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水深800メートルのシューベルト|第215話
「お婆ちゃんの家で待っていれば良かったのに」
(僕は)笑顔のまま、どうしてタコス屋で長い間待っていたのかという疑問をぶつけてみた。
「ほら、アシェルは覚えていないかもしれないけど、ママはもうあなたの……」
すべてを言わなくても理解できたし、少しは覚えていた。ママがコリーニさんと出て行ってからずっと後に、お婆ちゃんの子になったのだった。
「遠慮することないのに。お婆ちゃんもきっと歓迎してくれるよ。ママは僕を小さい頃育ててくれたんだし」
頭の中に、あの日土埃をあげて走り去った赤い車が浮かび、胸がズキンと痛んだ。ママは、首を振って前のめりになった。
「それに、二人だけで話したいことがあったの」