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映画とか本とか

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映画や本について書いた記事をまとめています。一部ドラマやアニメもあります。
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記事一覧

流転の地球 -太陽系脱出計画-

流転の地球 -太陽系脱出計画-

太陽系脱出計画……????となってしまうタイトル。『三体』の作者として中国SF好きにはおなじみの劉慈欣の短篇を原作とし、作者本人も監修として参加している中国のSF超大作映画である。

原題は「流浪地球2」。えっ?2作目なの?(2作目でした)
1作目は観ていないけれど、最近原作の短篇を読んだこともあって話の内容についていけないということはなかった。それでもおそらく1作目を知る人にしかわからないポイン

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リトル・エッラ

リトル・エッラ

マッティンに恋をしてやたら映画館に通ってしまった「ロスバンド」。Blu-rayを手に入れてからもう幾度となく家でリピートしている。そんなことをしていたので、もう2年近く経つことに気づいたときには驚いた。

クリスティアン・ロー監督の最新作「リトル・エッラ」が満を持して公開を迎えた。監督本人も来日し、トークショーやサイン会を開催していたのだが、残念ながら予定が合わず行けなかった。「ロスバンド」を観て

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海の上のピアニスト

海の上のピアニスト

社会人には時間的になかなか厳しい午前十時の映画祭、それでも名作揃いのラインナップは大変魅力的である。中でも「海の上のピアニスト」は絶対に観ると決めていたので、これを劇場で観られたのは嬉しい。

原作の書籍を読んだのはもう4年ほど前になる。図書館でふと目について借りて、どんどんその世界に引き込まれた。

船で生まれ、船で育ち、一生涯船から降りることがなかったピアニストの物語。もう発想が素晴らしい。彼

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夢を売る百貨店

夢を売る百貨店

2024年、かの有名な中国SF『三体』を読んでみるかと思い立った。それならまずは中国SFなるものを味見してみようということで、短篇集を手にとってみた。これが面白い。他の短篇集も…と手を出しているうちに『三体』が遠のく。

近所の図書館へ行き、いつものように次の本を選んでいたときのこと。中国文学コーナーを眺めて進むと、隣には韓国文学がある。好奇心には抗えず、そちらの棚も覗いてみることにした。そして目

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エドワード・ヤンの恋愛時代

エドワード・ヤンの恋愛時代

「エドワード・ヤンの恋愛時代」、以前『台湾を知るための72章』を読んだときに出てきたので気になっていた映画である。最近は殊に台湾や香港について、その歴史や映画に興味を持っている。

原題は「獨立時代(独立時代)」、台湾が中国と離れ独自の道を歩むようになって20年が経つころを舞台にしている。急成長して大都会となった台北の街で繰り広げられる男女の様々な事情を描く。時折ナレーションのように挟まれるト書き

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海の鳥・空の魚

海の鳥・空の魚

『海の鳥・空の魚』

一度何の引っかかりもなくスルッと読んで、しばらく経って「ん?」となるタイトルである。魚は海にいて、鳥は空にいるものだ。なぜ逆なのだろう。

これは鷺沢萠の短編集である。短編というのが本当に短編で、サクッと読みやすい長さと文章である。それぞれの登場人物たちが、失敗したり、落ち込んだり、上手くいかなかったりしても最後にはまた前を向いて、顔を上げて進んでいくような物語が集められてい

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Sonita Alizadeh(ソニータ・アリザデ)

Sonita Alizadeh(ソニータ・アリザデ)

衝撃的な映画を観た。

6月20日の世界難民の日にあわせて開催された上映会に参加して、『ソニータ』という映画を観た。アフガニスタンからイランへ逃れた少女の3年間を追ったドキュメンタリー映画である。

アフガニスタンの少女を主人公にした映画は『カブールのツバメ』や『ブレッドウィナー』を観たことがある。しかし、これらはアニメであり、実写の、しかもドキュメンタリーは今回が初めてであった。

