君はホットケーキを焼かない
私はまたホットケーキを焦がした。
私は料理があまり得意ではない。下手くそというよりかは、作ることを面倒くさがってほとんどしないために、いつまで経っても上達しないのである。こんなに偉そうに言い訳をしてみたものの、ホットケーキなんて、小学生になる前の子どもがはじめて自分で作るようなお菓子、それさえもまともに作ることが出来ないのだから、きっと本当に向いていないのだろうと思う。
ホットケーキの失敗はこれで2回目。前回の失敗よりは、形は綺麗に焼けたような気がする。あったかいうちにバターと蜂蜜を適当に塗りたくり、そのまま空きっ腹に詰め込んでしまえば、そこそこ食べる喜びは感じられる程度の焦げだ。君はそれを「美味しいよ」と、この間と同じように笑って食べてくれるから、私はますます情けなくなった。
「今度は君がホットケーキ作ってよ」
少しふてくされたように私がそう言うと、君はさらりと作らないと答えた。
君の作る料理はいつも美味しい。私が作るよりもずっと手際がよくて格好いい。私が料理を作ったのは、友達が作っていたのを見よう見まねでやってみたポトフの1度だけで、あとはいつも君が作ってくれる。その方が美味しいし、私は君の作る料理がすきだ。私だってもう焦げたホットケーキは食べたくない。
「僕はホットケーキは作らないよ。ホットケーキとポトフは君の担当だからね。」
非常に残念である。私は、自分で上手に作れるようにならない以上、美味しいホットケーキとポトフは食べられないということだ。君は、私が美味しいホットケーキを焼けるようになるまでずっと、焦げたホットケーキを食べようと言うのである。馬鹿みたいだ。苦い嘘を吐きながら、苦いパンケーキを食べたいだなんて。
たぶん君は、私よりも私のことをよく分かっているから、もし今君がホットケーキを焼いてくれたら、きっと私が2度とホットケーキを焼かなくなることも分かっていたのでしょう。だから決してそれをやってはくれないのでしょう。君の断りはいつだって愛情に満ちている。私が君にホットケーキを焼いてもらえるようになるには、もうしばらく時間がかかりそうだけれど、君がしびれを切らして私より美味しいホットケーキを焼いてしまう前に、次はもう少しきつね色に近づきたいと思った。
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