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訪問リハビリの日常

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訪問リハビリをしている私が日常の仕事で感じたことを記載しています。登場人物は架空の人々です。
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#訪問リハビリ

22 訪問リハビリの日常「本当の優しさとは」

22 訪問リハビリの日常「本当の優しさとは」

先日は、佐伯さん(80代 女性)の訪問リハビリに行ってきました。

佐伯さんは3年前に脳梗塞を発症し、現在は旦那様の介護を受けながら生活されています。旦那様はとても優しい方で、佐伯さんの生活を献身的に支えていらっしゃいます。

佐伯さんは右半身に麻痺があり、主に左手で生活をされています。そのため、旦那様が「大変だから」と手助けされる場面が多く見られました。

リハビリを始めた当初は、服を着たり靴を

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23 訪問リハビリの日常「老老介護と不審な電話」

23 訪問リハビリの日常「老老介護と不審な電話」

こんにちは、訪問リハビリスタッフの春野さとみです。

訪問リハビリに伺った際、ご家族の方が不審な電話に出られていました。
今回は、その時の出来事をお話ししたいと思います。

訪問先のご夫婦はどちらも80代で、ご主人が奥様の介護をされている「労労介護」の状態です。最初はしっかりしていた旦那様も、2年、3年と年月が経つにつれて、少し気になる変化が出てきました。

私が、奥様のリハビリを行なっている最中

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21 訪問リハビリの日常 【知らされない未来】

21 訪問リハビリの日常 【知らされない未来】

訪問リハビリの現場では、さまざまなご家庭の事情に触れます。

今回は、難病のご主人を介護する80代の奥様のお話をしたいと思います。

奥様は、何年もの間、献身的に難病の旦那様の介護を続けてきました。「なるべく家で過ごしたい。」と思っている旦那様の希望で、現在はデイサービスやショートステイ、訪問診療、訪問看護、訪問リハビリ——色々なサービスを活用しながら、なんとか自宅での生活を支えてきました。

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19 訪問リハビリの日常【偶然の再会】

19 訪問リハビリの日常【偶然の再会】

先日、とても嬉しい出来事がありました。訪問リハビリを卒業した方と偶然再会をしたのです。

その方の名前は「太陽くん」。名前の通り明るく元気いっぱいの男の子。生まれつき障害を持ちながらも一生懸命成長してきた子です。太陽くんは幼い頃療育センターのリハビリを受けていましたが、成長するにつれて自分の事がある程度できるようになり、療育センターでのリハビリを卒業しました。しかし年月が経つうちに再び動きづらくな

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18 訪問リハビリの日常【みかん】

18 訪問リハビリの日常【みかん】

先日、業務後にカルテを打っていると、訪問看護師さんが声をかけてくれました。

「春野さん、これ東山さんからいただいたみかんです。東山さんが、『お世話になった人たちに。私が生きてる証拠として渡してください』ですって。東山さんがお庭で採れたみかんを分けてくれたんです。」
そう言って、訪問看護師さんが手渡してくれたのは、オレンジ色に色づいたみずみずしいみかんでした。

東山さんは、半年前に担当した訪問リ

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17 訪問リハビリの日常【見つけた!自分に合ったデイサービス】

17 訪問リハビリの日常【見つけた!自分に合ったデイサービス】

以前、書いたこの記事の続きです。

あれから数ヶ月、60代の息子様は無事に学校を卒業し、ある資格をとりました。
息子様は自分が学校に行っている間だけ、認知症のある90代の母親にデイサービスやショートステイに行ってもらおうと思っていたため、母親に今後はデイサービスやショートステイはもう行かなくて良いことを伝えました。すると母親は「デイサービスは楽しいから行くよ。家で二人で喧嘩ばっかよりよっぽど良いわ

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16 訪問リハビリの日常【押してダメなら引いてみろ】

16 訪問リハビリの日常【押してダメなら引いてみろ】

80代の男性、小西さん(仮名)の家に伺いました。
私は「こんにちは、リハビリに伺いました。」と挨拶をすると、
小西さんはいつも通り「また来たの、帰って。バイバイ。」と言い、「リハビリなんてやりたない。」と言います。訪問リハビリは毎回その会話から始まります。
小西さんはリハビリなんてやりたくないのです。
しかし、ずっと家におり、動くことが嫌い。家事は全て妻任せで、外出もしない。いつもテレビの番をして

