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最高級のランドセル−たった1分で読める1分小説−

「今のランドセルは凄いな」
 ランドセル売り場で、隆信がキョロキョロする。今日は来年小学生になる娘のために、家族でランドセルを買いにきた。

「こんなに何色もあるのか。俺の子供の時なんて、男の子は黒で、女の子は赤ぐらいしかなかったぞ」
 妻がクスリと笑う。
「いつの話してるのよ」

 子供がランドセルを持ってきた。
「ねえ、これが欲しい」
「えっ、こんなに高いの。さすがにこれは無理よ。安いのにしなさい」
 妻が目を丸くする。最高級のランドセルだ。

「いいよ。これにしよう」
「あなた、いいの?」
「ああ、これAI搭載で話せるそうだ。防犯機能が優れていて、『お子様とご家庭の安全を守ります』ってキャッチコピーが気に入ったよ」

 そして子供が小学校に通い出した。ランドセルは使い勝手がよく、子供は毎日楽しそうだった。高かったが買ってよかった、と隆信も満足した。

 そんなある日、隆信は部下の女性と二人きりで食事をした。前から彼女を狙っていた。
 この後はホテルでも……下心をふくらませてトイレに行くと、
「ホテルはダメです」
 そこに子供のランドセルがいて、隆信は驚いた。

「なっ、なんでおまえが」
「パパの性欲に関する神経伝達物質が増幅したので、ドローンで飛んできました。不倫は家庭を壊します。浮気は絶対に許しません」
「……わかったよ」
 隆信は反省し、ランドセルが得意げに言った。

「私はお子様とご家庭の安全を守るランドセルです」


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