アフガニスタ

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スクリーンで観る天沢聖司はテレビで観るよりかっこよくてちょっと悔しかった話

スクリーンで観る天沢聖司はテレビで観るよりかっこよくてちょっと悔しかった話

ここ最近は少しお疲れ気味で、映画を観に行くのはセーブしている。2月に唯一劇場で観たのが『耳をすませば』だ。

調布シネマフェスティバルというものを昨年知って、それからなんとなくチェックしていた。ジブリというと、どうしても金曜ロードショーで観るイメージがついてしまっているが、昨年『魔女の宅急便』を観て「やはり劇場で観るのは格別だ」と感じた。今年は『耳をすませば』に加えて『On Your Mark』も

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『ミスター・ランズベルギス』

『ミスター・ランズベルギス』

12月3日からシアター・イメージフォーラムにて上映が始まった映画、ミスター・ランズベルギス。リトアニアの歴史上、特にソ連からの独立回復において重要な役割を果たしたヴィータウタス・ランズベルギスに着目したドキュメンタリー映画だ。本編248分の超大作。ここにリトアニアの激動の時代の一部が凝縮されていた。

タイトルからわかるようにランズベルギス氏を中心に作品は展開されていくが、あくまでこれはランズベル

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チェコアニメは素晴らしい

チェコアニメは素晴らしい

去る10月23日のこと、武蔵野公会堂でチェコアニメ上映会が開催された。チェコアニメは数年前から知っており、特にアマールカのポップアップショップには何度も足を運んでいる。チェコに行ったときにもクルテクの人気ぶりに驚いたものだ。

キャラクターとしては知っていたが、実際にアニメのDVDを購入したのは昨年のことだった。上京したらやりたいことのひとつにチェコチェコショップに行くということがあり、お店の営業

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今だからこそ観てよかったもの

今だからこそ観てよかったもの

8月1日、仕事休みだったので「せっかくならファーストデーを有効活用しよう!」ということで映画を観ることにした。ファーストデーではなくても観に行くけれど、ファーストデーという響きはなんだか特別である。

観に行こうと意気込んだが観たい映画の公開がまだだったり、あまり目ぼしいものがない。なら無理をして行かなくても…と思っていたところで見つけたのが目黒シネマ。『ウルフウォーカー』と『銀河鉄道の夜』の2本

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オードリー・ヘップバーン

オードリー・ヘップバーン

5月6日に公開した『オードリー・ヘプバーン』。試写会で一足先に鑑賞し、帝国ホテルプラザで開催中の写真展にも立ち寄った。試写会の前には『オードリー・ヘップバーンの言葉』という本まで読んだ。

そろそろ没後30年にもなろうとしているが、その人気は衰えない。私のような生前のオードリーを知らない者でさえも存在は知っているし、『ローマの休日』や『ティファニーで朝食を』『マイ・フェア・レディ』は観たことがある

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ロスバンド

ロスバンド

北欧ノルウェーの映画を観る機会なんてそうそうないから、これは絶対観たいと思っていた『ロスバンド』。そうこうしているうちに公開から1ヶ月以上経ってからの鑑賞になってしまった。

Twitterでの評判はちょくちょく目にしていた。青春音楽ロードムービーなんて盛りだくさんだなあと思っていたが、実際盛りだくさんな映画だった。

ケンカばっかりの親と音痴なのに自覚のない親友アクセルに悩む主人公グリム、好きな

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魔女の宅急便

魔女の宅急便

世の中の人は(というと少し言い過ぎかもしれないが)、ジブリ育ちかディズニー育ちかに分けられると勝手に思っている。映画やアニメをあまり観ない人であっても、ジブリやディズニーの作品は観たことがあったり、その中で一番好きなものがあったりする。それくらい老若男女に親しまれている。

私はどちらかといえばジブリ育ちで、幼い頃からよく観ていた。中でも一番好きなのは『魔女の宅急便』である。それが映画のまち調布シ

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