#新潮文庫
安部公房(1991)『カンガルー・ノート』の読書感想文
大学時代、安部公房の『壁』と『砂の女』を読んで、うわさどおり、予想どおり「ああ、天才だな」と生意気にも思った記憶がある。
その勢いで、ほかの作品もどんどん読んでいけばいいのに、その当時の私は「天才であることはわかった。放っておこう!」と安部公房から離れてしまった。なぜ、そう考えたのかは、はっきりとは覚えていないのだが、心残りではあった。安部公房の天才ぶりを確かめずに、死ぬのはよくない。
という
川上弘美(2003)『ニシノユキヒコの恋と冒険』の感想
川上弘美の『ニシノユキヒコの恋と冒険』を新潮文庫で読んだ。単行本が2003年に出版され、2006年に文庫化されている。
読了して、まず思ったことは、なぜわたしの人生にニシノユキヒコは現れないのだろう、ということであった。
ニシノくんは、色男である。川上弘美は、現代の光源氏として、『源氏物語』の翻案として、『ニシノユキヒコの恋と冒険』を創造したのだと思われる。
十人の女性の目を通して、読者はニ