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水深800メートルのシューベルト|第221話

「実はね……」
 (ママが口を開いた)その時、話を遮るように、がっしりとした体格の男がコンコンとママの横顔を映し出したガラスを叩いた。彼女が華やいだ顔をしてその場で手を振ると、男は入り口の方へ駆け足で回り込み、しばらくするとビールを片手に僕の傍に立っていた。

「紹介するわ。私の完璧さんミスターパーフェクトである、ゲイル先生よ」
 
 やあ、と彼は左手にそっとグラスを持ち替えて、右手を差し出してきた。僕は、フローズンで濡れた手を服で拭いてその手を握った。

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