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ご使用感謝!「みんなのフォトギャラリー」にアップした画像が使用された記事です。「みんなのフォトギャラリーでmirecatで検索すると共有した画像の一覧が出ます。共有されていない画…
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#ショートショート

「みんなのフォトギャラリー」ご使用感謝!

「みんなのフォトギャラリー」で共有した画像を見出し画像に使用してくださる方が少しづつ増えてきました。 そこで使用された記事をまとめた新しいマガジンを作りました。 使用される画像はCanvaで素材とハングル文字を組ませて作った見出し画像が多いですね。最近ではMidjourneyで自動生成したイラストも上げているので、そちらも使われるようになりました。 AIイラストは1枚絵の他、4枚のグリッド絵もアップしています。 こんな感じですね。 これはそのままのサイズで使うとだい

鏡筆のショートショート「脳のなか」

待たされることが平気な人は、いつもよく考えている人といつもあまり考えていない人である。

スマホ「赤紙」

雨宿りのために、高校生がバス停に駆け込む。マウンテンバイクを横倒しにしたまま、雨の鞭に叩かれて。先客が一人、ベンチの端に腰掛けている。お腹の大きな、美しい女性だ。両手で膨らんだお腹をいたわるように抱いている。手にはケータイを持ち、画面をじっと見つめている。誰かを待っているのか、見送ったあとなのか、分からない。高校生は、海から上がった小型犬のようにブルブル髪の水滴を払い除ける。 妊婦の足元にはビニール傘が倒れている。少しも気にせず、彼女はケータイ画面から目を離さない。ちらっと

お礼状と鶏の煮込み [ショートショート]

台所から漂う鶏の煮込みの香りが、私の部屋まで届く。母が作る定番の肉じゃがの匂いだ。 パソコンの画面には、まだ未送信のメールが開かれたままになっている。文学賞への応募作品が選考から漏れた旨を伝える通知が、今朝届いていた。お礼の返信を書こうとして、もう二時間が経っている。 「夕ご飯ができたわよ」 母の声が階段を登ってくる。私は「はーい」と答える。メールの下書きには、たった一行「ご検討ありがとうございました。」としか書かれていない。 机の上には、三ヶ月かけて書き上げた原稿の

沈む寺 #毎週ショートショートnote

「はじまりは、寺だった」 老人が遠い記憶を思い出すように話し出した。 「なんの前触れもなく日本各地の寺が沈み、静かに地面に消えていった」 「どうして?」 少年が聞く。 「それが全くわからない。沈んだ場所を掘り起こしたが、本当に消えてしまったように何も出てこなかった。だから人々は、困惑しながらも新たに地上に寺を建て始めた」 「今ある建物って、全部そうなの?」 「ほとんどがそうだ。寺の次に沈んだのは学校だった。その次は公園、神社、文化施設…数年から数十年おきに起こる

最高級のランドセル−たった1分で読める1分小説−

「今のランドセルは凄いな」  ランドセル売り場で、隆信がキョロキョロする。今日は来年小学生になる娘のために、家族でランドセルを買いにきた。 「こんなに何色もあるのか。俺の子供の時なんて、男の子は黒で、女の子は赤ぐらいしかなかったぞ」  妻がクスリと笑う。 「いつの話してるのよ」  子供がランドセルを持ってきた。 「ねえ、これが欲しい」 「えっ、こんなに高いの。さすがにこれは無理よ。安いのにしなさい」  妻が目を丸くする。最高級のランドセルだ。 「いいよ。これにしよう」

BFC6 二次通過作品『とり、かえす』

 むやみやたらに歩き続けていた。息があらくなって勢いがなくなってきた足の運びにいらついて、近くに転がっていたペットボトルを思いっきり蹴り飛ばした。ふいに、見てはいけないものを見たような気がした。くすんだ銀色の和式便器が雨ざらしになっていた。  公園の片すみにあったはずのトイレの建物はあとかたもなく、ただくすんだ銀色の和式便器だけが、あったままの状態で放置されているのだった。見回せば、入り口付近の足元を固めていた石のタイルは中途半端に引っぺがされ、S字型コンクリートに区切られ

