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水深800メートルのシューベルト|第927話

「こっちはアシェルだ。ほら、以前に話をしただろう? ちゃんと挨拶しろよ。悪いな、アシェル。彼は恥ずかしがりやでね。今日も無理に来させたんだ。会っておくのも悪くないだろうと思ってさ」


 男の子は、不貞腐れているのか、父親と目を合わそうとしなかった。
「愛想が悪いな。ほら、アシェル・スコット。お前の兄さんにあたる人だ」
 ゲイルさんに背中を押され、少年は怪訝そうにこちらを見ながら、僕が差し出した手を握った。握ったが、軽く触れてさっと離すやり方は、クールな大人のようで、それが気に入ったのか、表情が幾分穏やかになっていた。

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