【59】 誤解していた「ネガティブな感情」。実はとってもいいヤツでした
ガンになり、底の底まで落ち込み切った私。
そんなネガティブな自分が心底イヤになって、
「ポジティブに生きるぞ!」
「ネガティブは気分でなるもの、ポジティブは意志でつかみ取るもの!」
そんな風に意気込んできた私。
日々襲い掛かる苦しみからなんとしても逃れたくて、脳科学や心理学、哲学の本を片っ端から読み漁り、見様見真似で実践してきました。
そうして一生懸命叩き潰そうとしてきた「自分のなかのネガティブな感情」が、実はとても大切な相棒のようなものであることにも気づかされました。
水島広子さんの著書『困った感情の取扱説明書』では、数々のネガティブな感情―怒り、悲しみ、寂しさ、不機嫌、不安、罪悪感など―をかみ砕いて、その苦しみから、どのように脱却するかのヒントが書かれています。
一貫して書かれているのは、ネガティブな感情も、自分を「なんらかの困ったこと・衝撃を受けたこと」から守る「大切なサイン」なんだということです。
それらのサインを、無理に封じ込め続けてしまうと、いずれ限界がきて、心身に支障をきたすというような内容でした。
先に書いた泉谷氏の著書『普通がいいという病』に登場する「心」というのは、水島氏が言うところの「感情」に当たるのだと思います。
だから、脳みそのミソちゃんの一部であるココロちゃんが、
「今、パンチを受け、痛いです、つらいです、困っています!!」
そんな風にSOSを出しているのに、その声を無視し、聞こえなかったことにしたり、
「そのくらいのことで痛がってどうするの、我慢してよ!」
そうやってアタマちゃんが、ココロちゃんを無理やり封じ込め続けたとしたら、その場は一時的にしのげたとしても、積み重なって、いずれどこかの段階で心(感情)が限界を迎える。
感情が沸き起こったとき、まずは「ココロちゃん」の反応に気づいてやる、認めてやる、フタをしない。
なにげないことでありながら、実は最も大切なステップなのだと知りました。
「今、わたし、辛いよね。今、衝撃を受けちゃっているんだよね、分かっているよ」
そんな風に、ココロちゃんの声に気づいてやれば、そのとき初めてネガティブを手放す一歩が始まる。
そうか、まずはネガティブになってもいいんだ!
これは、元来ネガティブである私へのエールのようなメカニズムだな。
しかもネガティブでもいいんだって思うと、ネガティブが消えてゆくような感覚になるのも不思議ですよね。
私「ミソちゃん、あんた、なかなかに高性能にできてるね」
ミソ「そうでしょ! ミソはどんなコンピュータより優れているのだ」
私「ネガティブな感情なんていらないってずっと思ってきたけど、ミソちゃんに意味のない機能なんか、ひとつもないんだよね。脳みそすげー」
ミソ「そうなの。考えてみれば、この世界や宇宙や、あらゆる生物も自然も人間も、全部すごいよね。何がどうなったらこんな世界ができあがるんだろう」
私「ほんとだよ、この世界って、すごすぎるよ」
ミソ「誰が作ったか知らないけど、ホントすげー」
自分が今、こんなにも不思議な世界を生きているこの奇跡。
ガンになったことも、「自然の一部」だったのかもしれません。