矢寺圭太 『ぽんこつポン子』 第8巻 : 大切な人との〈大切な時間〉
書評:矢寺圭太『ぽんこつポン子』第8巻(ビッグコミックス・小学館)
本巻の後半は、いよいよ終幕の近きを感じさせる展開となっている。ポン子の臨死的な故障からの復旧に続いて、今度はゲンジが病いに倒れるところで、次巻に続く。
このままゲンジが死ぬという展開はあり得ないから、その心配はないけれど、しかし、作者がいたずらにこうした展開を弄ぶとも思えないので、いずれにしろ、終幕へ向けての急展開であろう事実に変わりはないだろう。
もちろん、ポン子ファンなら、ポン子とゲンジの愉快であたたかな生活がいつまでも続くことを願わない者はいないのだけれど、物語はいつか閉じられなければならない。
かつての大人気マンガのように、人気があるからやめられなくなってしまい、だらだらと延命的に物語が引き延ばされるという悲劇は、本作のような明確なテーマを持った作品には不似合いだろう。だから、テーマに即した、何らかの決着はつけられなければならない。
それは、「このままで」と望む読者の欲望に抗ってでも、ゲンジの亡き妻・千秋からポン子が託された使命を果たすためにも、必要なことなのではないだろうか。
どんなかたちであろうと、大切な人との別れはつらい。
けれども、その別れが、読者に何らかの勇気を与えてくれるものであることを、私は「ポン子とゲンジ」の物語に期待したい。完結することで、読者の心に残り続ける作品になることを期待している。
初出:2020年12月28日「Amazonレビュー」
(2021年10月15日、管理者により削除)
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