『なんでも市民相談課』
僕がココに移って
そろそろ一年になるのか
なんでも市民相談課
去年まで務めた農林課に比べたら
体力的には楽だけども
やっぱりココは名前のとおり
なんでも相談できると思って
日々いろいろな方がやってくる
税金が払えません
こういう方は税務課へ紹介する
政策費が不透明だろう
予算委員会の傍聴をご案内して
旨い店を教えろ
これはまぁいいんだけど
観光課の仕事として割り振る
子供が病気じゃないか心配で
どうしてまず医者に行かないのか
まぁとにかくほんとうに
千差万別というか
いろいろいらっしゃって
今年度いちばん驚いたのは
年末差し迫った頃に来られた
干支を替えてほしい
っていう方かな
その方は辰年の男性で
まさに年男なんだけど
竜が子供の頃から怖くて怖くて
だから
一個歳を取って構わないから
かわいい兎
つまり卯年にしてほしいって
そう主張するわけ
こればっかりは戸籍係に言っても
どうにもしようがないんですよと
そう伝えたら案外あっさりと
引き返していったっけな
その背中はまるで
竜のように鱗だらけ
というのは冗談で
兎のように丸めてとぼとぼ
実は市民の方からいただいた相談
守秘義務があるから
ほんとうはこうやって
喋ったりするのもダメなんだけど
つい面白くてね
この干支替え希望男性の件を
同僚との飲み会の席で話したら
市民生活課のひとりが
その人を知っていたらしく
どうやら市民生活課で先日開いた
市内在住の男女のお見合いパーティに
参加していたとのこと
その方は高収入で性格も良いのに
干支コンプレックスのせいで
パーティのとき
イイ感じになった女性の干支を聞いて
その方が巳年つまり蛇
ということはひとつ下だと知ると
竜と蛇がカップルって
なんかちょっとなぁ…
と言って断ってしまったそう
こればっかりは他人が理解できない
そういう結論に落ち着いて
なんでも市民相談課
実はなんにも解決できていないって
僕は無力感を覚えたよ
(あとがき)
こだわりも干支もひとそれぞれ。