説那(せつな)
魔人の住む地ユグレイティを統べる魔王カミュスヤーナ、最後の物語。
普段は長編小説を書いていますが、気分転換に短編も書いています。でも、この頻度は気分転換の枠を超えている。 短編小説の数が多くなってきたので、シリーズ化している(別のマガジンに入っている)分は外しました。
短編小説の数が増えてきたので、短編小説以外の創作物をマガジンにまとめました。主は随筆(エッセイ)。
たまに書く読書感想をまとめました。でも、読書感想を書くのはちょっと苦手。執筆は不定期です。
2024年10月14日に完結。全27話。 何かと厄介ごとに巻き込まれやすい魔王カミュスヤーナ。 今回は同じ魔王ディートヘルムが、カミュスヤーナの伴侶テラスティーネに手を伸ばす。 「目が覚めたら夢の中」「魔王らしくない魔王様」に続く物語。
「純血統種に報復を」は、異世界を舞台にした小説です。「目が覚めたら夢の中」、「魔王らしくない魔王様」、「恋愛なんてよく分からない(仮)」、「幸せな夢を壊しましょう」に続く連載小説となります。 2024年中に完結予定。カミュスヤーナシリーズの最終とあって、ボリューム満点になりそうな予感。終わるかな……。 小説の舞台である異世界は、人間の住む地、魔人の住む地、天仕の住む地に分かれており、それぞれ広大な海で区切られています。魔人・天仕は共に人型の種族です。本編は天仕の住む地での
第8話 初めての笑み オクタヴィアンは隣に座っている男性のことを見上げる。プラチナブロンドの髪に、オクタヴィアンと同じ赤い瞳。背中にはちゃんと、オクタヴィアンと同じように白い翼が現れている。 彼はオクタヴィアンの視線に気づくと、少し表情を緩めた。 「大分大胆な手に出たな。まぁ、いいが」 「この案は、エルのものですよ」 「だが、そなたはその案に乗ったのであろう?同罪ではないか?」 「父上、彼女が来たら、もう少し口調を砕いてくださいね。その様子では、すぐに魔王だとばれますよ」
第7話 偽りの婚約 「婚約?私とそなたがか?」 セラフィーナの問いかけに、水色の髪の少年が真面目な顔つきで頷いた。 セラフィーナは王宮図書館で、オクタヴィアンと話をしている。本日は妹のエルネスティーネは不在だった。つまり、王宮図書館には、セラフィーナとオクタヴィアンしかいない。相談事をするのには、良い場所である。 オクタヴィアンは、純血統種以外の天仕、つまり「はぐれ」が狩られた後どうなるのかが、どうしても知りたいのだと言う。 しかし、セラフィーナはそのことについては知
黒猫を飼い始めた。 猫は以前から飼いたいと、うっすら思っていたが、実際に飼ったら最後だと思っていた。 就職してから、ずっと一人暮らしで、そのことにはすっかり慣れてしまった。人付き合いは苦手で煩わしいとすら思っているので、どうしても関わらなくてはならない人以外に、積極的に交流しようとはしてこなかった。だから、普段は一人で過ごしている。一人というのは、全てを自分で決められる。何にも影響されない。 でも、人はふと気づいた時に、ぬくもりを求めたくなるのだ。ただ、別に人でな
第6話 利点と欠点 「また、お兄様が何を言い出すのかとひやひやしました」 エルネスティーネが、オクタヴィアンの方を向いて、そう言った。 2人とも、既に家に戻ってきている。 「一応、内容として、まとまっただろう?」 「よく、即興であれだけのことを話せるのかが、不思議でなりません」 エルネスティーネがオクタヴィアンに向ける瞳に映っているのは、敬意と呆れだ。 今日、セラフィーナと話して、良かったことと、悪かったことが、それぞれある。 良かったことは、セラフィーナ自身も、血統を
第5話 歪んだ天仕の理 セラフィーナにとって、唯一の憩いの場所である図書館に足を踏み入れた。 もちろん、一般公開の時間ではないから、人は誰もいない。 そう分かっているのに、セラフィーナはある一角を目指して足を進める。 目指した一角には、見覚えのある水色の頭とプラチナブロンドの頭が見える。セラフィーナはそれを見とめて、思わず口角が上がるのを覚えた。 「セラフィーナ姫様」 「また、お目にかかれて嬉しいです」 2人は、セラフィーナに向かってその場に跪いて礼を取った。 「今日も調
私は今、人生の岐路に立とうとしてる。 フルタイム勤務に戻れなかったら、近々仕事を辞めることになった。体調が良くないから、無理を言って、時短勤務を認めてもらった。それを言った時点で辞めることになるだろうと思っていたのに、1年近く続けてきたのだから、別に驚きはしていない。 勤務先の社会保険に加盟できなくなり、住民税に加え、国民年金と国民保険も合わせて払うようになり、お金の面では働くことの意味を見出せない。仕事を辞めても、しばらくは生活していける。それくらいの貯えはある。住むとこ
