シェア
⚠️この小説には会話文は含まれておりません。 それを踏まえたうえで、お楽しみください。m(_ _)m ✄-------------------‐✄ 田舎の古びた建付けの悪い家。そこはゴンちゃんの家。田舎の子供たちには大人気のゴンちゃんの家。両親と祖父母のいるゴンちゃんの家。だけど、父さんは休みの日にたまに帰ってくるくらい。 学校帰りや休みの日になるとみんなが集まって楽しそうに遊ぶ。裏山で虫を捕まえたり、泥団子を作ったり、メンコをしたり。 そんなゴンちゃんの家の隙
月曜日の6限目の授業中、佐山 美弥子は、窓の外を見るともなく眺めていた。 『陽が傾くのが早くなったな』 終業のチャイムが鳴るまで、あと3分。 すでに宿題のページを終えた彼女は、ぼんやりと時間が過ぎるのを待つ。 中学生の頃、両親が離婚した。 「ママね、パパとお別れすることにしたの」 両親の壮絶な言い争いを見続けて数ヶ月が経つ頃、母親が口にした言葉である。原因はパパの浮気らしい。 「美弥ちゃんは、何も悪くないの」 あの時も、今日と同じ、秋の深まる10月の下旬だった
受験が終わり、4月から新しい環境で、新しい生活が始まる。 不安がないとなれば、嘘になる。 でも、自分で選んだことだから、頑張らなきゃ。 放課後や休みの日に、頻繁に訪れていた川べりは、今日も人がいなかった。 少し緑が多くなってきているところに、ごろりと仰向けに寝転ぶ。 髪とか服とか汚れるけど、家に帰って着替えればいいんだし、別に誰かに会う予定もないし。 この場所に来るのは、本当に久しぶりだ。 受験勉強期間は、ひたすら自分の部屋にこもってたから、こんな風にのんびりすることも
顔を上げると、飯村さんは両目から涙を流していた。 「……私のために泣いてくれるの?」 彼の頬に触れて涙を拭う。 彼の左手を取り、私の頬に添えると、私の涙も彼に捧げた。 「私たち、同じね」 「……同、じ……」 「クリスマス・イブに一緒に見た映画を覚えてる? 私、メアリーの気持ちがやっとわかった気がするの。メアリーはエイデンに愛されたかったけれど、それだけじゃなかったの。メアリーは誰よりも、エイデンのことを純粋に愛していたのよ。当たり前のことなのに、私、ちゃんと分かって
私が歴史研究部を訪れて挨拶したその夜、またしても「通り魔事件」が起きた。 翌朝のニュースで緊張した表情の女性キャスターがやや早口にしゃべっている。 「昨晩11時頃、福岡市内にあるマンションの地下駐車場で『人が血を流して倒れている』との通報がありました…」 前の事件から一週間余りで起きただけに、各メディアもより大きく報じた。 警察によると倒れていたのは40代の男性で、すでに出血性ショックにより死亡していたという。鋭利な刃物のようなもので左側の首から斜めに切られていたそう
二日後、関係者全員がGM室に集まった。先日岩瀬からあがってきた報告書を受けての対応だった。対象の選手の河合には監督と打撃コーチが同行していた。監督とコーチはユニフォームを着ていて、河合は練習着姿だった。こちらは岩瀬と私のふたりで、計五人でのミーティングになる。 監督と打撃コーチは、若干表情が硬かった。当事者の河合は涼しい顔でGM室に入ってきた。いまここにいる五人のなかで、河合がいちばんリラックスしているように見えた。 「で、なんなんですか、きょうは。おれもGM賞でももらえ
「ねぇ、ジャン・ミシェル美桜って知ってる?」 翌日、大海は同級生にCDを見せながら彼のことを聞いた。宿のパソコンを借りてチェックしてみたところ、彼が主にネット上で活動しているミュージシャンであることがわかったからだ。 「うん、知ってるよー! お母さんがフランス人っていうギタリストでしょー?」 「いや、シンガーソングライターって言ってたけど……」 「言ってた?」 しまった、と思い口元を隠す。有名人なら下手にうちに泊まっているなんて言わない方がいいのではと考えてのことだったが
