トラブルプロジェクトのノウハウは、「何故」伝承されないのか?
これまで、「プロジェクトトラブルを防ぐには」という観点で、いろいろな取り組み施策について考察してきました。しかしながら、未だに無くなることなく、「少なくなっている」と言えるのかも疑問な状況ではないでしょうか。そこで、「それは何故なのか」、「何故無くならないのか」ということについて、改めて考察したいと思います。
システム構築プロジェクトは、結局「人(個々人)」の対応であり、人と人の関係で成り立っていること。そして、その人の「知見」が成否に大いに関係すると言えるでしょう。
トラブルプロジェクトを経験した「人」は、間違いなく「トラブル対処・回避ノウハウ」を習得し、事前対処を徹底することでしょう。ただ、中には、例外的(?)に「同じ轍を踏む」人もいることもありますが。(あいつがプロジェクトに入ると、必ずと言ってもいいほど「トラブルよな」という経験があるのでは?)
しかしながら、人は歳を取り(世代交代もあり)、いずれその会社を去り、その人が持っていた「トラブル対処・回避ノウハウ」は消えていきます。
だからこそ、人は後に残そうとして、自身の「背中を見せること」や「記録として残す」などし、「教材」として継承化する努力をしてきました。そうしたノウハウが完全に継承されれば、トラブルは減少し消失していくはずですが、実際そうはなっていないのが現実です。
それは、その人の行動様式までを、完全にコピー(継承)することは出来ませんし、そうは「しない」というのも「人の性」だからかもしれません。
こうした「人の本質(性)」を認識した上での、対策が重要なのではないかと考えています。
1.継承されない、しない要因
過去に失敗した事例があるハズなのに、また同じ様な失敗が繰り返される(無くならない、無くせない)のは、何故でしょうか?
このような傾向に対し、もちろん何もしてこなかった訳ではありません。
といったことが実践されてきことは、ご承知の通りです。しかしながら、その実態はどうだったのでしょうか。
プロジェクトに取り入れ、活かすということよりも、形式的(アリバイ作り)、その場限りの対応で済ませてきていたのではないでしょうか。その結果が、「トラブルが減らない、なくならない要因」と言っても過言ではないかもしれません。
2.必要となる取り組み
「過去の失敗を自分事として捉えろ」「俯瞰的、多面的にものを見ろ」と言っても、一朝一夕で実践できることではありません。如何に、組織的な仕組みや、フォロー体制を造り、会社として「個々人の性格や考え方、行動様式を変革していくこと」が継続的実践出来るかに掛かっているかと思います。
*1:トラブル要因の実体験・実態感
マネージャー(幹部社員)やプロジェクトリーダー資格として、「トラブル経験者または、収斂経験者(トラブルを収めた人)」であることに越したことはありませんが、トラブルに対峙したことが無いという人に資格が無いということではありません。トラブル未経験者を含め、幹部候補者には「これまでの取り組み方」や「トラブル発生要因に対する認識」などについて、レポーティング(教えるだけでなく、自身の考え方を発信)してもらうというような取り組みが必要だと考えています。
以上、プロジェクトトラブルの防止には、「人の本質(性)」に関わる観点からの対応が不可欠であろうと考えます。
システム構築においては、「完全にAI化、ノーコード化、ローコード化」が進展したとしても、その大元には「人」が介在せざるを得ないと考えると、やはり永遠にプロジェクトトラブルは無くならないと考えておくべきなのだと考えています。
何にせよ、「人が介在する以上」、トラブル対応への取り組みは、永遠の課題なのかもしれません。