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地下鉄、血漿散る水無月

地下鉄、階下に横たわる海柘榴
声にならぬ声がへばりつく39面
奇数を刻む段数の末路に
偶数はそっと唇を噛みしめる
暴かれたハイヒールの行方
紅に濡れた花片は艶めかしく
階上の紙煙草を静脈血で浸せば
忌避すべき喧騒も
モノクロームの靴音も
きっと柔らかに消え去ってしまうから――
白黒を染めるのはいつも、
被害者じみた殉教者の血だって
記憶を彷徨う子供たちは贖罪の砂場に
「彼」と(彼女)を埋めていた
血漿ばら撒く紫陽花の唄
曇天に潰れた心臓は、安らかな吐息を吐きだし
水死体を火葬する為に奮闘している
渇ききった戦争は水無月を鮮やかに染めて
透き通った雨すら、血塗れの水彩を纏い――

花束、浴槽、ステンドグラス砕けた 夢 

――神の手は滲むピンク
   じりじりと黄昏をゆく――

夏の境界線、肌の死を忌避したいから私は?
試験管に閉ざされし造花は
隠し持つ毒を緩やかに滲ませて__
8限目、理科室の夢うつつ
心肺を纏ったドレス
静脈ひた奔る硝子の靴
街を包む極彩色の抽象に
少女たちは唯、その濁った瞳を浄化している
清廉さに浸された景色の片隅
佇む僕の両目の充血は
未だに逢魔ヶ時をさしたままだというのに……

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