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毎日ちょっとだけ連載小説|水深800メートルのシューベルト

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連載で小説を始めてみました。一話をかなり短く(200文字くらい)毎日ほんの少しずつ進める予定です。 読んで頂けると嬉しいです。
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2024年5月の記事一覧

水深800メートルのシューベルト|第928話

「どうも、難しい年頃でね、すまないな。ジョー、あちらで遊んできなさい」  ゲイルさんは、…

吉村うにうに
9か月前
7

水深800メートルのシューベルト|第927話

「こっちはアシェルだ。ほら、以前に話をしただろう? ちゃんと挨拶しろよ。悪いな、アシェル…

吉村うにうに
9か月前
5

水深800メートルのシューベルト|第926話

「やあ、アシェル。彼女との再会は果たせたようだな、よかったよ。この子はジョーだ。赤ちゃん…

吉村うにうに
9か月前
6

水深800メートルのシューベルト|第925話

「あ、ゲイルさんよ」(と、メリンダが言った。)  赤いポロシャツを着たゲイルさんが、僕が…

吉村うにうに
9か月前
8

水深800メートルのシューベルト|第924話

人は決断を迫られることがある、これは僕の人生で新しい経験かもしれない。昔、本で読んだ兎狩…

吉村うにうに
9か月前
6

水深800メートルのシューベルト|第923話

 彼女の幸せそうな笑みに浮き立つような気持ちになった。それから少し遅れて、緊張でこわばっ…

吉村うにうに
9か月前
8

水深800メートルのシューベルト|第922話

「手紙に連絡先を入れてくれればよかったのに」  僕は、まだいないけどすぐに来ると嬉しそうに手を握り直してくる彼女に言った。 「ここで待っていたという事だけで満足なの。ほら、連絡先を書いちゃったら、期待するでしょう? 何日も、何か月も、何年も。そうしてアシェルをひたすら待ってお婆ちゃんになる。それは嫌だったの」  手をずっと握られていたので恥ずかしくなってきた。それに、ここをトリーシャに見られたらきっと嫉妬されてしまう。しかし彼女は、僕に自由にしていいよと言ってくれたし、手な

水深800メートルのシューベルト|第921話

「今はひとりじゃないよ。結婚したんだ。自分の子どももいる」 「それも聞いていたわ」  彼…

吉村うにうに
9か月前
7

水深800メートルのシューベルト|第920話

「いえ、そしたらアシェルは海軍に入ったって。だから、さっき言ったことはもう知っていたの」…

吉村うにうに
9か月前
6

水深800メートルのシューベルト|第919話

 迷惑がっていると思われないよう、慌ててつけ加えた。「いや、住所を知らせていなかったと思…

吉村うにうに
9か月前
7

水深800メートルのシューベルト|第918話

「上手いでしょう? 刑務所に入っている時、バスケばかりしていたから」  彼女は両手で僕に…

吉村うにうに
9か月前
7

水深800メートルのシューベルト|第917話

「関わらない方がいいかなと思ったけど、事件に巻き込んで悪かったって、直接謝りたかったんだ…

吉村うにうに
9か月前
9

水深800メートルのシューベルト|第916話

「アシェル、背が伸びたね。前はこんなに小さかったのにね」  彼女は自分の腰ぐらいの所に手…

吉村うにうに
9か月前
8

水深800メートルのシューベルト|第915話

僕はフェンス越しに彼女の指を掴んだ。柔らかい温もりが懐かしかった。しばらく手を握った後、金網を挟んで二人同時に笑った。僕はフェンスの出入り口から公園に入り、今度は直に彼女の手を握った。 「あはは、鉄格子に慣れちゃって、それを挟んで人と会うのが当たり前になっていたわ」  自虐的な挨拶に、何と返答したらいいかわからなかった。少し考えても何も浮かばなかったので、彼女の足元に転がっているバスケットボールを拾い上げた。 「格子越しでなく人と会うのって久し振り」  曖昧に笑っていると