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水深800メートルのシューベルト|第214話
「そんなに変かな? この服」
不意にママが顔を赤らめて眉をつり上がたので、僕はちらと見るだけのつもりが、じっくり観察していたことに気づき、慌てて下を向いた。
「いや、久し振りだったから……」
そう言うと、安心したように眉が下がっていた。
「そうね。会いに来るのが遅くなったものね。最後に会ったのはいつだったかしら? アシェルは本当に逞しくなったわね。背もすらっと伸びて顔の形はママに似たかしら? もうすぐ十三歳になるのよね」
「もう十四になったよ」
僕は少し傷ついたが、平然とした調子で答えた。
「そうね。大きくなったものね。子どもは、小さい頃に大切に育てていれば、後はスクスク育つものよ。ママ……嬉しいわ。小さい時にあなたを苦労して面倒みた甲斐があったわ。私の子育てが間違ってなかったのよね?」
僕は、はしゃぐように話すママを前に、何と言っていいかわからず、笑顔を作った。