
水深800メートルのシューベルト|第823話
「あそこでいいか?」
ゲイルさんは来るときにチェーンのハンバーガー店を見かけたことを告げた。「はい」と小さく答えると、すぐに車を右端に寄せて減速した。道路脇の看板の端に巨大な星のオブジェが見えたので「カールスジュニア」だと気づいた。その三角屋根の平屋の建物は、周囲の古ぼけた住宅に比べて壁や屋根が真新しくて目立っていた。車は星の手前で右折し、店の大きなガラス戸のすぐ手前にあるパーキングまでゆっくりと進んだ。
店内のカウンターには誰もおらず、ゲイルさんは真っ直ぐに進むと、「コーヒーでいいか? バーガーも食うだろう?」と尋ね、奥にいた店員を呼んだ。