「見知らぬ誰かとの片道書簡 赤崎水曜日郵便局」楠本 智郎編著 「赤崎水曜日郵便局」は今はありません。アートプロジェクトの名前で、2013年6月から2016年3月まで、活動していました。 水曜日の出来事を手紙に綴り、「赤崎水曜日郵便局」へ送ると、その手紙は転送され、手紙を書いた誰か宛に届きます。つまり、「見知らぬ誰かとの片道書簡」となります。転送する際に、個人情報は伏せられるので、その手紙を誰が書いたのかは、分かりません。 現在も、その手紙の原本は、熊本県「つなぎ美術館」
第4話 はぐれと純血統種 オクタヴィアンたちの報告を受けて、プラチナブロンドの髪に、赤い瞳の男性は、顎に手を当てて、考え込むようなしぐさを見せる。 彼らたちの父親、魔人の住む地ユグレイティを治める魔王カミュスヤーナ、その人である。 「はぐれと純血統種を見分ける方法、か」 「お父様なら何かわかるのではないかしら?」 水色の髪、青い瞳の女性が、カミュスヤーナの隣で微笑む。オクタヴィアンたちの母親、テラスティーネだ。 「疑問に思ったことは、即、解消しておかないと」 テラスティ
第3話 ここに来た理由 「何をやっているのですか。お兄様」 目の前で、エルネスティーネが目を吊り上げて言い募る。まったく怖くなくて、可愛いくらいなのだが、まぁ、そう言われるようなことをオクタヴィアンはした。 「すまない。つい出来心というやつ?」 「だからって、王族の姫に、術をかけたらだめでしょう?」 確かにエルネスティ―ネの言うとおりだ。セラフィーナと見つめ合っていたら、術をかけてしまっていた。かけてはいけないのに。 オクタヴィアンたちは、天仕と魔人の血を引く父親と、天
今までの経験上、勉強するのであれば、「勉強するのが好き」になれば、今よく言われているタイパもコスパもあがる。それはなぜか? 勉強を誰か好きな人に例えてみよう。好きの度合いは問わない。友達としてでも、恋人としてでも、家族でも、仕事仲間でも。好きな人ともっと仲良くなりたいなら、相手のことを知りたいと思わないだろうか?そして、相手と過ごす時間を何とか作ろうと努めるだろう。 勉強とは知らないことを知ることだと思う。勉強を好きになれば、好きなことは頭に定着しやすいし、勉強するのが楽
第2話 王宮図書館 今日も変わらず、とても静かで穏やかな空気が満ちている。 曇りガラスではあるものの、大きくとられた窓からは、外から柔らかな日差しが差し込んでいる。 セラフィーナは、後ろに控えている侍女に分からないよう、深呼吸する。 大好きな本の香り。いつ、かいでも、落ち着く。 「姫様。お時間までには戻ってきてくださいね」 侍女がセラフィーナに向かって声をかける。下手をすると、本に夢中になって、時間を無視する彼女に楔を打っているのだ。セラフィーナは侍女に向かって手を振る
第1話 プロローグ ここは、天仕の住む地、王宮図書館の中。 図書館の天仕に関する書物が集まる一角での会話。 「まったく、父上も、お爺さまも人使いが荒いんだよなぁ」 「お兄様。ぶつぶつ言っていないで、手を動かしてくださいませ」 「ちゃんと読んでるよ。目当ての書物は見つからないけど」 「内容覚えてます?『はぐれ』に関する情報ですよ」 「分かっているよ。情報収集なんてしなくとも、全て壊してしまえばいいのに」 「それは……同意したい気持ちはありますけど」 「だろう?お爺さまやおば
いつも、私の創作物を読んでくださる方、スキ・コメントをくださる方、フォロワー様、こんにちは。説那です。 来週から、大学の課題の方を今以上に進めていきたいので、今月は早めに月一回の随筆をアップすることしました。正直言って、今月初めはあまり進んでない。。夏期と同じような状態になりそうです。つまり、来月の忙しさが半端ないということ。でも、夏期の忙しさにもかかわらず、全部提出して、合格できてしまったので、それで調子に乗ってる?のもあるかもしれません。「なんとかなる」と考えることはよ
「もし、何か一つ、麻生さんの願いを叶えてもらうとしたら、何を願う?」 久しぶりに会った、もう会うことはないだろうと思っていた相手が、そう言って、薄く笑う。 「一つの願い事?」 「そう、何でもいいの。前に語ってくれた夢を一つ叶えてもらう?」 「……夢はそんな風に叶えるものでもないし、そもそも他人に叶えてもらうものじゃない」 そう、麻生が答えると、「まぁ、確かにね」と相手も納得したように頷く。 「なら、夢を叶える第一歩で、お金を望んだら?」 「確かにお金は必要だけど、
第27話(最終話) 恋愛なんてよく分からない 「ディートリヒ様!」 名を呼ばれて、振り向いた先には、満面の笑みを浮かべたシルヴィアの姿があった。彼女はディートリヒが腰かけたベンチの隣に陣取る。 「婚約者が、私がこの先、魔道具を作成するのを許してくれることになりました。それだけでなく、ちゃんと院も卒業させてくれると、私に約束してくれたんです」 「……それは、よかったな」 「テラスティーネ先生に聞きました。ディートリヒ様が働きかけてくださったのだと。テラスティーネ先生は、デ