「頭がいい」とはどういうことか ――脳科学から考える|読書メモ(7)
「第8章 脳の持久力を決めるアストロサイト」は脳の中の細胞、グリア細胞についてです。
グリア細胞は最近の脳科学で特に注目されているテーマの一つです。ベタなトピックと絡めて紹介すると、アインシュタインの脳は、大脳皮質の一部に普通の人の脳の2倍のグリア細胞があったと言われています。
これまで脳科学ではニューロン中心主義できましたが、ニューロンやシナプス伝達が重要なのは言うまでもないことだが、その裏でグリア細胞、とくにその一つであるアストロサイトが重要な働きをしているのです。
アストロサイトはファミレスのホール・スタッフでいうところの皿洗い「ディッシャー」です。わたしも都内の居酒屋やキャバクラのアフター専用バーで働いてた経験があるので、この毛内先生の喩えはえらく刺さりました。
実際にやるとわかりますが、ディッシャーが崩壊すると詰む。キッチンからどやされるわ、ドリンク運べなくなるわ、ビールのジョッキが生ぬるくて客からクレームが来るわで、いろいろマズいことがおきる。
逆に、ディッシャー担当者がちゃんと働くならいくら客が押し寄せてこようとも何も怖くない。
アストロサイトが脳のスペックを決めていると言ってもいいかもしれない。さらには、認知症の原因となる脳の老廃物であるアミロイドベータを洗い流す重要な役割を担っているとも言われます。ということは、認知症と「頭がいい」との間には深い関連があるのかもしれませんね(これ、意外に語られてない盲点な気がします)
ひらたくいうと脳を正常に働かせ続けるための機能を担っている。これを「脳の持久力」と呼んでいるわけです。
また一般的な、生物学的な観点から見ても、動物の神経は単純で太く、人間の神経は複雑で細いですが、ことにアストロサイトではこの差異が如実です。そればかりではなく、人や猿しかもってないアストロサイトもあるらしい。やはり知性と密接な関係がありそうです。
脳の中のアストロサイトの量は先天的に決まっているので、あとで数を増やすことはできませんが、活性化させることはできる。詳しくは本書を読んでもらうとして、ざっくりいうと、新奇体験や、強い情動体験をすると活性化するそうですよ。冒険のしすぎでPTSDにでもなったら大変なので、そこらへんは、さじ加減なのでしょうが。
<続>
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