から考える|読書メモ(1)

          脳科学の本だけはまめに読むようにしている。 いわずもがなワイの知的好奇心を裏切らないからだが、それ以上におののライフスタイル(研究)と抜群に相性がよく、有益なヒントを与えてくれるからだ。わたしには「夢を持って生きる」「目標を達成する」「勝負に勝つ」といった純粋に自己啓発的なmasculine志向はあまりない。 たぶん多くの人には共感を得られないのだけど、どこかしら、自分のことを”被験体”だと考えてるふしがある。あえて対比させる形で述べると、夢を持って生きるのではなく、仮説

          「頭がいい」とはどういうことか ――脳科学から考える|読書メモ(1)

          小説家とIQ

          君らIQの話題ほんとに好きね。 以前、某掲示板で「作家とIQ」の関係についてのスレッドを見たことがある(今探したが、もうない) 俎上にあがっていたのは筒井康隆、中島らも、谷崎、芥川、太宰などで、作家たちのIQとその根拠が列挙されていた。もちろん限界集落と化していた某掲示板における”嘘を嘘と見抜ける人”のための文学板のお話である。けれども、やっぱり作家のIQを気にする人は多いのかもしれない。 Googleを探索しているといろいろな情報が目に飛び込んでくる。 各情報にはソ

          小説家とIQ

          『90年代邦楽』はなぜ懐メロにならないのか?

          いまだに90年代を引きずってる奴なんて、ろくでもない老害に決まってるじゃないですか。ひろゆきなんかも、あれは遅れてやってきた90年代表象みたいなものですから、最近は老害の代表格としてバッシングされてますね。とはいえ、ここまでいっといてなんですけど、わたし自身、こころは90年代キッズなんですね、はい。パンチラを見るとおもわず「ワンダフル」って、同名のエロ深夜番組のアイキャッチ叫んでるくらいですから。元号こそ変われど、実態は昭和の最終形態だったでしょう、90年代。豊かだった時代の

          『90年代邦楽』はなぜ懐メロにならないのか?

          彦坂尚嘉論(8)

          とんでもないフロウに戦慄。美術が滅んでいく。猿でも写真を撮り、絵を描き、コドモでも現代アーティストを名乗る。そしてキチガイでも美術評論を書く、と。彦坂の怒りがスパークする。 ここで補足しておきたいが、彦坂には、藝大を筆頭とする美術業界人にありがちな、神経質なプライドの高さや、尊大にふるまって他人を貶めるというような歪んだ願望は少ないのである。 その芸術判断の手続きが(後者のそれと同等かそれ以上に)独裁的であることにおいて、悪名高いだけである。 40歳までに彦坂は成功した

          彦坂尚嘉論(8)