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水深800メートルのシューベルト|第833話
「そこで話なんだが。急なことだったし、私が夫だから、彼女の葬儀は私の方で手配した。私の母親も付き添ってくれる。君も来るだろう? だが、行くならこの後早めに出発しないといけない」(そうゲイルさんは言った。)
遠慮がちに、僕に判断を委ねるような言葉遣いだったが、来ることを疑っていないように聞こえた。僕は首を振った。
「いえ、リクルートキャンプが終わったらお墓に行きますので」
怖いのではなかった。葬儀の時に自分を保てなくなるではないかという不安でもなかった。むしろ逆だった。ママの顔を見て冷静だったらどうしよう? 悲しんでいるふりをしなければならないのか。そんな薄情な人間だと自分に烙印を押してしまうのが辛かったのだ。それなら、一人でママに会いに行った方がいいと思った。