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水深800メートルのシューベルト|第918話
「上手いでしょう? 刑務所に入っている時、バスケばかりしていたから」
彼女は両手で僕にボールをパスしてきた。膝を落としてドリブルしてみるが、あっさりとメリンダにはたかれ、ボールを奪ってコートを駆け、ボールを押し出すようにシュートした。弧を描いたボールはバックボードに当たらず、リングと網とを音もなく通過した。まだ跳ねるボールを見向きもせずに、メリンダは言った。
「返事を書かずにごめんなさい。手紙くれたのに。お婆ちゃん、お気の毒だったね」
僕は黙って首を振った。ママもなんだ……。心の中でそう呟いたが、言い出せなかったので、代わりに別の質問をした。
「どうしてここがわかったの?」