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毎日ちょっとだけ連載小説|水深800メートルのシューベルト

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連載で小説を始めてみました。一話をかなり短く(200文字くらい)毎日ほんの少しずつ進める予定です。 読んで頂けると嬉しいです。
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2024年2月の記事一覧

水深800メートルのシューベルト|第836話

「確か大学へ行くための資金を得るために軍に入ったと、ジュリアから聞いていたんだがな。どの…

吉村うにうに
9か月前
5

水深800メートルのシューベルト|第835話

「それともうひとつ。彼女は君を育てることができなかった。代わりに私が君の面倒を見るのは彼…

吉村うにうに
9か月前
7

水深800メートルのシューベルト|第834話

 しかし、ゲイルさんは考え直したようで、きっぱりと口にした。 「いや、やはり来た方がいい…

吉村うにうに
9か月前
4

水深800メートルのシューベルト|第833話

「そこで話なんだが。急なことだったし、私が夫だから、彼女の葬儀は私の方で手配した。私の母…

吉村うにうに
9か月前
4

水深800メートルのシューベルト|第832話

 そう言われて、どんな表情をすればいいのだろう。何もかも失くしてしまった空虚な感じはする…

吉村うにうに
9か月前
4

水深800メートルのシューベルト|第831話

「僕が悪いんです。でも、お婆ちゃんをひとりにしておけなかった」(僕はそう言った。)  マ…

吉村うにうに
9か月前
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水深800メートルのシューベルト|第830話

 彼(ゲイルさん)は顔を上げた。 「ジュリアを誤解しないでやってくれないか。悪いのは私なんだ。彼女は、君が邪魔だなんて言ったことはなかったよ。彼女が君を引き取ろうとしたのは覚えているだろう?」  僕は、三人で会ったタコス屋での会話を思い出して頷いた。 「ええ、あの時は僕が断ったんですよ。お婆ちゃんとの暮らしにやっと慣れてきたところでしたから」  ゲイルさんは目を上に向け、天井のひび割れを見つめるようにしてから口を開いた。 「私から君に連絡すべきだった。連絡先を渡しただけで

水深800メートルのシューベルト|第829話

「ジュリアを君から引き離したのはきっと私だ。私がアシェルを一緒に育てるように強く勧めてい…

吉村うにうに
9か月前
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水深800メートルのシューベルト|第828話

彼はコーヒーに添えていた両手で、今度は僕の肩を掴んで軽く揺すった。 「息子のジョーは私の…

吉村うにうに
9か月前
5

水深800メートルのシューベルト|第827話

 僕は、いつかあの近くでメイソンたちに落とされて溺れかけたことを思い出していた。水が鼻か…

吉村うにうに
9か月前
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水深800メートルのシューベルト|第826話

「すまない、ジュリアを……、君のママを、君から永遠に奪ってしまって……」  顔を上げたゲ…

吉村うにうに
9か月前
6

水深800メートルのシューベルト|第825話

 彼は、コーヒーを口で冷ましながら一口だけ啜ると、険しい目をして告げた。 「いいか、落ち…

吉村うにうに
9か月前
6

水深800メートルのシューベルト|第824話

 レジでは十代と思われるそばかすだらけでポニーテールの女の子が、調理場の近くで柱にもたれ…

吉村うにうに
9か月前
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水深800メートルのシューベルト|第823話

「あそこでいいか?」  ゲイルさんは来るときにチェーンのハンバーガー店を見かけたことを告げた。「はい」と小さく答えると、すぐに車を右端に寄せて減速した。道路脇の看板の端に巨大な星のオブジェが見えたので「カールスジュニア」だと気づいた。その三角屋根の平屋の建物は、周囲の古ぼけた住宅に比べて壁や屋根が真新しくて目立っていた。車は星の手前で右折し、店の大きなガラス戸のすぐ手前にあるパーキングまでゆっくりと進んだ。  店内のカウンターには誰もおらず、ゲイルさんは真っ直ぐに進むと、「