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2023年2月23日 22:17
最近の楽しみのひとつは、お弁当を作ることである。だいたい9品目の食材が入っている。例えば、白米、肉じゃが(じゃがいも、玉ねぎ、豚肉の3品目)玉子焼き、ウインナー、ブロッコリー、プチトマト、キュウリなど、すごく簡単、簡素なお弁当だ。 人の三大欲の中でも、食欲は最大のものかもしれない。性欲は卒業してしまったし、いつまでも寝ていられた睡眠欲も、このところ12時を過ぎて無理やり眠る感じだ。身体を酷
2023年1月19日 14:29
新しい朝が来た 希望の朝だ… 無理やりに、朝の憂鬱を吹き飛すよう口ずさんでみる。夜勤入りの今日は、目覚めがいつも以上に辛い。今日も、何度、防護服を脱ぎ着したらいいのだろう。 今朝の夢は、ベランダに洗濯物や植木がたくさん散らかっている光景だった。他に、たくさんのなめくじがいる場面もあった。ネットの夢占いで検索すると、どちらもストレスが溜まっている、そう書かれてあった。 とりあえず、朝のコー
2021年11月11日 01:15
まだ、コロナの影が露ほどもなかった頃の事。患者のAさんの元に、ご主人が毎日面会に来られていた。Aさんは六十歳前半の認知症の方。でも、トイレも着替えも食事も自立されており、童顔で可愛いらしい女性だった。 Aさんは病気のせいもあって感情的になることも多く、ご主人の面会が遅いと携帯電話でヒステリックに叫んでいた。「何で来ないの!早く来い!」そして「バカにすんな!」それが彼女の口癖。 ご主人は、
2021年10月4日 23:23
10月だというのに、昼間の日差しは真夏並みに鋭い。ベランダに置いている鉢植えを日陰に移動したのは、新芽が熱さで枯れかけていたから。早く気付いてあげれなくてごめんね。 病棟移動して環境がころりと変わった。新しいスタッフ、知らない患者さん、やり方が違う仕事内容。覚えることが多くて大変なんだ。移動前日は初めてのおつかいか?それくらい緊張して眠れなかった。でも、蓋を開けるとそれほどストレスを感じない
2021年9月26日 22:43
もっと早くあなたに出逢っていたら、曇りのない瞳で、全てを信じることが出来たのでしょうか? がむしゃらに突き進んで、傷つき、傷つけられた心は、違う、違う、そうじゃない!と必死に叫び声をあげるのです。 愛すること、愛されること、そばにいること、見守ること。人によって求める姿が違うのだと、もう知ってしまったから。 ただ、まっすぐに愛することを、こんなにも熱く語るあなたが眩しくて。その愛を受
2021年7月7日 02:16
ホール兼食堂に行くと夕食を待っている患者さんで溢れていた。食事カートを周りにぶつけないように運ぶ。窓の外には、垂れ込めた灰色の雲が山々を覆っているのが見える。夜勤入り、今日の勤務は始まったばかりだ。 食事カートの扉を開けると右側が温かいもの左側は冷たいものと、ひとつのトレイで食事の温度が違う。引き出す時、時味噌汁がこぼれないように気をつけて配膳する。その様子を見ている患者さんの視線は、早く持
2021年5月19日 00:59
家の前に流れる川が昨夜の豪雨で渦を巻いている。水量は2倍以上にも膨れ上がり、泥水と土手から剥ぎ取られた葉っぱが絡み合いながら先を急ぐ。灯りを消して目を閉じると、意識は遠く知らない場所へと流されていく。 「ひとごろし〜!!」・・・自分の叫び声が寝室に響き渡る。隣の部屋の人に聞こえなかっただろうか?心配になり耳を澄ますが物音は聞こえない。バイクを降りた男がハサミを握りしめ私を見ている夢を見た。そ
2020年12月22日 20:21
これで三回目の挨拶。「おはようございます」病棟に入るとニイナさんが挨拶をしてくれる。病棟で会う度何度でも挨拶をするのが彼女の習慣。お昼には「こんにちは」何度でも何度でも。グルグル歩き回るのは散歩なのか、頭の中を空っぽにしたいからなのか。ニイナさんは毎日病棟内を歩いている。控えめで人とのトラブルもない彼女。職員は好むと好まぬと関わらず、手のかかる患者さんと対峙する事が
2020年12月11日 22:46
「煙突がない家にはサンタクロースは入れないんだよ。それに我が家はキリスト教じゃ無いから来ないのよ」昭和40年代田舎町に住む私は、母にそう言われて12月24日を迎えていた。 それでも日頃食べられないホールのケーキにジュース、お菓子の山を貰って、ホクホクのクリスマスを迎えていた。おもちゃ?そんなの無かった。欲しい物は年明けのお年玉で買えたし、ゲーム機など無い時代、せいぜいサンリオの《いちご新聞》
2020年11月24日 23:36
上品な言葉がほろり「ありがとうございます」「貴女も忙しいでしょうけど、お身体に気をつけてね」いつも相手を気遣う言葉を発する人。今はもう、記憶が曖昧で、認知症と診断された人。 70代の齢のアイさんは若い頃、都会で雑誌の編集に携わっていたという。英語も堪能で(私が英語を喋れず会話する機会がないのが口惜しい!)海外の雑誌記者とも交流があったらしい。「あの頃は面白かったわよ」昔の記憶がいっとう鮮やか
2020年11月2日 00:05
もう15年以上も前になるだろう。私がデイサービスに勤めていた頃の話。チヨさんは80代。ぼんやり明るさを認識できるだけの中途視力障害の方。 「待ってたのよ〜今日は遅かったのね!」 花が咲き誇る庭を通り、玄関を開けたら、光沢のあるシルバーのショートカット姿のチヨさんの顔がみえる。手には青い巾着袋を持っていて、その中身はデイサービスの手帳と、ハンカチ、ちり紙、押すと声で時刻を教えてくれる