記事一覧
地下鉄、血漿散る水無月
地下鉄、階下に横たわる海柘榴
声にならぬ声がへばりつく39面
奇数を刻む段数の末路に
偶数はそっと唇を噛みしめる
暴かれたハイヒールの行方
紅に濡れた花片は艶めかしく
階上の紙煙草を静脈血で浸せば
忌避すべき喧騒も
モノクロームの靴音も
きっと柔らかに消え去ってしまうから――
白黒を染めるのはいつも、
被害者じみた殉教者の血だって
記憶を彷徨う子供たちは贖罪の砂場に
「彼」と(彼女)を埋めていた
網膜のゾアとアスピリン
白磁散りばめられし水色に
瞬冷の秋は微かな暖かみを帯びて
全ての風葬された遺体に
無垢なる祈りを捧げる
――無表情の海抜39.9が
ア_オの無い頸動脈を引き裂こうとも――
死を柔らかにいざなうモルヒネの笑み
炭化したアブサンの残り香
12月の空席/拐かされし太陽
オレンジ轢断した罪と罰の断片
網膜に浮游する春雷の幻惑
鼓膜に降る雨に、誰も傘を差しだすことは無く……
左手の機密、寝台の裏表とコイント