きみとめ

詩と日記、ショートショート、短い物語を書きます。 小豆と寒天が好きです。

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最近の記事

ともしび

お昼ま担当の… おシモ洗いますね… おだいじにしてください 彼女らは髪をお団子にして白いシーツの海を泳ぎつづける どうしました? どうしました? ナースコールの音に息つぎもできない 遅い 下手くそだね 頼んでないよ キャンドルの火が揺らぐナイチンゲールたち ある時 小さなおばあちゃんが 「ありがとうね」とささやいた 紫陽花のような笑顔で そのひとひら 視界に色がついた あのおばあちゃん、かわいいね あのおじいちゃん、やさしいね 「ありがとう」の言葉は、火を灯

    • ああ好きだな【日記】

      この人、好きだな。 って思う人に時々会う。 今日そう思った人は、とても一生懸命なんだけど、空回りしちゃっている人。 あと、カバンの中を必死で何か探している人。 それから、お店のレジで買ったものを置いていっちゃう人。 電車の中で、席を譲ろうかどうしようか悩んでいる人。 他人が聞いているのを意識して自分の子どもに話しかける人。 ギリギリで入った映画館で前のほうの席しか空いていなくて、背が低いのであまり影響ないのに、中腰でくの字で歩く人。 知り合いのように話しかけてく

      • かまわない

        きみの観察日誌 読んだよ 何を思ったか どんな気持ちになったか 心がどんなふうに 動いたか 自分をよく 観察できている 4日と6日、それから12日 ここの頁は 破り棄ててね 「欲」 と 「心配」 に 染まっているから うん 棄てちゃって いいよ その心の動きは もう かまわないで いいから

        • 僕の夢【140字】

          「勉強しないと、寅さんみたいになっちゃうよ」近所の母親が子どもを叱って、さくらが泣く。「お兄ちゃん、何にも悪いことしてないのに!」風の吹くまま気の向くままよ。寅さんみたいになれるなら、僕、勉強しない。言いたいこと言って喧嘩して。恋をしてスキップして。最後はリリーさんと暮らすんだ。

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        • 自作の詩
          13本
        • 自作のショートストーリー
          10本
        • 日記
          7本
        • きみとめ文庫
          13本
        • 自作のお話
          9本

        記事

          創作は楽しい!を武井武雄展で実感した。

          名古屋駅から電車とバスを乗り継いで約40分。 愛知県の一宮市三岸節子記念美術館に行ってきた。 「生誕130年 武井武雄展~幻想の世界へようこそ~」2024.10.12~11.24 洋画家を目指していた武井武雄(1894~1983)は27歳の時、絵雑誌『子供之友』に掲載する絵の依頼を受ける。 アルバイト気分であったが、子どもの魂に触れるようなもの、精神的な感動を引き起こすものがないことに気づき、童画家になる。 『コドモノクニ』『キンダーブック』などに多くの素晴らしい童画を

          創作は楽しい!を武井武雄展で実感した。

          散歩【日記】

          散歩【日記】

          契約【ショートストーリー】

          「話ってなんだろう」 「なんでしょうね」 看護助手になって三ヶ月の春子は、三年めの夏子先輩と会議室へ向かった。 夏子先輩は、いつも相談にのってくれて仕事もできる一番信頼している人だ。 総合病院の会議室は、大勢の助手たちでざわついていた。 委託本社の三人が入ってきて静かになった。 ひとりが短く形式的な挨拶をしたあと直ぐに本題に入る。 「えー、うちはこの病院から手をひくことになりました。 皆様はこのままこちらで同じように働くことができます。 その場合は新しい会社に転籍する

          契約【ショートストーリー】

          封印【詩】

          閉じこめた記憶は 消えていない いつまでたっても いつまでまっても だれか助けて だれもさわらないで だれか抱きしめて 安心できる場所はどこ 安心できる人はだれ 逃げる 逃げる 逃げる さがす さがす さがす いつまで? いつまで 記憶に操られるの? 封印を解いて 手綱をもて きみが きみの主人になれ もう 逃げなくていい 探さなくていい きみは きみになる じぶんで 解くんだよ

