【19】 新たなミッション「女性ホルモン阻害剤」が嫌すぎて、飲めない
母の治療と同時進行で、週一で投与していた私自身の抗がん剤の一種(パクリタキセル)が、ついに終わりを迎えました。残すところはもう一種類(分子標的薬・ハーセプチン)のみの投与に。
通院の頻度も週一から三週に一度に減るため、嬉しくて、ほっと一息です。
しかし医師から「明日から、ホルモン剤を毎日2錠服用してください」とさっそく新たな薬を付け足されました。
(えーーー。もう飲み始めるの? まだ先のことだと思ってた……)
乳がん経験者の母も服用しているホルモン剤は、女性ホルモンを体内に取り込むのを阻害するための薬で、最低で5年、長ければ10年飲む薬です。
乳がんの種類はさまざまですが「女性ホルモンが悪さをしているタイプ」があり、母も私もそれに該当しました。
せっかく体内で作られた女性ホルモンを阻害する。
再発予防のためとはいえ、私はその不自然な治療が、嫌で嫌でたまりませんでした。
大事な女性ホルモンを、なぜわざわざ阻害しなくちゃいけないの? もちろんホルモンの受容体がない人からしてみれば「治療薬があるだけマシじゃない」と言われそうです。
若いころから生理痛やPMSにはさんざん悩まされてきましたが、抗がん剤によって卵巣機能が低下し、今は事実上の閉経を迎えていました。そして今度は人工的に女性ホルモンを阻害することによって、更年期障害も引き起こされる……最悪だ。
ネット上では、ホルモン剤の服用により、「うつ状態になった」「全身の関節が痛い」「とにかくだるい」「体毛が濃くなった」「不眠になった」など、乳がん患者たちのうめき声が、吐いて捨てるほど出てきます。
恐ろしくて私はなかなかホルモン剤を飲み始めることができませんでした。
頭の中では、二人の私がバトルを繰り広げていました。
私A「閉経も、更年期障害も、自然に迎えたかったよ……。これも全部、乳がんのせいか……クソ……」
私B「そんなにホルモン剤が嫌なら、飲まなきゃいいだけじゃない」
私A「……だって飲むしかないんでしょ……でも5年も飲むなんてイヤだよ。これ以上不調になるなんて……しかもメンタルやられる人も多いみたいだし……」
私B「だーかーらー。誰も強制してないよ。医者は飲むよう言ってきてるけど、そんなにイヤなら飲まなきゃいいじゃない」
私A「……でも、飲まなきゃ再発の可能性が上がるんでしょう?」
私B「統計的には、予防薬になるから認可されてるんでしょう。でもね、飲まなくても再発しない人はしないし、そして飲んだからって、再発する人はする。これが現実」
私A「……そんなのってひどすぎる」
私B「そうだよ、ひどいよ。効くか効かないかなんて、やってみないと分からないし、もっと言えば、やったからといって、効果があったのかどうか、わからないんだよ。抗がん剤だって、同じでしょ。やっても、効果があるかどうか分からない。だから、自分でやるって決めるかどうかだけなの」
私A「……あちこち不調になるのに、効果があるかないか分からないことをやるなんて、あんまりだよ」
私B「あんまりだから、どうだっての? そんなにイヤならやめたらいいんだって!! 何回言わせるの!!」
私A「だって……飲むのもヤダだけど、飲まないのも怖いよ」
私B「あんた、いっつもそうやって迷ってるよね。お母さんの治療法だって、手術にするか化学療法にするか、決めるまでにどれだけ行ったり来たりしたの。ごちゃごちゃ言ってないで決めろって!」
私A「決めろ決めろって、ランチのA定食選ぶかB定食選ぶかみたいに、簡単に言わないで。おいしくなかった、じゃ、すまされないんだからね!」
私B「すまされなくても、選ぶしかないんだよ!」
私A「うるさいっ! だまれっ! 嫌なものは嫌だっつってんだよ!」
二律背反した自分の思考が、互いに唾を飛ばして怒鳴り合っていました。
同時にふたつの考えが「綱引き」しているような苦しみの正体が、後々わかります。正体が分かれば、対処の仕方も見えてきます。
私と同じクセを持つ方、今後、詳しく書きますので、またその時にお会いしましょう。