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水深800メートルのシューベルト|第836話
「確か大学へ行くための資金を得るために軍に入ったと、ジュリアから聞いていたんだがな。どの部隊、どこの勤務になるかはわからないが、場所や兵科の希望は出しておかないと。それを配慮してくれることもあるんだ」
(そうゲイルさんは言った。)
「このまま辞めようかと思ってますから」
自分の言葉に、少なからず驚いたのは僕自身だった。ああ、辞めたかったんだ。ママを失って大学に行く意味も、そのための海軍勤務をする意義も一緒に消え失せてしまったような気がしたのだ。もはや、ママと暮らすことには現実味が伴っていなかったが、心のどこかではそれを望んでいたのだ。しかし、その希望は永久に閉ざされてしまった。