          封印【詩】

          知っている【詩】

          それとも君は 水面に映る月も 月だというのか 若さも元気も失くしたから なんだというのか 救急車の音に 耳をすますな 本に頼るな 「椿」という字は 椿じゃない すべて 君のなかにある 心の耳をひらいて 無垢になれ 失くしたものは ちがうカタチで かえってくる 君は それを 知っている

          知っている【詩】

          どなたか【ショートストーリー】

           朝の電車は混んでいる。同じ車両に同じ顔ぶれ。お互いに話すこともない。 ぶつかった時だけ「あ、すみません」と声を発するぐらい。 これからも関わることはないだろう。明美は目を閉じて、心を無にする…  車両の中が、ざわざわしている。人々の視線の先を見ると、そこだけ輪ができていた。二十代の女性が倒れているようだ。 「より子、より子、大丈夫か」 連れの男が肩を抱いて、名前を呼んでいる。 「どなたか、詩人はいらっしゃいませんか!」 その男が叫んだ。 いや、そこは"お医者さん"で

          どなたか【ショートストーリー】

          旅の途中【詩】

          女は愛に疲れて眠る 夢の中では違う街で フラメンコを踊っている どちらが夢なのか さして重要ではない あなたが探しているものは あなたを探している いつでも 旅の途中 いつまで 夢の途中 愛はもう 自分の中にあると わかるまで

          旅の途中【詩】

          駆け引き【ショートショート】

          その女の顔には、 見覚えがあった。 「僕たち、どこかで会ったことありますよね」 行きつけの店? 友達の友達? 女は首をふるばかりで、 黙って微笑んでいた。 ふたりは 見つめあったことがある。 町内運動会。 僕は北町のリベンジを期待され、 先頭で綱を持った。 「オーエス、オーエス!」 南町の 先頭にいた女か!

          駆け引き【ショートショート】

          光る鹿【140字】

          王が不在な国に生まれた鹿たちは、伝説の鹿を探すため旅立った。 河を渡り、谷を越え、熱風にたえきれず脱落するものもいる。 しかし7頭の鹿たちは、目的の地に着いた。 その時、伝説の光る鹿たちが翔るのを見た。 それは、湖に映った自分たちの姿だった。 自分たちそれぞれのなかに、王は宿っていたのだ。

          光る鹿【140字】

          日記:1セント・マゼンタ

           切手蒐集家の間で、最も有名かつ貴重とされている切手が『英領ギアナ1セント・マゼンタ』である。  マゼンタ色の紙に黒のインクで帆船のイラストと、ギアナ植民地におけるラテン語のモットー「Damus Petimus Que Vicissim(与えよう、見返りをもとめて)」が印刷されている。    1856年に、現在の南アメリカのガイアナ(当時はギアナ)で発行された。 製作の背景  地元新聞紙に貼る予定だった切手を運ぶ、船がやって来ず、予定が狂った。  急場しのぎに切手を印刷す

          日記:1セント・マゼンタ

          男子中学生【140字】

          お蝶夫人に憧れた 岡ひろみに憧れて テニス部に入る勇気がなく 美術部へ入るが 部室が北側の校舎で 校庭が見えない 笑顔を思い出して描いたら 文化祭で優秀賞をとる 放課後の校庭を走る君が 市内3位 アイツすげーな 文科系と運動系 合わないか 数十年後 雨宿りに入った店にいるなんて 僕はいつでも君を探してた 雨の音

          男子中学生【140字】

          女子中学生【140字】

          お蝶夫人に憧れた 岡ひろみに憧れて テニス部へ入り 汗と砂だらけ 市内個人戦3位がせいぜい 文化祭で 木漏れ日の油絵に立ち止まる 優秀賞 アイツすごいな 運動系と文科系 合わないよね 数十年後 店にふらり現れた彼 放課後の校庭を走るだけの日々 木漏れ日だけが 浅い夢だから 胸をはなれない ふたりきり 雨が窓をうつ音

          女子中学生【140字】