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毎日ちょっとだけ連載小説|水深800メートルのシューベルト

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連載で小説を始めてみました。一話をかなり短く(200文字くらい)毎日ほんの少しずつ進める予定です。 読んで頂けると嬉しいです。
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2022年6月の記事一覧

水深800メートルのシューベルト|第227話

 ママは、困った時の顔をして、僕の方に身を乗り出してきた。 「ねえ、アシェルはどう思う?…

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水深800メートルのシューベルト|第226話

「僕は軍の依託学生として奨学金を受けている」  ゲイルさんはきっぱりと言った。 「もし、…

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水深800メートルのシューベルト|第225話

「私、何度もお願いしたわよね? 軍に入るのはやめてって。海軍なんかに行ったら、離れ離れに…

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水深800メートルのシューベルト|第224話

「で、君はどうしたいんだ?」  ゲイルさんは、僕の決断を早く聞きたがっているようだった。 …

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水深800メートルのシューベルト|第223話

 ゲイルさんは、(ママに褒められて)照れながらママの肩に手を回した。 「それにこれを見て…

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水深800メートルのシューベルト|第222話

「『先生』はまだ早いよ。」  ゲイルと紹介された彼は、ママの隣に座ってビールを一口飲んだ…

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水深800メートルのシューベルト|第221話

「実はね……」  (ママが口を開いた)その時、話を遮るように、がっしりとした体格の男がコンコンとママの横顔を映し出したガラスを叩いた。彼女が華やいだ顔をしてその場で手を振ると、男は入り口の方へ駆け足で回り込み、しばらくするとビールを片手に僕の傍に立っていた。 「紹介するわ。私の完璧さんである、ゲイル先生よ」    やあ、と彼は左手にそっとグラスを持ち替えて、右手を差し出してきた。僕は、フローズンで濡れた手を服で拭いてその手を握った。      第220話へ戻る 第222話

水深800メートルのシューベルト|第220話

「心配いらないのよ。お金なら何とかなるわ。ここでアシェルにも嬉しいニュースがあるの……」…

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水深800メートルのシューベルト|第219話

 ママは僕が混乱しているとは豪も疑わずに続けた。 「でね、この全米一治安が悪いオークラン…

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水深800メートルのシューベルト|第218話

僕は、パパの話が出る度に胃からムカムカするものがこみ上げてきた。 「でも、パパは粗暴で怖…

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水深800メートルのシューベルト|第217話

「私、コリーニと別れたの」  我慢しきれなくなったのか。とうとう口を開いた。その顔は、齧…

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水深800メートルのシューベルト|第216話

 内緒の話なのかな? 僕は、ママがそわそわしているのに気づいた。手元が何度か耳のピアスや…

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水深800メートルのシューベルト|第215話

「お婆ちゃんの家で待っていれば良かったのに」  (僕は)笑顔のまま、どうしてタコス屋で長…

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水深800メートルのシューベルト|第214話

「そんなに変かな? この服」  不意にママが顔を赤らめて眉をつり上がたので、僕はちらと見るだけのつもりが、じっくり観察していたことに気づき、慌てて下を向いた。 「いや、久し振りだったから……」  そう言うと、安心したように眉が下がっていた。 「そうね。会いに来るのが遅くなったものね。最後に会ったのはいつだったかしら? アシェルは本当に逞しくなったわね。背もすらっと伸びて顔の形はママに似たかしら? もうすぐ十三歳になるのよね」 「もう十四になったよ」  僕は少し傷ついたが