【ショートショート】猛毒

執行人は男の前に一錠のカプセルを置いた。 「これより刑を執行する。これは最先端の毒薬だ。非常に猛毒だが、直ぐには効かない。飲んだ本人が幸せや安心を感じると毒が回り、この上なく幸せだと感じると死に至る。」 男は震える手で錠剤をつまみ上げ、喉奥に放った。 「これで刑は完了だ。出てもいい。ただ一つ、どうしても辛抱ならなかったら、解毒薬を渡すから来なさい。」 執行人は顔色変えず男を見送った。 男は困窮した。幸せになってはならぬのだから。 安心すら毒になる。おちおちと食事も出来

睡眠サロンΔ(デルタ)【架空未来日記1】

 8時間続けて眠るのはいつぶりだろう。会社に勤め始めてからはほぼ毎日2時間睡眠だったので、そう考えると約5年ぶりだろうか。とはいっても学生のころから急速睡眠装置を使っていたから、ひょっとすると10年ぶりくらいかもしれない。  控室で“砂抜き”を待つ間、私はこうして日記を書くことにした。明日目覚めたとき、私はこの日記を読んで自分の変化を実感するだろうか。それとも何もかわらない?ともかく、寝室に雑念を持ち込まないためにも、思いつくことを脈絡なく書き付けていこうと思う。  この睡眠

バンドを組む残像【毎週ショートショートnote】

高校に入ってすぐ、クラスの後ろの席になったお前と、好きなバンドの話で盛り上がったよな。 「えっ、お前も『summer sweets』好きなの?」 「そりゃもう。あんな音を鳴らしたいって思ったから、ギターも買ったし、ずっと練習してるんだ」 「じゃあさ、軽音楽部で一緒にバンドを組んでさ、サマスイのコピー演ろうよ!」 「……おお、そりゃいいな。俺もサマスイ演りたかったんだ」 そうやって二人、初対面とは思えないくらい打ち解けて、バンドを組む約束までしたんだよな。 ……なのにさ。

たまり席【ショートショート】

 宵野明美は、ふと思いたって参道寺商店街に行った。昔から存在は知っていたが、実際に行くのは初めてだ。70歳になって、昭和の景色を見たくなったのかもしれない。  地下鉄の駅を降りて、目的地に向かう。途中、古民家や気になる路地を見つけて、明美はときめいた。時間があったら、あとで寄ろう。  商店街は、古いお店と新しくきれいなお店が混在していた。すれ違う人は若者と外国人ばかりで、なんだか観光地にきたみたい。  若返ったテンションのまま歩いた明美は、足の疲れと空腹を感じた。お洒落

【ショートショート】Darker and darker.

 夜、旅の僧が一人大きな木の袂に座り瞑想に耽っていると女に声が聞こえてきた。僧は修業の身、煩悩は打ち払わなくてはならない。しかし、美しい声だった。声だけ聞こえる。暑い夏の日に首筋を伝う冷たい水のような、恐ろしくも心地よい声。  僧は堪らず声を漏らした。 「どうすれば貴女を見ることができますか」  瞑っていた目を開けても一寸先も目ないほど夜の闇は深い。その闇からあの声だけが漂ってくる。 「目玉を1つ頂ければ」  僧は持っていた独鈷で目を抉り、声のする方へ投げた。  しばらく

小説【278字】エンブレムの迷宮

『エンブレムの迷宮』 都心の古道具屋。 不思議なエンブレムを見つける。 触れた瞬間、世界が歪む。 目覚めると、私は探偵。 依頼内容は、本当の自分を探せ。 街中に散らばる謎のエンブレム。 一つずつ解くたび、記憶が蘇る。 でも、それは知らない私の記憶。 やがて、最後のエンブレムへ。 そこで見たのは、無数の私。 皆、異なる人生を歩んでいる。 「本当の私はどれ?」 問いかけると、全てのエンブレムが光る。 目眩とともに意識が遠のく。 目覚めると元の古道具屋。 手には一冊の日記

アンディ【ショートショート】

   入院病棟の、ナースステーションに近い個室は、重病の患者が入る。一秒でも早く、駆けつけるためだ。認知症などで、目が離せない人もいる。 9号室の男性は、後者だった。  部屋入口のネームプレートに『ご利用者様』とある。 路上で倒れていたところを運び込まれ、自分の名前も住所も覚えていない。 唯一の持ち物は、空っぽのトートバッグだけだった。  「おはようございます。清掃に入ります」 清掃員の明美は、いつものようにモップで床を拭いていた。  70歳になったばかりの明美は、この