おちこち

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「86歳、やっとひとり」~ #58 クエスト!

「そういえば掃除機どう?中袋替えてみた?」 N県のホームで暮らす母とのシューイチ電話。先週「最近ちっとも吸ってくれないけど、新しい掃除機買った方がいいかしら?」と言っていた、その続きだ。 「そうそう、それなんだけど!」 母、にわかにテンション上がる。 「ミウちゃんから、『新しい掃除機買うより、スタッフさんにお掃除お願いしちゃった方がいいよ』て言われたのよ。それでさっそく予約しちゃった!」 早―っ! 話のはやさと、その嬉しそうな口ぶりに私はちょっと驚いてしまった。 母

    • 「86歳、やっとひとり」 ~ #57 「手作りがいい」だと?!

      N県の高齢者ホームにいる母とは去年の10月以来会っていない。3回目の「緊急事態宣言」が出てしまうくらいだから、次に会えるのは母娘共コロナワクチン接種が終わってからになるだろう。 「別にいいわよ~。こっちはぜんぜん問題ないし、自粛生活にも慣れちゃったから。 …それより荷物届いたわよ!」 GW訪問できない穴埋めに、北山君からのミステリーの古本を10冊ほど送っておいたのだ。内容をスグ忘れてしまうのを幸いに、同じ本を2回も3回も楽しめる母のこと。これだけあれば梅雨入り前までの1ク

      • 「86歳、やっとひとり」~ #56 花より男子?

        「ちょっと事件があったのよ…。」 母とのシューイチ電話、その日の声はいつもと少しちがっていた。 「お隣の部屋の人が、お風呂で亡くなったの。」 隣と言えば以前廊下でお見かけした元気そうな女性のはずだが、ご病気でもあったのか?母の説明によると、ホームの大浴場でお一人入浴中に意識を失くしたらしく、湯船に浮いてるのが後から入ってきた入居者の方に発見されたという。救急車で搬送されたが、二三日後に新聞の死亡欄にお名前が出たのを他の入居者の方から聞いたそうだ。事故かご病気によるものか詳細

        • 「86歳、やっとひとり」~#55 シネマの時間

          「明日の映画はなあに?」 ホームで暮らす母との電話に、最近映画の話題が加わった。 コロナ禍以来、施設としての集まりやイベントが難しくなったからだろう、新企画として食堂の大型モニターを使った“名作映画上映会”が毎週開かれるようになった。会話することなく、マスクのままスクリーン(モニター)に集中するビデオ鑑賞会なら感染リスクも少ない。映画好きの母にとっては、カラオケに続く新しい楽しみが加わったとすっかりお気に入りで毎週日曜日の午後を楽しみにしている。 ここまで「ローマの休日」

          「86歳、やっとひとり」~#54 ひなまつり

          バレンタインの投稿から一か月も経ってしまいました…。 「チョコレートなんか食べないから送らないで!!」とか言っていた母から、「あれ、すーっごく美味しかった!また来年も…」となんとも調子のいいお褒めの言葉を頂き、私の手作りチョコは無事報われた。柑橘好きの母に合わせた“柚子ピールチョコレート”。まあ喜んでくれたようなので、来年も送ってあげよう。 さて春らしくなってきたので、懸案の“リュウコばちゃん”に電話してみることにした。 #5, #17にも登場の85歳になる母の妹は、故郷

          「86歳、やっとひとり」~#54 ひなまつり

          「86歳、やっと一人」 ~ #53 バレンタイン

          友人の「親話」を聞きながら思い出したのが、#7登場のマナカちゃんと同様、親とつきあう際に悩ましい高齢者ならではの「イヤイヤ期」や「ネガティブ攻撃」のこと。 お母様はホーム行きを阻止しようと、あの手この手で娘の同情を買おうとしたという。 「子供返りしちゃってるみたい。私憎らしくて、時々ぎゅーってツネっちゃうの。」アニメ声のマナカちゃんの口からそんな言葉を聞くたびに私は可哀想でたまらなかった。(#7「先達の話」より)  電話や顔を会わすたびに「愚痴」や「不安」を聞かされるのは

          「86歳、やっと一人」 ~ #53 バレンタイン

          「86歳、やっとひとり」~#52 ホテルライフ!

          コロナ下、帝国ホテルが客室99室を「サービスアパートメント」として提供するという。「そう、これこれ!」そのニュースを見て、私は本当に羨ましくなってしまった。「ホテル住まい」は私の老後モデルの理想。昔から、帝国ホテルの淀川長治(映画評論家)や、高輪プリンスの杉浦直樹(俳優)の孤独で優雅なホテル一人暮らしに憧れていた。 スーツケースに収まる程度の持ち物とカラダひとつで、便利でコンパクトな部屋に暮らす。ホテルのジムやプールで軽く体を動かして部屋に戻ると、掃除もリネンの交換もすっか

          「86歳、やっとひとり」~#52 ホテルライフ!

