明晰夢と茜時の表象
崩れかけた境界線の障子の向こう
紫陽花の幾何学炎が
亡骸を抱擁し続ける畳を柔らかに葬る
渇いた発破音 通りすがる揚羽蝶に彩られて
――色褪せゆく血管すら
清廉なる青の熱病を湛えたままだった
造花の彼岸花香りたつ雨暁
薬指の標本に収斂されし紫色素は
匿名の指輪に色づけをする
右三半規管の歪な解体
鈍色の刃先が水音に浸された時
此処には血を流す君と
左手を血で洗う貴女しかいないから……
(明晰夢と茜時)
数列崩壊と配列配電盤乱れた心肺
やがて私の左耳から零れる耳鳴りは
表象の枕を打擲して――
赤蟻/橙鴉の群れ
百年戦争が齎す夕暮れのイロは
どちらが正解だったのだろうか?
彷徨う名も無き怪物
渇ききった瞳と唇 アスピリン
澄みきった甘汞が惑わす罠に
光無きあやかしの眼差しは
私の虚ろさに似ていて……
――わたしは三面鏡に映る( )を切り裂くことを
選び取ってしまった
玩具色 夕刻 針時計刻む憂鬱なれば
此処には心なき生存者がいるはずだと__
白紙が表す「希望なし」
罪なき缶ピースが吐露する罰
きっと、青に凌辱された灰炎が
あの日の刹那を彩っていたんだ
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