見出し画像

水深800メートルのシューベルト|第924話

人は決断を迫られることがある、これは僕の人生で新しい経験かもしれない。昔、本で読んだ兎狩りのやり方のように、僕はこれまでどこかに追い込まれて一方にしかない道を選ばされてきたような気がする。しかし今、目の前に二又に分かれる道が広がっているのだ。どうしよう。メリンダは可哀相だし、昔助けてもらっている。しかし、トリーシャにも救われているし、フェリックスだっている。急にどちらかを選ばなければならないような気がして、何を話せば良いのかわからなくなった。


「どうしたの? 難しい顔をしているわ」
 無邪気な瞳を向けてくる彼女を見て、この娘を傷つけてはならない、その思いが強くなっていた。しかし、今の僕を、彼女が受け入れてくれるのかどうかはっきりしない。

    第923話へ戻る 第925話へつづく
       
          第1話に戻る


いいなと思ったら応援しよう!