刺身

平成生まれ25歳社会人。掌編小説に魅せられ憧れてちょっぴりSFな世界を描いてみます。良かったら見てってください。 20240724運用開始。

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最近の記事

【ショートショート】犯行予告

きのう犯行予告を見た。 ちょうど夜8時くらい。テスト前日、休憩でネットを 見ていたところだった。 内容は明日の昼2時、うちの学校を爆破するという内容。人気のない掲示板に載っていたそれには、誰もレスポンスが無く、独り言状態。 「明日の2時って、テストの時間じゃん。よほどテスト嫌な奴が書いたのかな」 単純に考えるとそうだろう。こんなベタな犯行予告なんて、テレビドラマか映画くらいでしか見たことがない。さらにそれが自分の学校なんて、ばかばかしい でも本当だったら? ifの考えが浮

    • 【ショートショート】宝石

      とある小さい街で、宝石展が開かれた。 ビルひとつない寂れた街だったので、数年に1度の大イベントだった。 その宝石展では世界にひとつの大宝玉が展示されるという情報が入った。 名前は「ナイトダイヤモンド」 なんとも不思議な宝石で、水よりも澄み、昼夜で見え方が異なるそうだ。 人々は宝石展に殺到した。入場料は決して安くはなかったが、寂れた世の中にとってその宝石を見ることは人々の希望となった。 ナイトダイヤモンドは少しでも光が当たると変容してしまう。そのため展示は厳重で、黒く分厚い

      • 【ショートショート】猛毒

        執行人は男の前に一錠のカプセルを置いた。 「これより刑を執行する。これは最先端の毒薬だ。非常に猛毒だが、直ぐには効かない。飲んだ本人が幸せや安心を感じると毒が回り、この上なく幸せだと感じると死に至る。」 男は震える手で錠剤をつまみ上げ、喉奥に放った。 「これで刑は完了だ。出てもいい。ただ一つ、どうしても辛抱ならなかったら、解毒薬を渡すから来なさい。」 執行人は顔色変えず男を見送った。 男は困窮した。幸せになってはならぬのだから。 安心すら毒になる。おちおちと食事も出来

        • 【ショートショート】顔

          深夜1:30頃。 突如としてテレビに映されたそのコマーシャルは たった10秒、森の背景に「顔」の一文字。 しゃがれた声の老人で構成された、 全体的にノイズがかかった、古めかしい映像。 真夜中の放送にもかかわらず強烈な印象を与え、 たちまち話題になった。 「なぁ篠崎。昨日あれ見た?『顔』ってやつ」 翌日嬉々として笑顔で話してきたのは同期の西山。 仕事熱心で昔から何にでも興味が湧くタイプだ。 「ああ見たよ。くっだらねぇよな。」 「でもなんか惹き付けられるっていうか、ちょっと面

          次は何書こう

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          【ショートショート】ザラメ

          家の近くにパン屋ができた。 仕事帰りに寄って、クロワッサンを1つ購入した。 外はサクサク、中はふわふわ。理想的なクロワッサンだった。上にはこの店の特徴だろうか、ザラメが輝いている。甘さと香ばしさが絶妙にマッチしていた。 僕の行きつけになった。 パン屋はたちまち人気店になった。 ある日の午後、パン屋を訪れると、見知らぬ女性が働いていた。風になびく短い髪に、白いシャツが映えた。たちまち僕は彼女の虜になってしまった。 「こんにちは。クロワッサンですよね。」 いつしか彼女は僕

          【ショートショート】ザラメ

          【ショートショート】もしもの話

          「もしもさ、明日地球が滅ぶとしたら、お前何する?」 「え、なに。急に。」 「や、ちょっと聞いてみたくて。」 「ベタすぎね?」 「えええーベタでいいじゃん。ほら、何するよ。」 「えー。あー。なんだろうな。お前なら?」 「めっちゃ寿司食う!」 「馬鹿すぎね?」 「最高じゃん?最後は好きなもの食いたいでしょ」 「そういうもんか」 「そういうもんだよ」 「俺はなんだろうな。誰かと笑ってられたらそれでいいかな。」 「え、」 「なんだよ」 「いやなんかお前らし

          【ショートショート】もしもの話

          【ショートショート】タスクマネジメント

          「まァたお前か!新島!ちょっと来い!」 オフィスに田宮部長の怒号が響いた。 今日も長い説教が始まる。 新島は入社5年目。 はっきりいって、仕事ができない男だった。 仕事をしていない訳では無いのだが、優先順位が苦手で、何かと無駄な作業ばかりやる癖があるのだ。 30分ほど"ありがたいお言葉"を聞き、項垂れるように廊下に出ると、同期の牧本が声を掛けた。 「まーたやってんのかァ。お前も飽きないねェ?」 「馬鹿、こっちは好きでやってるんじゃねぇよ。」 「ははは。そうかよ。今日も一

          【ショートショート】タスクマネジメント

          【短編】自己紹介

          はじめまして。 よろしくお願いします。 「           」といいます。 歳は今年で25になります。 今は会社員をしています。 すこしだけ、3分だけ時間をください。 自己紹介をさせてください。 今は飲み会の帰り道。 久しぶりの飲み会でした。 とはいえ、同僚はいませんでした。 お恥ずかしながら、彼女はいません。 なんでも難しく考えてしまう性格なので、半ば諦めてるのかもしれません。   え?そんなことはどうでもいい?   まぁ、いいじゃないですか。あと少しだ

          【短編】自己紹介

          【ショートショート】嫌い

          料理が嫌いだ。 いや、食べるのは好きなんだ。 食欲は強いほうだ。好物はオムライス。 子供みたいだと自分でも思うが、昔から変わらなかった。 最近はスーパーの半額弁当ばかり食べていた。 あそこのスーパーはいつも同じ弁当ばかり残る。 おかげでいつも同じ弁当ばかり食べていた訳で、 自称美食家の俺はさすがに飽きてきた。 もっと美味いもんが食いたい。 払える物も残っちゃいないが。 やはり料理は嫌いだ。 滑る指でページをめくる。 仕事帰りに近くの古本屋に立ち寄った。 数年ぶりかな

          【ショートショート】嫌い

          【ショートショート】吾輩は

          吾輩は猫である。名前はまだない。 確か夏目漱石?だったっけ。 頭が無さすぎてこれくらいしか思い出せない。 もう少し勉強しておけば良かった。 まぁ今更遅いか。 そう思って大きな欠伸をひとつ。 俺は「猫」らしい。 気がついたのは今日の朝のことだ。 目が覚めるとやけに体が軽い。やけに柔らかく、やけに体が伸びるようになっていた。安月給のオンボロアパートには洗面台はおろか鏡すらない。顔が確認出来れば何よりなのだが。ただ視界には、どう見ても昨日までの手とは違う、可愛げのある猫の

          【ショートショート】吾輩は