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15 訪問リハビリの日常【嘘つき】

15 訪問リハビリの日常【嘘つき】

拒否のある方への訪問リハビリ

サービス付き高齢者住宅(サ高住)に入所している80代の山田さん(仮名)のお話です。
この方は脳梗塞後遺症、うつ病、アルツハイマー型認知症などの基礎疾患を抱えています。私が訪問リハビリで伺うとき、山田さんにはこう声をかけます。

「山田さん、こんにちは。今日も少し体調を確認させてくださいね。」
そう言って体温や血圧など、必要なバイタルチェックを行います。チェック後には

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14 訪問リハビリの日常【自分の人生を生きる】

14 訪問リハビリの日常【自分の人生を生きる】

 今回は90代のお母様と同居されている60代の息子様のお話です。

 息子様は定年退職後、一人暮らしだったお母様と一緒に暮らすことを決めました。お母様は90代と言っても体はお元気、外も一人でスタスタと歩けます。しかし、認知症があり、少しの時間お話しする程度ならば問題ないのですが、見当識障害と言って日にちが分からなかったり、ご飯を食べたことを忘れてしまったり、何年もリハビリを行なっているにも関わらず

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13 訪問リハビリの日常【老々介護】

13 訪問リハビリの日常【老々介護】

訪問リハビリで時折、目にするのが、90代の旦那様を80代の奥様が介護する「老々介護」の光景です。90代の方を70代の子どもが介護していることもあります。

90代の利用者様が「おーい、おーい。」と奥様を呼び、「ここが汚れている。」とか「腹が減った。食べ物を持ってきて。」などと奥様に伝え、奥様が持ってきた食事に対して「これじゃ無い。」と言ったり、文句を言いながら食べていることがあります。90代の利用

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11 訪問リハビリの日常【エンディングノート】

11 訪問リハビリの日常【エンディングノート】

「とても素晴らしいものを作っていただきました。本当にありがとうございます。」
私がエンディングノートをお渡ししたところ、90代の利用者さんはとても喜んでくれました。この時はとてもお元気で、特にどこか不調があると言うわけではなかったのですが、何かあった時のために、一度自分の考えをまとめ、家族に伝える手段として、エンディングノートを作成することにしたのです。自分で書くことは難しいとのことで、利用者本人

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10 訪問リハビリの日常【言葉の力】

10 訪問リハビリの日常【言葉の力】

 10年ほど前に50代で脳梗塞を発症し重度の右片麻痺になってしまった利用者様。でも利用者様はいつも前向き、「リハビリをして、もっともっと動けるようになるの。」といつも意欲的にリハビリに取り組まれています。運動メインのデイサービスにも通い、訪問リハビリも頑張っています。利き手の右手が使えず、自宅内を車椅子で移動しながら、なるべく家事もやれる範囲で自分でやっています。今のは、歩いて自宅の中を移動できる

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08 訪問リハビリの日常【最期のときの過ごし方】

08 訪問リハビリの日常【最期のときの過ごし方】

 その日は雨が降っていました。リハビリに伺うと、利用者様はベッドに腰掛けて、しとしと雨が降る庭を眺めて待っていました。挨拶をしてバイタル測定をすると、いつ通りその日も熱がありました。利用者様は「今日もちょっとえらくて、、、。マッサージを中心に行ってくれるかしら。」と私に伝えました。
 肺の病気で入院し、入院している間に体力が落ちてしまい、退院後から訪問リハビリを開始しました。退院直後は体調も良く、

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07 訪問リハビリの日常【誕生日には花束を】

07 訪問リハビリの日常【誕生日には花束を】

「定年後、妻とのんびり余生を過ごそう。」
そう思い、仕事に邁進してきたその方は、定年後すぐに交通事故に遭ってしまいました。そして、その事故の後遺症のせいで四肢麻痺と言う、手も足も全く動かせなく障害を負ってしまいました。なんとか、自分で呼吸はできるものの、言葉もうまく発することができません。その利用者様を奥さんは長年も介護されています。
 その奥様の誕生日には、毎年プレゼントが届きます。体は動かず、

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