(十八・二)不完全猫的再生症候群 「そう、がっかりなさらず」 励ます早川に、不貞腐れるばかりの響子。 「がっかりもするわよ。まったくもう」 「でも、考えてみて下さい。この肺で現実に彼女、今日までちゃんと生きてこれた訳ですから」 ん。言われてみれば確かにそうね。 「どうでしょう。無理さえしなければ、これからだって、何とかやってけるんじゃないでしょうか」 「無理さえしなければ、って」 顔を上げ、今度は縋るように早川の顔を見詰める響子だった。 「ですから、小さな肺に負担が掛
小四郎の姿が消えた。忍差は周辺を見渡した。彼の姿はどこにもない。 忍差は少し動揺した。一瞬の間で消えたのは普通だ。だが、いったいどこにいたのかがほんの少しもわからない。 すると後ろから聞いたことのある声がした。「君が探しているのは僕のことかな」後ろを振り返ったが誰もいない。 だが、今度は反対側から声がした。「そんなことはもう知っているよ」また振り返ったが誰もいない。 「それなら君を始末するしかないね。悲しいよ。でも生きるためってことだ。」忍差が跳ねようとしたが、横によけた。
小説を書いてみてはどうかとリクエストを頂きました。なので本日の投稿は初めてなりに頑張って書いたオリジナル小説です。 今日は僕の高校の入学式。新しい仲間に会うことがとても楽しみだ。だって僕は15歳までのあらゆる情報は持っていても、実際にこの目で外の世界を見たことがないからね。だから全てが未知だ。この開けた世界で一体どれだけの情報を手に入れ、僕の思考を進化させられるだろうか。。。! おっと、深部コアの思考が外部に漏れてしまったようだ。こんな失態、学校の中で起こす訳にはいかない
(十八・一)検査 ところが歌い切ったところで、またもや呼吸困難。しかも今度はそのまま意識朦朧、ふらふらふらーっとバランスを崩して、ノラ子はステージの床にばたっと倒れ込んだ。 「ノラ子ーーっ」 響子の叫びを、歓声から悲鳴へと変わった大観衆の声が飲み込んだ。騒然とする中、響子がノラ子の横へ駆け寄り、真理は直ぐに救急車を呼んだ。 「ノラ子、ノラ子、ノラ子ーーっ」 観衆の悲鳴、喧騒が続く中、ピーポーピーポーピーポー……と救急車が到着。迅速にノラ子を担架で運ぶと、付き添いの響子
つい先日会ったばかりだというのに、というより、職場では毎週のように顔を合わせているのに、麻倉さんが隣にいるという現実が、まるで夢のなかで起こっていることのように、素直に受け入れることができなかった。 もちろん嫌という意味ではない。 スラッとした繊細な体つき、今にも折れそうなほど華奢な骨格、思わず抱きしめたくなるような背丈、触りたくなるほど艶やかなセミロングの栗毛。ここが電車の中や不特定多数の人が利用する公共の場でなくて、ほんとに良かったと、心の底から思ってしまう。
-カリン- ローゼルの誕生祝いの宴は、迦楼羅の間というカリンが普段立ち入ることのない部屋で行われることになっていた。 この部屋は、大鷲の間や鳳凰の間のように大勢での式典や晩餐会ではなく、王族が少人数の来賓を招いて食事をするための部屋なので、王族か王家に仕える官吏たちでなければ、そうそう立ち入る機会はない。カリンは王になる前のレフアの誕生祝の宴で何度か足を踏み入れたことがあったが、数年前に一度だけ参列したローゼルの誕生祝が随分と久しぶりの機会だった。 レンは当然初めての
僕がココに移って そろそろ一年になるのか なんでも市民相談課 去年まで務めた農林課に比べたら 体力的には楽だけども やっぱりココは名前のとおり なんでも相談できると思って 日々いろいろな方がやってくる 税金が払えません こういう方は税務課へ紹介する 政策費が不透明だろう 予算委員会の傍聴をご案内して 旨い店を教えろ これはまぁいいんだけど 観光課の仕事として割り振る 子供が病気じゃないか心配で どうしてまず医者に行かないのか まぁとにかくほん