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弱おじの本棚

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2023年9月の記事一覧

息苦しさの中でも生き苦しさの中でも、息して生きていようと思えた。〜「息」を読んで〜

息苦しさの中でも生き苦しさの中でも、息して生きていようと思えた。〜「息」を読んで〜

小池水音さんの「息」を読んだ。

テーマは暗い。
登場人物は皆苦しみを抱えて、ハッピーな息遣いは聞こえてこない。

けれど、読後に残るのは、今生きていることへの感謝だ。
当たり前に息をして生きていられることの奇跡を、改めて感じさせてくれる。

人との繋がりも然りだ。
人はいつか死ぬ。
私も死ぬし、妻も死ぬし、両親も死ぬ。
それはいつになるかわからないし、どんな順番になるのかもわからない。その時にど

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気の合う友を大切にしたい。〜「墨のゆらめき」を読んで〜

気の合う友を大切にしたい。〜「墨のゆらめき」を読んで〜

三浦しをんさんの「墨のゆらめき」を読んだ。

真面目なホテルマンと天才肌の書道家のバディものだ。
この二人の関係がすごく心地よい。

私は友達が少ない。
でも、それでいいと思う。
気の合う大切な存在を大切にしていけたらいい。友達の多さが人生の豊かさと直結するわけじゃない。

気の合う仲間と飯を食い、酒を飲む。
競馬をしたり、くだらない話で時間を無駄にしたり。

そんな日々こそが尊い。
当たり前すぎ

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ぶっ飛んでいるのに共感できるのは、きっと私もぶっ飛んでいるから。 〜「丸の内魔法少女ミラクリーナ」を読みました〜

ぶっ飛んでいるのに共感できるのは、きっと私もぶっ飛んでいるから。 〜「丸の内魔法少女ミラクリーナ」を読みました〜

妻の本棚から、一冊の小説を借りた。

「その小説、あんまり面白くなかったよ。」

小説を読むのには時間がかかる。
面白くないと定義づけられた物語を読むことに、時間を費やすのも癪だ。

だが不思議と、私のページを捲る手は止まることなく、最後の1ページまでを捲り続けた。

感性の違いだろうか。
確かに、好き嫌いが分かれる小説だろうなとは感じた。
私は明らかに好きな側の人間なのだけど。

4編の短編が収

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本っていいよね。お夜食もいいよね。〜「図書館のお夜食」を読みました〜

本っていいよね。お夜食もいいよね。〜「図書館のお夜食」を読みました〜

原田ひ香さんの「図書館のお夜食」を読んだ。

とても暖かい本だった。
優しさに包まれた本だった。

図書館っていいよなって、改めて思う。

色んな本がある。
それを読む人、書いた人、それぞれに色んな人生がある。

ある人が本を読み、そこにインスピレーションを受けて本を書き、誰かが本を読む。
そうして物語と世界は紡がれていく。

この本を読んだことが、私の人生にどう影響を与えるのだろうか。
影響を与

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小説の楽しみ方は一つじゃないし、人生の楽しみ方もまた、一つではない 〜「世界でいちばん透きとおった物語」〜

小説の楽しみ方は一つじゃないし、人生の楽しみ方もまた、一つではない 〜「世界でいちばん透きとおった物語」〜

杉井光さんの「世界でいちばん透きとおった物語」を読んだ。

驚かされた。
感動した。

こんな小説があるんだ。
こんな方法もあるんだ。

どうしても人は既成の価値観にとらわれてしまう。
そこに柔軟性を持ち込んで、視野を広げてみるときっと人生は楽しくなる。

読んでよかった。
世界が広がった。
タイトルの通り、僕の視界も透き通ったかもしれない。

手法だけじゃない。
端々の言葉遣いもとても美しい。

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全員が殺人鬼に思えてしまえて面白い 〜「レモンと殺人鬼」を読みました〜

全員が殺人鬼に思えてしまえて面白い 〜「レモンと殺人鬼」を読みました〜

くわがきあゆさんの「レモンと殺人鬼」を読んだ。

登場人物が皆んなどこかおかしい。
端的に言うとヤバい。
だから全員が疑わしくなって、どんどん楽しくなっていく。
ページを捲る手が止まらない。

特に後半で主人公のキャラが一変していく様が印象的だ。
虐げられるものから、虐げるものへ。
腹を括り、開き直ってしまった人間の怖さを改めて感じた。

誰しもが苦しみを抱えて生きている、わけではないのかもしれな

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みんな誰かに苛つきながら生きている 〜「おいしいごはんが食べられますように」を読みました〜

みんな誰かに苛つきながら生きている 〜「おいしいごはんが食べられますように」を読みました〜

高瀬隼子さんの「おいしいごはんが食べられますように」を読んだ。

主に職場の人間関係をテーマにした小説だが、「わかる〜」と唸りながら読んでしまった。
とても人気な小説であることから、現代の人々が同じようなフラストレーションを感じながら生きていることがわかる。

弱い人間は配慮される。
なんだか守ってあげたくなる人っている。
そんな人が憎い。
特に努力して努力して、甘えなんて許せないタイプの人には。

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積み重なった愛の尊さを思い出させてくれる一冊 〜「アナログ」を読みました〜

積み重なった愛の尊さを思い出させてくれる一冊 〜「アナログ」を読みました〜

ビートたけしさんの「アナログ」を読んだ。

映画化される程の純愛ストーリーで、読んでいて心が洗われた。

爆笑問題の太田さんが書評を書いていた。
この物語は恋愛小説ではなく、母への愛がテーマだと。

確かに、この小説を一言で恋愛小説と括ることはできない。
母への愛であり、恋人への愛であり、仕事への愛であり、友人への愛であり。
さらに言えば、こちらからベクトルが伸びた愛だけではなく、こちら側へと向け

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