          「86歳、やっとひとり」 ~ #51 二度目のお正月

          すっかり更新をサボってしまいましたが、このブログのテーマである”高齢者施設で暮らす母の生活”は百年一日の如し。年末~新年といっても、これといった変化はない。予定外と言えば、私と妹の正月訪問がコロナ禍で叶わなかったことくらいだ。 母はことさら訪問をねだる人でもないので、「まあ春頃には何とかなるかしらね~。」 と鷹揚なもので、母も私たちも早々に&アッサリと訪問予定をとりやめていた。 「あけましておめでとう!」 元旦の朝、妹の家から二人で電話をすると、母もさすがに退屈していた

          「86歳、やっとひとり」 ~ #51 二度目のお正月

          「86歳、やっとひとり」~ #50 カラフル

          「どうせ死にに行くんだから」 ホーム移住に「超」が付くほど前向きだった母にも関わらず、以前はそんな言葉で私や妹を悲しませるというか「イラっ」とさせることがあった。「冷や水」が飛ぶのは母の“新生活”や“趣味の活動”、“新しい友人関係”に私や妹が期待を膨らませる時と決まっていた。 思うに、その頃の母が前向きだったのは自身の「始末をつける」ことであって、余生を「生きる」ことではなかったのだろう。もう「始めたり」「出会ったり」は沢山。後はひっそり死ぬだけ。そう言いたかったのだと思

          「86歳、やっとひとり」~ #50 カラフル

          「86歳、やっとひとり」~ #49 ショッピング

          Go To トラベル “都民解禁!”に励まされて、10/中旬ようやくN県のホームに暮らす母の訪問が叶った。 高齢者施設ということで入館はご遠慮して、母とは2日間、ランチ~お買い物の「お出かけコース」を楽しむことに。車中は女3人のトークが止まらない。 「よく来てくれたわね!クルマ久しぶりだけど運転大丈夫? ミウちゃん、そんなブラウスなんかでヤダわー。風邪ひくから何か上に着てちょうだい!」 規則正しい生活ですっかりスマートというか一回り小さくなったものの、母は元気いっぱいで

          「86歳、やっとひとり」~ #49 ショッピング

          「86歳、やっとひとり」~ #48 Go To 母に会いに

          Go To騒ぎですっかり更新が遅れてしまいました…。 仕事ではなく「個人旅行」。 東京都民のGo To トラベルが解禁されたことで、予定していた3件の旅行がすべて利用対象となり、その予約作業と今月2回の旅行で慌ただしい週末を過ごしていたという訳。 ・10月/上: お墓参りがてらの箱根一泊旅行 ・10月/下: 三月以来“7か月ぶり”の母訪問。 ・新年: お正月の母訪問。 政府も観光業界もドタバタの中、ゼロから予定を立てようと思ったらとても状況に追い付けなかったが、元々のこ

          「86歳、やっとひとり」~ #48 Go To 母に会いに

          「86歳、やっとひとり」 #46 カラオケデビュー(その2)

          母のホームのカラオケ施設はそれほど立派なものでは無いらしい。 「歌詞を見ながら一緒に歌えるのかと思ったら、大きい画面とか無いのよー。」 「『説明書』も『曲名の本』も無くって、入力する機械と小さい画面があるだけ。さっぱり分からないから慣れてる白野さんに全部教えてもらってるの。」 どうやら数人が入れる程度の小部屋に、家庭用に毛が生えた程度のカラオケ装置が置かれているようだ。その機械も近所にある系列ホームとの共有で、月の前半はそちら、月の後半はこちらの施設と使い回されていると

          「86歳、やっとひとり」 #46 カラオケデビュー(その2)

          「86歳、やっとひとり」#47 敬老の日

          シューイチ電話中、思い出したように母が言う。 「そうそう、米寿のお祝いで区からお祝金8千円頂いちゃった!」 1月の誕生日でとっくに米寿は迎えたのに、今頃なんだっけ?と思ったら「敬老の日」だった。 シルバーウィークといっても、長い自粛生活と在宅勤務ですっかり忘れていた。そこへもってきて「敬老の日」「米寿=数えで88歳」といわれると、ちょっとドキッとしてしまう。半年会っていないのと、毎週の電話の声があまりに元気でキレがよいので実感ないが、母も堂々たる後期高齢者。女性の平均寿命

          「86歳、やっとひとり」#47 敬老の日

          「86歳、やっとひとり」#45 カラオケデビュー!

          土曜日恒例の母との電話タイム、お天気やら気温といった一通りのあいさつの後、母がちょっと一息タメをつくってから放った一言に驚いた。 「今日この後、1時からカラオケするの。」 「え? ホームの行事か何か?」 「ううん、歌の上手な人が誘ってくれて、もう一人の人と3人で」 知らなかったが、母が入居している施設内にはカラオケルームがあって、予約して自由に使えるのだという。それにしても、人とツルみたがらない母がほとんどやったこともない「カラオケ」に参加とは。 「前にも話した白野さん

          「86歳、やっとひとり」#45 カラオケデビュー!

          「86歳、やっとひとり」#43 今を生きてる

          「ママが退屈しているようだから、ミステリー何冊か送ってもらえる?」 妹からのLINEを見て呆れてしまった。 「そうなの?? 本もそうだけど私が何か送るって言うたびに嫌な反応するから、最近言う気も無くなってた。ミウちゃんから送った方がいいんじゃない?」 以前母の大好物のミステリー本を送って一応のお礼は言われたが、送料が勿体ないだの、読むのが忙しくて内容がわからなくなっただの、ウィルスが怖いだの、理由ともつかない文句をさんざん言われてウンザリしていた。それでもコロナ自粛生活が

          「86歳、やっとひとり」#43 今を生きてる

          「86歳、やっとひとり」#44 七回忌

          今年は父の七回忌。 内々でのささやかな行事とは言え、母にとって「最後のお勤め」くらいの大仕事だったはず。無事務めあげてから故郷N県の高齢者ホームに移るというのが、長く母のプランだった。それがあれよあれよと早めの入居を果たしてしまって以来、すっかりその熱も冷め、年明けあたりから「二人にお任せするかも」と怪しい前振りをするようになった。 法事は東京のお寺なので、母の上京に合せ近くのホテルも早くから予約してある。新幹線で私か妹が迎えに行く相談もしているというのに。 “体調が心配

          「86歳、やっとひとり」#44 七回忌