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魚に恋したシェフに恋をした私。


ここ数日、何をしてても頭に浮かんで答えが出なくて、ずっとモヤモヤとしていたことがあります。

「動物はごはんじゃないデモ」と、それに対抗した「動物はおかずだデモ」が同じ日に行われるそうです。


わたしはビーガンではないし、肉も魚も野菜も美味しく食べたい。でも、世の中には人間のエゴの塊のような食糧生産の現場があることも知っている。

どちらのデモが言いたいことも理解できるんです。
でも、じゃあ私はどう思うか?
その答えがどうしても出せなくて、悲しくて、モヤモヤしていました。 


でも今朝こんなニュースを見かけて、ある人のことを思い出しました。

栽培漁業とは、卵から稚魚になるまでの一番弱い期間を人の手で育て海に放流し、成長後に漁獲を行う漁業の方法のこと。
技術の発展とともに乱獲で水産資源が減少してきている中、この『つくり、育てる漁業』が注目されています。


私が思い出したのは、「魚と恋に落ちた」1人のシェフのこと。

彼の名前はダン・バーバー。ニューヨークで「ブルー・ヒル」という超人気レストランを経営している凄腕シェフです。

数年前、国連の偉い人たちに「ゴミ」を食べさせたというニュースでも注目された人。


「魚と恋に落ちた」というのは、2010年に彼が登壇したTEDでの話。
彼のトークはホントに面白くてチャーミングだから是非見てほしい。

ダンが紹介するのは、とあるスペインの養魚場です。
とびきり美味しい魚を食べて「恋に落ちた」ダンが、魚の産地を求めて向かった養魚場は、魚を育てる場所なのに餌はあげないし、天敵である鳥たちがワンサカやってきて、育てている魚の20%を食べてしまう。

養魚場を管理している生物学者のミゲールは、実は魚のプロではなくて「生き物の関係性の専門家」。ミゲールは美味しい魚を作るために、壊滅した埋立地に豊かな生態系を生み出し、魚の餌となる藻類やプランクトンを繁栄させ、ヨーロッパ最大規模の野鳥の楽園を作り上げたのです。  


ダンは言います。飢えは生産量の問題ではなく、分配の不平等から起こっているのに、「どうやって効率的に生産量を上げるか」がここ50数年の食料政策の基盤になっている。いかにたくさん、いかに安い食料を人類に与えることが出来るか。そんな考え方のビジネスが当たり前になっていると。
それがいかに急激に、生態系を破壊しているかには目を背けながら。 


ダンのエピソードはNetflixの「CHEF'S TABLE」でも見ることが出来ます!(シーズン1の2話目だよ)

ダンは荒れた牧草地を蘇らせるために乳牛を飼い、鶏を放ち、森をヤギに整備させ、そこで豚を飼い、動物で賑わい青々と茂る豊かな牧草地として復活させます。
また、育てている乳牛からオスの仔牛が生まれたことで、初めて仔牛肉の存在理由に気づきます。(仔牛肉は、あまり成牛として需要のない乳牛のオスが使われることが多い)


自然も食べることも生きることも、本当は全部つながっていて、全部大きな営みの一部なんですよね。どこか一部分だけを切り取って、私欲で変えようとするから歪んでしまうだけで。
これは食糧の生産現場に限らず、全ての物事に対しても言えることなんじゃないかなと思います。なんでも自己中ってイヤですもんね。


あと、レストランで良く「これは〇〇産です」とか言われるじゃないですか。あれお客さんとして聞いてどう思います?何を感じます?
逆にお店はどうしてそんな情報をお客さんに伝えるんですか?

ぶっちゃけ食材の産地だけ聞いても「消防署の方から来ました」って言われてるのと同じです。でも、その情報があった方が「なんかいい気がする」「食にこだわりがある気がする」「きっと美味しいに違いない」それ、ホントですか?それ、ホントに美味しい理由になってる?

そして先日、「お店の人から〇〇産みたいなこと言われるのいらない。美味しかったら自分で聞くし」的なツイートを見かけて、また考えたんです。ホントにいらないか?って。


私たちは毎日ごはんを食べます。なのにその食べてるものに対しての興味があまりにもなさすぎるのは事実です。

「肉を断て!」「オーガニックしか食べるな!」と言ってるわけでもないし、それは行動を起こす手段が人それぞれ違うだけだと思っています。
大切なのは、当たり前に甘んじて無頓着すぎたり、情報だけに頼って思考停止するのではなく、興味を持って自分で感じることから逃げないこと。そして、どんな小さなことでも、自分の出来る範囲の中で、自分で考えて行動することだと思います。 


ダンが言うように、シェフや飲食店は私たちにそれを気づかせてくれる大きな力を持っていると感じます。だから私は外食が大好きだし、お店の人の話を聞くのも好き。なので是非、飲食店は「食育リーダー」として、食べること・感じることに興味を持ってもらうために、自信を持って食の情報を発信し続けて欲しいな、と思っています。

その情報は、お客さんの「なんとなく」を作るためじゃないですよね?


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