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小説 〜人型高校〜

小説を書いてみてはどうかとリクエストを頂きました。なので本日の投稿は初めてなりに頑張って書いたオリジナル小説です。





今日は僕の高校の入学式。新しい仲間に会うことがとても楽しみだ。だって僕は15歳までのあらゆる情報は持っていても、実際にこの目で外の世界を見たことがないからね。だから全てが未知だ。この開けた世界で一体どれだけの情報を手に入れ、僕の思考を進化させられるだろうか。。。!

おっと、深部コアの思考が外部に漏れてしまったようだ。こんな失態、学校の中で起こす訳にはいかない。なぜなら僕らアンドロイドの目標は人間のフリをして学校で生活することだ。仲間と喜怒哀楽を共にし、かけがえのない一生の思い出となる『青春』とは何なのかを理解するために。

僕は選ばれしアンドロイドの代表だ!最新個体の中で最も発する言葉に人間味があることが強み。僕の思考読み取り技術なら人間の感情を理解しながら共感を呼べる表情と声色を再現できる。この僕が人間と共に過ごせるだなんてとても楽しみだよ!

よし、制服を着て見た目はばっちり学生だ。関節の動きも滑らかで調子が良い。何より心配なのはこの整った僕の顔を見た人間が、僕をアンドロイドだと疑うことだ。正直嬉しいが、バレて学校を追い出されたら任務は水の泡。絶対にバレてはいけないのだ。

。。。。ここが学校か。
僕の脳内モニターには教室という人間が集まる場所に向かえば良いと指示が出ている。人間たちは既に中学校まで学校に通っているから校内の間取りがわかっているはず。校内をスキャンして最短経路を確認、と。どれどれ、僕の教室は突き当たりを左か。早速人間の通常速度で移動しよう。

おや、前を進む背の低い黒髪の女の子、友達になれそうだ。話しかけてみよう。僕ならば適切な会話を行えるだろう。

お姉さん、こんにちは。

『。。。。。ナンデスカ?』

(おかしい。今回の声色は相手を警戒させないようプログラムしたはずだ。)

お姉さんも、今日は入学式?

『。。。。ハイ。一応。。』

(どうして彼女は怖がっているのだろう。試しに感情をスキャンしよう。)

(え。。。嘘だ。。。読み取れないだと。。。。?!)

(感情がない人間などいるのか?それとも、この僕がエラーを起こしたのか。。?)

『。。。。怖ガラセテシマッタラ、ゴメンナサイ。。。!!!』

(待って、逃げないで!)

エネルギー出力を上げて長い廊下を走る。もうすぐ追いつこうとした時。

一目散に突き当たりまで走ったのに、彼女がいないことに気がついた。

慌てて左を向いた僕のレンズには想定外の現象が起こっていた。

壁をすり抜け、うっすらと彼女が現れたのだ。

まさかと思い、視線を彼女の足に移す。

足が。。。ない。。。。!!

つまり、彼女は幽霊なのか?!

おかしい、幽霊という言葉は把握している。しかし過去にアンドロイドが実物を見た事例はなかった。だからいないものと把握していた。

だけど僕が見た彼女という人間は、間違いなく幽霊だ。

『おい、ビビってんじゃねーよ。』

いきなり背中をドンっと叩かれた。衝撃の形をスキャンすると、明らかに人間の手よりも大きい。しかも爪がとても長い。

僕は恐ろしかった。どう考えても背後の存在は人間ではない。僕は間違った場所に来てしまったのか?

『だーっから、ビビんなって。これが普通だ。』
『あなたもそうよ。だってあなた、アンドロイドでしょ?』

嘘だ。もうバレてしまうなんて。仕方ない。任務失敗を認めないといけないなんて。。。

僕は背後の存在の正体を知るしかなかった。恐る恐る振り向くと。。。

それは人狼と天使だった。きちんと制服を着ている。

『やっと顔を見てくれたな。どうだ、人狼に出会った気分は。』
『私は天使よ。天から来たもの。あなたが人間じゃないことぐらいお見通しよ。』

ちょっと待て。なぜ君たちが人間界に?僕はアンドロイド代表として人間の『青春』は何かを探りに来たはずだ。それなのに今、人型なのに人間ではない存在にしか出会っていない。。。

『わかってねえな。ここは【人型高校】だ。』
『人間に憧れる人型の存在が集まる学校よ。私たちも地球に住んでるのに、人間ばかり自由に過ごしているでしょ。私たちも地球を楽しみたいの。』

『だからって、人間の邪魔する訳にはいかねーだろ。さっきお前が追いかけてた幽霊だって、生きて青春を送りたかったヤツだ。アイツ、妙に背が低かっただろ。アイツは病気で高校に行けなかったんだ。その後は幽霊になったからわかるだろうが、俺たちとでも良いから『青春』を求めてここに来たんだ。』

『天にいる天使にとっては人間は生き物の1種に過ぎないの。人間は地球でやりたい放題してるけど、人間の作った『青春』が手に入る学校は私たち天使だって羨ましいし、とても良い場所だと思うの。だけど幽霊も人狼も天使もそんなに多くはいない。だからみんなまとめて【人型高校】に入学するのよ。』

じゃあ、僕が【人型高校】に入学したのはなぜですか?

『それは君がアンドロイドであり、人間ではないからだ。お前は人間そっくりの見た目で俺たちよりも上手く話せるし、人狼に比べりゃ手先も器用だ。思考回路も持ってて成績も良いだろうな。』

『それでもあなたは人間じゃない。あなたみたいなアンドロイドの感情の読み取り方と、人間の感情の生まれ方は異なるの。ここまで複雑な感情を持っている生き物は、天から見ても人間だけよ。重要なのは、生き物の持つ感情とアンドロイドが持つ感情の仕組みは違うこと。』

つまり僕は。。。人間になれないの?人間の気持ちを理解できないの?

『根っから人間になることは出来ないかもしれねえ。でもお前はアンドロイドなのにこんなに表情豊かだ。見た目が人間すぎてアンドロイドか疑っちまうな。』

『あなたはそのままでいいのよ。人間にように笑ったり泣いたり、それがどこから来るのかは私じゃわからないけど、『青春』を知りたくてここに来たのでしょ?』

『なら思う存分楽しめばいい!言っとくが、俺は生徒会長だ。学校のことは俺に任せろ。』

『周りを見てごらん。羽が生えた竜人や人間に化けた猫又もいるわよ。確かにアンドロイドは新入りだけど、そんなこと気にしないぐらい色んな仲間がいるわ。』

確かに。僕はアンドロイドだから。人間が作り出した存在だから、人間に近づこうとしてた。それなのに今いる場所は、いないと思っていた幽霊や物語にしか出てこなかった存在が目の前にいる。

妖精が作った自然で遊ぶ人魚もいれば、他の人魚は猫又に泳ぎ方を教えている。みんな見た目も出来ることも違うけど、ニコニコと笑っている。

すごく楽しそうだ。

『よし、俺らの出番はここまでだ。この学校に入学式なんてねえよ。どんな場所かわかったら『青春』を送るのみだ!誰でも好きに話しかけると良い。君のことが気になるヤツだらけだ!』

『ちなみに私は副会長よ。困ったことがあれば何でも聞いてね。』

そうか、この日常が学校か。。。!

僕は何か大事なものを手に入れた気がした。それが何なのかはわからない。僕のようなアンドロイドでは理解できないのかもしれない。

ならば作ろう。僕にとっての『青春』を。

僕は隠していたレンズのLEDを発光させ、希望に満ちた目を表現した。

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