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愛のこと

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自分と誰かを大切に想うこと
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優しさに救われている話

優しさに救われている話

買い物に向かう途中で雨が降ってきた。こまめに通うには少し遠い距離にあるスーパーでは、買い物袋に入るギリギリの量の食料をいつもまとめて買って帰る。勢いの弱いシャワーのような雨のなかを、傘もささずに濡れながら、重い荷物に振り回されないよう必死になって歩いていると、なんだか急に、自分が惨めに思えて悲しくなってきた。

もし今の私の姿を見つけたら、あの人はどうするだろうか。きっと、どこからともなく傘を買っ

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淡い思い出は恋にならず

淡い思い出は恋にならず

いつだったか

飲み物を飲んだ後にする
下唇を舐める仕草が
すきと言われた

無意識に舐めてしまうたび
その人のことを思い出す

これを思い出と呼ぶのかな

私は
それを恋とは呼ばなかったな

ふたりは素敵でむずかしい

ふたりは素敵でむずかしい

コンビニで暖かい飲み物をひとつ買って
ふたりで分け合って散歩がしたい

今夜の映画とおつまみを
喧嘩しながら選んで帰って
薄暗い部屋でふたりで観たい

床に敷いた布団に寝転がって
枕元の酒を飲みながら話がしたい

ゆっくりできる雨の日の朝は
外の世界から遮断されたような
独特の静けさに耳をすませて
寝顔を眺めるうちにまた眠ってしまいたい

忙しい早朝だったら
お湯を沸かしにこっそり布団から抜け出し

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解り合えないという理解

解り合えないという理解

女のすべてを知ろうとする男も、
男にすべてを解ってもらおうとする女も、
きっとどちらも同じように愚かです。

すべては手に入らないと
きちんと理解したうえで

それでも
お互いをもっと知りたいまま
互いの愛をもっと欲しいままで
ずっと一緒にいられたら                                         どんなにか素敵なことでしょう。

永く儚い、想い愛

永く儚い、想い愛

誰にも言わずに
相手にも伝えずに
大切にしまっておく
そんな気持ちがひとつくらい
あったっていいやと思う

愛は与えるものなのに
返すものではないはずなのに
向けられた愛に気づいたときに
返せる愛が自分にはないとわかった時に
堪らなく苦しくなるのは何故でしょうか

私にはまだ分からないままです
でも
だから
返せないことが分かっている愛は
きっと与えても苦しめるだけだと
ひとり抱え込んでしまいます

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春は、わたしの腕のなかに

春は、わたしの腕のなかに

ぽつり、

ぽつりと滴り落ちる
雪解け水のような言葉が

わたしに教えてくれたこと

そこに
わたしの知らない
冬があったこと

長いあいだ
厳しい寒さと底知れぬ雪が
そこを支配していたこと

今、
わたしの胸を濡らす

あなたのあたたかな涙が
教えてくれること

春は、わたしの腕のなかに

恋なんて、

恋なんて、

きっと永くは続かないと
心のどこかで思ってる

美味しい料理だって
冷めればすぐに悪くなる

咲いた花もいつかは枯れる

だけど

美味しい料理を作るためには
根気と時間が要るように

種を植えて水を与えて
花を育てるように

気長にゆっくり時間をかけて
時には何かをぐっと堪えて
それでも
人を愛したいと
あなたもそう思うでしょう?

終わらないものはないのなら
終わらせない努力をやめないで
そう

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君はホットケーキを焼かない

君はホットケーキを焼かない

私はまたホットケーキを焦がした。

私は料理があまり得意ではない。下手くそというよりかは、作ることを面倒くさがってほとんどしないために、いつまで経っても上達しないのである。こんなに偉そうに言い訳をしてみたものの、ホットケーキなんて、小学生になる前の子どもがはじめて自分で作るようなお菓子、それさえもまともに作ることが出来ないのだから、きっと本当に向いていないのだろうと思う。

ホットケーキの失敗はこ

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命日なんていらない

命日なんていらない

わたしは、おじいちゃんが亡くなった日を憶えていない。

亡くなったことを知ったのは、何年前だったろうか、父からの電話だった。バイトを終えて、スマホの通知を確認すると、珍しく父から連絡が入っていた。何か怒られることでもしたかなぁ、くらいに思っていた。今思うと、その方がよっぽどよかった。
耳の外で鳴る電話越しの父の声は、なんだか他人事のように聞こえた。そのくらい、おじいちゃんの死は、噓みたいだった。バ

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共に生きるは

共に生きるは

まだ足取りの覚束ないこの人と、未来が霞んで見えない不安の中を、私は手探りで進んでいます。どこで、足元の小石に足をとられて転んでしまうか、強風にのって飛んでくる枝葉は私たちを傷つけやしないだろうか、見えない不安は私の想像の中でだんだんと大きくなっていきます。最期まではぐれずに登りきれるかも分からない、頂上の見えない霧の深い山の傾斜を歩んでいます。

この人よりもっと山登りが上手な人が、一緒に登ろうよ

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わたしのーと

わたしのーと

まいにち すこしずつ 考えていること                     あの人に話したい くらいに 大きくなってきたら   ひっそりと 言葉だけをとっておく

すべてを見せてしまうのは 勿体ないから             なんて 言い訳をしながら                                      伝える勇気のない きもちを そっと                  

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乞文

乞文

雨の日は会えない 晴れた日は君を想う

今夜はこんな邦題の映画を観ようと、久しぶりにキャンドルに灯をつけました。映画がはじまって、5分で妻がなくなりました。それ以上の感想はここで書くのはやめにしておきます。もしもあなたがこの映画を観たら、続きはその時にでも話しましょう。                            

映画を観ながら、いろいろなことをぼんやりと考えました。言葉にできるほど

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637円と45分

637円と45分

今日の君との時間

玄関が開く。おかえりなさいのハグをして、お互いの1日を労わり合う。近くのコンビニまで散歩する。いつものカフェオレと、君のとおんなじパンを真似っこして カゴに入れると、君が笑う。レジの小太りのおじさんが打ち出したのは、637円。300円ずつお金を出して、今日は私が50円を払う。

お店を出たら、早速お揃いのパンを開けて、なんとなくかんぱいしてみる。おいしいね。と言ったあとは、ふた

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会いたいと言えない夜に

会いたいと言えない夜に

自分の感情が黒くなっていくのを感じる。会いたいと言ったって会えないことくらい頭では分かっている、それが良くない。寂しい、会いたい、会えなくて悲しい。そんなブルーな感情を、どうしようもないからと、そのままにしてしまうから。そのうち、ブルーの涙を流していた心は鉄のように錆びついて、茶色く濁った言葉が漏れ出してくるようになる。会えなくて寂しいのにあなたはとても楽しそう。いっそのこと連絡を取らずにあなたを

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