共に生きるは
まだ足取りの覚束ないこの人と、未来が霞んで見えない不安の中を、私は手探りで進んでいます。どこで、足元の小石に足をとられて転んでしまうか、強風にのって飛んでくる枝葉は私たちを傷つけやしないだろうか、見えない不安は私の想像の中でだんだんと大きくなっていきます。最期まではぐれずに登りきれるかも分からない、頂上の見えない霧の深い山の傾斜を歩んでいます。
この人よりもっと山登りが上手な人が、一緒に登ろうよ、と私を誘ってくれたこともありました。あの人と一緒に登っていたらきっと今頃は、ここよりもっと高い所にいたのだろうと思います。今日も月並みの速さで、なんとか少し、前に進みました。ふたりとも少し呼吸が荒くなってきて、とても余裕があるとは言えない山中ですが、私は一緒に山を登るのが、この人でよかったなあと思います。決して楽な道ではありませんが、きっとあの人に助けられて登る山よりも、この人と手を取り合って登っている今が、私にとっての幸いなのだと感じます。少なくとも今は、そう信じています。どうか、この手を離さないでいてね。
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